Yahoo!ニュース

西山朋佳女流三冠(24)日曜午前のひととき、テレビで豪腕を披露して逆転勝利 NHK杯本戦出場決定

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月29日(日)。第70回NHK杯将棋トーナメント「出場女流棋士決定戦」▲西山朋佳女流三冠(24歳)-△里見香奈女流四冠(28歳)戦が放映されました。

 結果は119手で西山女流三冠の勝ちとなりました。

西山女流三冠、豪腕で逆転

 振り飛車党同士の両者。先手の西山三冠は初手でさっと三間飛車に振りました。対して里見四冠は20手目に向かい飛車の位置に振ります。戦型は相振り飛車となりました。振り飛車党の多い女性同士の戦いで、相振り飛車はよく見られる戦型です。

 玉形は西山三冠が金を2枚横に並べる金無双。対して里見四冠は美濃囲い。西山三冠が7筋の歩を交換してきたタイミングで美濃囲いの銀を6三に上がりました。これが現代感覚のようです。

 序盤から中盤にかけては、里見四冠がはっきりリードを奪っていました。

西山「苦しいと思いながら指していました」

里見「ここはちょっと指しやすいのかなと思っていました」

 やや苦しい西山三冠は、自身の玉の上部で里見四冠の大駒にアタックしながら、まぎれを求めます。このあたりから次第に、西山三冠の豪腕ぶりが発揮され始めます。

 形勢はいつしかもつれます。そして終盤に入ると、いつしか西山三冠が優位に立っていました。

 里見四冠もまた、中終盤での実力には定評があります。少しでも甘い手を指せば、あっという間にまた逆転となっていたかもしれません。

 しかし西山三冠には、まったくゆるみがありません。飛香の連携で里見玉に照準をあわせ、その上部を突破しました。

 里見玉が8二に逃げたところで、27手の即詰みが生じています。受けても勝てそうなところで、西山三冠は詰みを読み切りました。

 総手数は119手。西山三冠がその実力をいかんなく発揮して、初のNHK杯本戦進出を決めました。

画像
将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

松本博文の最近の記事