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王位18期のレジェンド羽生善治九段(49)王位戦リーグで1勝1敗に 初手合の上村亘五段(33)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月12日。東京・将棋会館において王位戦リーグ白組▲上村亘五段(33歳)-△羽生善治九段(49歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は19時42分に終局。結果は112手で羽生九段の勝ちとなりました。

 羽生九段のリーグ成績はこれで1勝1敗。敗れた上村五段は0勝2敗となりました。

羽生九段、貫禄の勝利

 羽生九段は初戦で藤井聡太七段に敗れています。

 また上村五段は菅井竜也八段に敗れています。2敗すると挑戦権獲得は厳しくなります。

 羽生九段と上村五段は、本局が初手合となります。

 リーグ組み合わせ時の抽選により、本局の先手はあらかじめ上村五段と決められています。戦型は角換わり腰掛銀へと進みました。

 開始から1時間少しして、羽生九段が歩をぶつけ、中盤の戦いが始まりました。互いに中段に角銀桂が配置され、正面からの力のこもった押し合いが見られます。

 中盤は羽生九段がややリードして推移していたようです。しかし上村五段も離されずに均衡を保ち、形勢不明の終盤を迎えました。

 羽生九段は上村玉の近くに角を打ち込みます。このハードパンチにどう応じるか。上村五段は残り7分のうち5分を使って、当たりになっている金をそっぽにかわします。対して羽生九段は桂を取りながら強力な馬を作り、上村玉に王手をかけました。このあたりから次第に、形勢ははっきりと羽生九段に傾いたようです。

 上村五段も飛車を成り込んで、羽生玉への寄せ形を作ろうとします。

 そこで羽生九段が馬(成角)を引いた手が「詰めろ逃れの詰めろ」の攻防手となりました。これがあまりにぴったりで、羽生九段勝勢。いつもながらに、華麗に正確に、勝利を確定させました。

 タイトル獲得通算100期、および無冠返上をずっと期待され続けている羽生九段。王位戦七番勝負がその舞台となるでしょうか。

 なお紅組の方は、永瀬拓矢二冠(叡王・王座)が豊島将之竜王・名人との大一番を制して、リーグ2連勝とし、暫定トップに立っています。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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