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西山朋佳女流三冠(24)は竜王戦で勝ち進むと史上初の女性棋士となれるか? 6組ベスト4をかけ対局開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月1日10時。東京・将棋会館において竜王戦6組ランキング戦準々決勝▲西山朋佳女流三冠-△長谷部浩平四段戦が始まりました。

 振り駒の結果、先手番を得た西山朋佳女流三冠は、得意の中飛車を採用しました。

 振り飛車の西山女流三冠、居飛車の長谷部四段ともに穴熊に組んで、戦型は相穴熊になりました。

 前局の青野照市九段戦では、西山女流三冠は消費12分で勝利をあげています。

 本局は11時半を過ぎ、39手まで進んだ時点では、消費時間は西山25分、長谷部48分。前局と比較すれば、落ち着いたペースでの進行です。

 持ち時間は各5時間。昼食休憩、夕食休憩をはさんで、通例では夜に終局となります。

勝てば道が開ける世界

 西山さんには「女流三冠」「奨励会三段」という2つの立場があります。竜王戦6組には女流三冠の立場で出場しています。

 西山さんがこのまま竜王戦6組で勝ち進めば、どうなるでしょうか。

 現状では、棋士資格を得るための何らかの特典が付与されるという規定はないようです。少なくとも公表されている規定には、そうした文言は見当たりません。

 ただし近年の将棋界では、実際に突き抜けた成績をあげた人が現れると、わりとフレキシブルに新たな規定が設けられることもあります。

 2013年。奨励会在籍中の都成竜馬三段(現六段)が新人王戦で優勝しました。長い新人王戦の歴史で、奨励会員の立場のままでの優勝はそれが初めての例でした。

 その後、2014年には「新人王戦で奨励会三段が優勝した場合、進行中の三段リーグ終了時に次点がつく」という規定が設けられました。そして遡及的に、都成三段にも適用されています。

 三段リーグで次点2回を取ると、フリークラスという制限つきながら、四段に昇段できます。(後に都成三段は次点2回ではなく、2015年度後期三段リーグで1位通過を果たし、四段昇段を決めています)

 以上の例にならえば、今期竜王戦6組で西山さんが勝ち進んだり、あるいは今後、棋士以外の誰かが竜王戦6組で好成績をあげた際には、何らかの規定が設けられる可能性は高そうです。

 竜王戦主催紙の読売新聞からは、次のような記事が配信されています。

かつて若手棋戦の新人王戦で奨励会三段の時に優勝した都成竜馬六段が、次点を付与された事例がある。棋士らは「西山さんが竜王戦6組で決勝進出や、優勝という結果を出せば次点付与の議論は起こる」と口にする。

出典:「読売新聞オンライン」2020年3月14日

 ともあれ、西山さんの動向は、今後も注目され続けることでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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