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里見香奈女流名人(27)女流名人戦五番勝負第1局で先勝 挑戦者の谷口由紀女流三段(26)を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月19日。神奈川県箱根町、岡田美術館・開化亭において第46期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第1局▲里見香奈女流名人(27歳)-△谷口由紀女流三段(26歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 9時30分に始まった対局は16時17分に終局。結果は88手で里見女流名人の勝ちとなりました。里見女流名人は11連覇に向けて、まずは幸先のよい1勝をあげました。

里見女流名人、連覇記録更新に向けてまずは快勝

 現在の女性棋界は里見香奈女流四冠(清麗・女流名人・女流王位・倉敷藤花)と西山朋佳女流三冠(女王・女流王座、女流王将)の2強時代となっています。

 里見女流名人は2009年度、17歳の時に初めて五番勝負を制して以来、ここまで10連覇を達成しています。

 女流名人位獲得通算10期は、清水市代女流六段と並ぶ史上1位タイ記録。今期防衛を果たせば通算11期で単独1位となります。

 また女流タイトル戦の連覇記録は林葉直子さんの女流王将戦10連覇と並んでいて、こちらも11連覇となれば、単独1位となります。

 谷口由紀女流三段は激戦の女流名人リーグを8勝1敗で制し、本棋戦では初の挑戦権獲得となりました。タイトル挑戦はこれが通算4度目となります。

 これまでの対戦成績は里見9勝、谷口1勝とやや差がつけられていました。

 第1局開始前に先立つ振り駒では、谷口女流三段が先手を得ました。

 棋風は両者ともに振り飛車党。里見女流名人が三間、谷口女流三段が向かい飛車の位置に振って、女流棋界ではよく見られる相振り飛車となりました。

 里見女流名人が美濃囲いに組んだのに対して、谷口女流三段は居玉のまま相手の出方を見ます。谷口女流三段が歩交換をして飛車を前線に飛び出したのを見て、里見女流名人は強気に飛車交換を挑みます。そこで飛車交換がされた後、互いにまた自陣に飛車を打ち合い、気の抜けない中盤の戦いが続きました。

 やがて谷口女流三段の玉は金無双に収まります。これは相振り飛車ではよく見られる囲いです。

 里見女流名人は谷口陣の金無双の前に飛銀桂を並べ、正面の大手門から攻めていきました。里見女流名人が歩を合わせて銀を進めたのに対して、谷口女流三段は玉を引いてかわしました。この手がかえって危険だったか、里見女流名人の飛角銀桂が理想的に躍動する形となり、形勢は里見よしへと傾きました。

 最後は里見女流名人の玉が金銀3枚の美濃囲いで安泰なのに対して、谷口女流三段の金無双は形が乱れてしまい、まとめられない格好に。まだ玉がすぐに詰むという段階ではないものの、谷口女流三段が潔く投了して、里見女流名人の快勝となりました。

 谷口女流三段にとっては、やや不本意な内容だったようです。

 里見女流名人の出身地は島根県出雲市。第2局はそのホームの地である出雲文化伝承館でおこなわれます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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