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進撃の鬼軍曹・永瀬拓矢二冠(27)棋聖戦ベスト4進出 同世代の高見泰地七段(26)を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月26日。東京・将棋会館において第91期ヒューリック杯棋聖戦・決勝トーナメント2回戦(準々決勝)▲高見泰地七段(26歳)-△永瀬拓矢二冠(27歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は20時に終局。結果は150手で永瀬二冠の勝ちとなりました。

 2016年の五番勝負で羽生善治棋聖(当時)に挑戦し、2勝3敗(1千日手)で届かなかった経験のある永瀬二冠。2度目の棋聖位挑戦、そして初の獲得に向けて、また一歩前進しました。

永瀬二冠、矢倉の戦いを制す

 永瀬二冠は1992年、高見七段は1993年生まれで、両者は同世代です。

 公式戦での初対戦は2013年度C級2組最終戦(2014年3月対局)。肩書は永瀬六段-高見四段でした。深夜にまでおよび大熱戦の末に、結果は永瀬六段勝ち。リーグ成績は永瀬8勝2敗、高見6勝4敗となりました。永瀬六段は好成績をあげながら、4位で次点頭ハネ。同成績、順位1枚の差でC級1組昇級を果たしたのは佐々木勇気五段(当時19歳)でした。

 高見、佐々木は同じ石田和雄九段門下です。

 その後、永瀬現二冠は順位戦で苦闘を続けながら昇級を重ね、現在はB級1組に所属しています。今年度、佐々木勇気現七段はB級2組、高見泰地現七段はC級1組に昇級しました。

 タイトル争いで先行したのは、高見七段でした。

 今年度、高見叡王-永瀬七段という立場で、叡王戦七番勝負が戦われました。

 結果は永瀬七段が4勝0敗のストレートで七番勝負を制して、タイトル交代となりました。

 本局までの両者の対戦成績は永瀬二冠の8連勝。ちょっと意外なほどに差がついています。

 振り駒の結果、先手は高見七段。戦型は相矢倉となりました。永瀬二冠がオーソドックスな堅さ重視の「金矢倉」なのに対して、高見七段は左側の金を三段目に上がるバランス重視の構えです。

 永瀬二冠は棒銀で高見玉近くの端から行動を起こしました。端で得た歩を使って高見陣逆サイドの桂を取ります。ただし形勢は微妙で、難しい中盤戦が続きました。

 高見七段が永瀬城の正門に飛角銀を集中させて突破をはかろうとするのに対して、永瀬二冠は香を縦に2枚並べて支えます。高見七段の攻め足が止まったところで永瀬二冠が攻勢に出て、形勢は永瀬二冠に傾きました。

 高見七段が攻め込んで、最後は永瀬陣もかなり危ない形となりましたが、最後は永瀬二冠が高見玉を即詰みに討ち取り、熱戦に終止符を打ちました。

 永瀬二冠はこれでベスト4進出一番乗りです。渡辺明棋聖(三冠)への挑戦権獲得まであと2勝と迫りました。

 永瀬二冠は王位戦リーグでも勝ち続けています。

 2019年度は2つのタイトルを獲得した永瀬二冠。2020年度は、さらなる飛躍の年となる可能性も高そうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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