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羽生善治九段(49)底知れぬ力を発揮して稲葉陽八段(31)に勝利 王位戦リーグ白組優勝の可能性を残す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月8日。大阪・関西将棋会館において王位戦リーグ白組▲羽生善治九段(49歳)-△稲葉陽八段(31歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は19時21分に終局。結果は125手で羽生九段の勝ちとなりました。

 羽生九段のリーグ成績はこれで3勝1敗。開幕戦で藤井聡太七段に黒星を1つ喫した後は白星を重ね、リーグ優勝の可能性を残しました。最終5回戦は競争相手の菅井竜也八段との直接対決となります。

 一方の稲葉八段は1勝3敗で、残念ながらリーグ陥落が決まりました。最終5回戦では上村亘五段と対戦します。

羽生九段、変わらぬ底力を見せ制勝

 羽生九段先手で戦型は角換わり腰掛銀。午前中から激しい変化に突入しました。

 銀損の稲葉八段はさらに角金交換の駒損をし、すぐに金を打って羽生玉の正面から攻め込みます。そしてと金を作り、羽生陣の大手門を突破することに成功しました。そして駒を取りながら羽生玉に迫ります。

 途中までの進行が早かった分、終盤は互いに時間を残しての読み合いとなりました。

 羽生九段は桂を歩頭に王手で打ち捨て、稲葉玉の寄せを目指します。羽生九段は的確にパンチを浴びせていき、いつしかはっきりと優位に立ちました。

 羽生九段は正確な速度計算のもとに、稲葉玉を着実に追い込んでいきます。

 対して羽生玉は守り駒をすべてはがされたものの、逃げるスペースが広く、詰めろが続きません。

 最後は長手数ながら稲葉玉に即詰みが生じました。羽生九段はそれを読み切って、いつもながらにきれいなフィニッシュを飾りました。

 羽生九段はこれでリーグ3勝1敗。王位戦での無冠返上、タイトル通算100期の可能性を残しました。

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 また羽生九段はこれで稲葉八段に8勝2敗。指し盛りのA級棋士を相手に対戦成績を広げていくとは、変わらぬすさまじい底力を感じさせます。

 白組は明日9日に▲阿部健治郎七段-△上村亘五段戦、明後日10日に▲菅井竜也八段-△藤井聡太七段戦がおこなわれ、各自4局を終えることになります。最終5回戦は紅組、白組ともに、同日一斉におこなわれます。

 紅組の方では現在、永瀬拓矢二冠が4連勝で走っています。

 さて、日本将棋連盟は8日夜、「緊急事態宣言を受けての対応」を発表しました。

今回の宣言を受けまして、日本将棋連盟では公式戦における新型コロナウイルス感染拡大防止策として、4月11日から5月6日まで、新たに以下の内容で対応して参ります。

 1.東西遠征等対局者の長距離移動を含む公式戦の対局は、原則5月7日以降に延期する

 2.東京・将棋会館、および関西将棋会館における対局を1部屋1局以下に抑える

実施期間や今後の対応につきましては、社会情勢を鑑みまして、慎重に判断して参ります。

出典:日本将棋連盟「緊急事態宣言を受けての対応」

 今回の羽生九段の対局は、東京から大阪に遠征しての対局でした。11日(土)からは長距離移動を必要とする対局は延期されるようです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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