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渡辺明三冠(35)初の名人挑戦権獲得 A級順位戦7回戦で競争相手の三浦弘行九段(45)が敗れる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月24日。東京・将棋会館においてA級順位戦7回戦▲木村一基王位(46歳)-△三浦弘行九段(45歳)戦がおこなわれました。10時に開始された対局は24時29分に終局。結果は159手で木村王位の勝ちとなりました。

 勝った木村王位はこれで3勝4敗。A級残留に向けて大きな星をあげました。

 敗れた三浦九段は4勝3敗に。

 その結果、7勝0敗の渡辺明三冠(35歳)の名人挑戦権獲得が決まりました。渡辺三冠は4月に開幕する名人戦七番勝負で豊島将之名人(29歳)に挑戦します。

木村王位、深夜の大熱戦を制する

 先手番の木村王位はオーソドックスな金矢倉に。対して三浦九段は銀2枚を中段に並べ、攻めの態勢を作ります。そして三浦九段が先攻して、本格的な戦いが始まりました。

 中盤のわかれでは、三浦九段がリードを奪ったようです。しかしそこから木村王位は棋風通り、粘り強く指し続けました。木村陣を縦から狙う攻め駒を封じ込め、互いに上部開拓を視野に入れた戦いへと移りました。

 終盤、一瞬の間隙をついて、木村王位が技をかけていきます。三浦九段が妥協すれば入玉を目指せそうなところ、強気に応戦して、どちらが勝つにしても決着がつくコースへと向かいました。

 そして形勢は木村王位勝勢に。三浦九段は攻防の自陣飛車を打って最後の勝負に出ますが、木村九段が三浦玉を寄せきって、熱戦に終止符を打ちました。

 渡辺三冠は現在、王将戦第2局の対局場である、大阪府高槻市に宿泊中です。本局の中継は見ていたでしょうか。

 9回戦制のA級順位戦において、1987年度の谷川浩司現九段、2003年度の森内俊之現九段は、やはり7連勝で1月中に名人挑戦を決めた例があります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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