広瀬章人八段(33)王将戦七番勝負第2局で快勝 絶好調の渡辺明王将(35)を降す
1月25日・26日。大阪府高槻市・山水館において王将戦七番勝負第2局▲広瀬章人八段(33歳)-△渡辺明王将(35歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。
15日9時に始まった対局は、16日17時29分に終局。結果は117手で広瀬八段の勝ちとなりました。
七番勝負はこれで両者ともに1勝。第3局は2月8日・9日、栃木県大田原市・ホテル花月でおこなわれます。
広瀬八段、角換わりで快勝
第1局は渡辺王将の勝ちでした。
サービス精神旺盛な渡辺王将は、これまでの王将戦でカメラマンの依頼に積極的に応じてきました。そして様々な面白い写真が残されています。
渡辺王将は最近、叡王戦では挑戦者決定戦に進出。2月からは本田奎新五段を挑戦者に迎えて、棋王戦五番勝負が始まります。王将戦第2局対局前夜には、競争相手の三浦弘行九段が敗れて、4月開幕の名人戦七番勝負出場も決まりました。
渡辺王将が好調なのに対して、広瀬八段は竜王失冠後2勝7敗と不調。直近のA級順位戦第7局では、佐藤康光九段に敗れています。
広瀬八段としてはこのあたりで、反転攻勢に転じたいところです。
第1局と先後は替わって、挑戦者の広瀬八段が先手。将棋は先手番にわずかに利があり、トップ同士の対局では、その利がさらに広がる傾向にあります。もしここで後手番の渡辺王将が「ブレイク」すると、七番勝負の帰趨は大きく定まることになるかもしれません。
広瀬八段が選んだ戦形は角換わりでした。現代将棋界では毎日のようにこの戦法が見られます。相掛かりなどに比べて間口が狭くて深い研究がしやすく、事前準備が勝負に大きなウェイトを占めることが多いようです。
49手目、広瀬八段は自陣に角を打ち据えました。これは実戦例のある形です。実は今年度竜王戦七番勝負▲豊島将之名人-△広瀬章人竜王戦(肩書は当時)で、広瀬竜王が後手番を持って指した形でした。本局では、広瀬挑戦者が逆を持って指すことになります。
当たりになっている歩を守るには、銀を引くか、金を上がるかの二択です。竜王戦では、広瀬竜王は銀を引いていました。本局では、渡辺王将は金を上がる手を選び、1日目午前の段階で、未知の戦いへと入りました。
広瀬八段は積極的に歩を突き捨て、動いていきます。66手目を渡辺王将が封じて、1日目が終了しました。
2日目。対局が再開された後、広瀬八段はアグレッシブに前に出ました。対して渡辺王将も攻防の角を放ち、ここから一気に激しい戦いとなります。大立ち回りの後、広瀬八段がリードを奪ったようにも見えましたが、形勢は容易ではなく、難解な終盤戦となりました。
92手目、渡辺王将は馬で広瀬八段の桂を取りました。取れる駒は取るのが将棋の基本であり、ごく自然な一手にも見えましたが、馬が中段に出る形になったために、渡辺陣にスキが生じました。
広瀬八段は飛車を切り捨て、銀を取って一気にスパートをかけます。もしも渡辺王将が飛を取れば、渡辺陣に銀を打ち込んで攻めきれそうです。
渡辺王将は、今度は取れる飛車を取らず、さらには守りの要の金も見捨てて、玉を早逃げしました。トップクラスらしい見応えのある応酬ですが、このあたりからはっきりと、形勢は広瀬八段に傾きました。
一手緩めばもちろん逆転という最終盤。広瀬八段は正確な終盤力で、きれいに渡辺玉を寄せきっています。
王将初挑戦の広瀬八段が充実した内容で、七番勝負初の1勝を挙げました。この勝利が復調のきっかけとなるでしょうか。
渡辺王将、広瀬八段の次の対局は、1月29日のA級順位戦8回戦一斉対局となります。
渡辺王将は名人挑戦が決まり、あとは史上4人目のA級全勝なるかというところ。広瀬八段は残留が決まっています。