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順位戦B級1組陥落は谷川浩司九段(57)と畠山鎮八段(50)

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月12日。大阪・関西将棋会館においてB級1組最終13回戦▲松尾歩八段(39歳)-△畠山鎮八段(50歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は22時59分に終局。結果は85手で松尾八段の勝ちとなりました。

 リーグ最終成績は、松尾八段は5勝7敗。畠山八段は3勝9敗。この結果、畠山八段は谷川浩司九段(57歳)とともに、B級1組降級が決定しました。

 松尾-畠山鎮戦は、6局の中で一番最初に終わりました。屋敷九段と対局中の山崎八段は、勝敗にかかわらず、残留が決まっています。

 先手は松尾八段。矢倉模様から松尾八段が守りの銀を中央に進めて、急戦の構えを見せました。盤上まんなかで銀交換がおこなわれた後、畠山八段はその銀を打って攻めに使います。

 中盤、先手の角と後手の銀が上下を繰り返せば千日手となりそうな局面が現れました。対して畠山八段は強気に桂を跳ね、攻めの継続をはかります。松尾八段はそのタイミングで強く攻めに出て、局面が大きく動きました。

 手数はそれほど進んでいないものの、激しい戦いの中ですでに終盤戦に入ったかというところ。松尾八段は63手目、玉飛角が利く焦点に、王手で歩を打ちました。これが次の一手に出てきそうなうまい歩の使い方で、それも一番いいタイミングで指されたようです。。

 畠山八段はじっと玉をかわして辛抱しました。対して松尾八段は自然な攻めを続け、優勢をキープしました。最後は飛車を切って桂を取る、さわやかな攻防の決め手を放ち、畠山玉を受けなしに追い込んでいます。

 22時59分。総手数は85手。畠山八段は自玉の詰みを見て、投了しました。

 振り返ってみれば、12月に指された10回戦の直接対決、畠山鎮八段-山崎八段戦がやはり大きな一番でした。両者一分将棋の最終盤。形勢は畠山八段の必勝形でした。山崎八段の玉には11手詰が生じています。畠山八段は、あともう5手で詰みというところまで進めます。そこで何ということか、畠山八段が誤りました。山崎玉は詰みを免れて、途端に深夜の大逆転です。この一局の星が逆であれば、残留争いの展開は大きく変わっていたことでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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