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里見香奈女流名人(27)女流名人戦11連覇 谷口由紀女流三段(26)の挑戦を3連勝で退ける

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月11日。岡山県真庭市「湯原国際観光ホテル 菊之湯」において、第46期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第3局▲谷口由紀女流三段(26歳)-△里見香奈女流名人(27歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 9時に始まった対局は15時8分に終局。結果は94手で里見女流名人の勝ちとなりました。五番勝負は里見女流名人が3連勝でタイトル防衛。11期連続で女流名人戦を制しました。

里見女流名人、充実の11連覇

 第2局と先後は入れ替わって、先手は谷口女流三段。初手は中央の歩を突きました。これは谷口女流三段にとっては、かなり久しぶりの作戦のようです。谷口女流三段は中飛車、里見女流名人は向かい飛車の位置に振って、戦型は相振り飛車となりました。

 谷口女流三段は居玉のまま、銀を繰り出して早めに動きます。里見女流名人は慎重に対応して、銀交換で収めて大きな戦いには発展しませんでした。

 そこからは双方、美濃囲いに組みました。谷口女流三段はあくまで積極的に動き続けます。

 対して里見女流名人も的確に動いて、ポイントを重ねます。そして満を持して大技をかけました。先に銀桂交換をして、次に王手銀取り(十字飛車)をかけ、桂得の戦果も得ます。

 最後も里見女流名人が的確に谷口玉を寄せ、15時8分、やや早い時間での終局となりました。

 里見女流名人はこれで女流名人戦11連覇となりました。

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 女流棋界でのタイトル連覇記録といえばずっと、林葉直子さんの女流王将戦10連覇が燦然と輝く記録でした。そこに里見さんが追いつき、追い越したということで、女流棋界も新たな時代へ進んでいることを実感させられます。

 谷口女流三段はタイトル戦4回目の挑戦も残念ながら敗退となりました。

 現在の女流棋界は里見女流四冠(清麗・女流名人・女流王位・倉敷藤花)と西山朋佳女流三冠(女王・女流王座・女流王将)の2強時代です。

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 この2人の壁が厚いために、他の女流棋士はなかなか割って入るスキがない状況なのかもしれません。その中で、タイトルを獲得する他の女流棋士が現れるのか、今後も注目されるところです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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