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恩師の石田和雄九段(72)も歓喜の声 貴公子・三枚堂達也七段(26)順位戦C級2組卒業

松本博文将棋ライター
石田和雄九段のもとで腕を磨いた三枚堂達也七段と佐々木勇気七段(撮影:筆者)

 3月5日。東西の将棋会館に分かれて、C級2組順位戦一斉対局がおこなわれました。

 C級1組への昇級枠は3人。前節で決めた高見泰地七段(26)に続いて、残る2枠をめぐって、熾烈な争いが繰り広げられました。

 勝てば昇級の三枚堂達也七段は、前節、長岡裕也五段戦で敗勢の最終盤で、奇跡的な逆転を収めています。

 三枚堂七段は最終戦で中座真七段と対戦しました。相掛かりから角交換の後、両者ともに腰掛銀に組んで、先手の中座七段が先攻しました。難解な中盤戦を経て、終盤に入ったところでは、中座七段が優勢でした。しかし最終盤で逆転。100手で中座七段が投了し、22時47分。三枚堂七段の昇級が決まりました。

画像作成:筆者
画像作成:筆者

 三枚堂七段は内藤國雄九段門下。幼少時から石田和雄九段が経営する柏将棋センターで腕を磨きました。現在は後進の少年、少女たちの目標となっています。

 三枚堂七段の対局をずっとタブレットで観戦していた石田九段に電話でコメントをいただきました。

石田「もう負けだと思ってたよ・・・! もうダメだと思って他の(昇級候補者の)対局見てたんだよ。そしたら負けそうにないんだなあ・・・。もうあかんと思ってました。よく逆転して勝ったよ。(C級1組最終戦で佐々木勇気七段が逆転勝ちしたのに続いて)2局連続です」

石田九段「三枚堂君はね、一番最初に柏将棋センターに来てくれた。数か月して、勇気君を連れてきてくれてね。で、二人でライバルだった。三枚堂君は最初、勇気君より上だったんだ。そのうち、立場が入れ替わってね。勇気君を目標にするようになってきた。三枚堂君は、勇気が不調の時でもね。『勇気に勝ってもらわないと。僕は勇気を目標にしてやってきたんだから、もう少し勇気に調子を出すように言っておいてください』と頼まれたんだ。勇気、(B級2組に)上がったでしょ? だから私は必ずや! 三枚堂君も上がると思っていた。その通りになりました・・・。またこれで勇気君が(順位戦のクラスが)1つ上だから、それに向かって追っかけていく。そして最後は抜き返す・・・となるかどうかね(笑)。ともかく私としては、高見君、そして三枚堂君、そして勇気君もね。手塩にかけて育てた子たちが、昇級することができたので、こんなうれしいことはありません。みんなこれからも・・・これぐらいのことではですね、もちろん満足してないと思いますけれども、これをさらなるステップとしてね。もちろん、順位戦もそうだけれど、各棋戦でもね。また(高見七段の叡王戦七番勝負登場、獲得のように)タイトル戦にも登場してもらいたい、と思っております」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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