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加藤桃子女流三段(25)会心譜で西山朋佳女王(24)を降す マイナビ女子オープン五番勝負第1局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月7日。神奈川県秦野市鶴巻温泉「元湯 陣屋」において第13期マイナビ女子オープン五番勝負第1局▲加藤桃子女流三段(25歳)-△西山朋佳女王(24歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時に始まった対局は16時45分に終局。結果は129手で挑戦者の加藤女流三段の勝ちとなりました。

両者拮抗の対戦成績

 現在は女流棋士として活躍する加藤桃子女流三段は、かつては奨励会に所属していました。

 2011年、奨励会1級の時に第1期リコー杯女流王座戦に参加。勝ち進んで決勝五番勝負を制し、初代女流王座に就きました。以後は通算4期を獲得しています。

 2014年のマイナビ女子オープン五番勝負は里見香奈女王(奨励会三段)に加藤桃子女流王座(奨励会1級)が挑むという構図でした。結果は加藤挑戦者が勝って、女王のタイトルを獲得しています。

 以来、加藤女王は4連覇を達成。女流王座4期、女王4期という堂々たる実績を残しています。

 2014年の女流王座戦決勝五番勝負において、加藤女王は西山朋佳奨励会二段(当時)と対戦。結果は3連勝で加藤女王がシリーズを制しています。

 2018年。加藤女王に西山朋佳奨励会三段が挑戦。結果は西山挑戦者が3勝1敗で女王のタイトルを獲得しました。

 翌2019年。西山女王は里見女流四冠の挑戦を3勝1敗で退けて防衛に成功。現在までに2期を保持しています。

 西山女王は現在、女流王座、女流王将をあわせ持つ三冠。里見香奈女流四冠とともに、女流七大タイトルを分け合っています。

 最近では竜王戦6組の快進撃も話題を集めています。

 加藤現女流三段は里見、西山の「2強」を追い上げるポジションにいます。西山-加藤の女流棋戦における過去の対戦成績は、最初に加藤4連勝。次いで西山5連勝。星としては拮抗しています。

加藤挑戦者快勝

 加藤女流三段は現在はマイナビ女子オープンだけではなく、女流王位戦でも里見女流王位に挑戦の名乗りをあげています。

 ただし女流王位戦五番勝負はコロナウイルス感染拡大の影響で開幕が延期されました。

 名人戦七番勝負、奨励会三段リーグの延期も発表される中、マイナビ女子オープン五番勝負第1局は予定通り開催されることになりました。

 振り駒の結果、先手は加藤挑戦者に決まりました。後手番の西山女王は三間飛車に振りました。対して加藤挑戦者は居飛車穴熊に組みます。加藤陣もまだ金銀が連結していないところで、加藤挑戦者は西山陣にスキありと見て仕掛けました。これが好判断だったようです。

 戦いが始まってから、加藤陣は次第にまとまりが出てきます。対して西山陣は攻撃の主力である飛角銀のはたらきがいまひとつで、まずは加藤挑戦者がリードを奪いました。

 加藤挑戦者は美濃囲いに収まる西山玉を見据える位置に角を転換しました。これもまた好判断で、以後は加藤挑戦者がはっきりペースを握ったようです。

 西山女王は穴熊陣の急所である端にねらいを定め、いやみをつけます。そして攻撃陣本隊も動き始め、西山女王が追い上げを見せ始めました。

 西山女王は端で得た香を飛車取りで6筋に打ちました。対して加藤挑戦者は飛車を4筋に転換。これが西山陣にまでよく通る好位置で、再び加藤挑戦者が差をつけたようです。

 終盤の加藤挑戦者の指し回しは着実で、西山女王の豪腕をもってしても逆転の余地は残されていませんでした。最後は加藤挑戦者が着実に押し切って、西山玉を受けなしに追い込みました。

 第2局は予定通り4月16日におこなわれるそうです。対局場は山梨県甲府市・常盤ホテルが予定されていましたが、東京・将棋連盟に変更されています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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