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デビュー以来朝日杯で負けなしの藤井聡太七段(17)驚異の3連覇を達成できるか?

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月17日から第13回朝日杯将棋オープン戦の本戦トーナメントが始まります。

 今回のトーナメント表、ぱっと見たところ、低段の若手が少ない・・・というか、見当たらない感があります。順位戦のクラスを示すと、以下の通りとなります。

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 要するに、藤井七段以外は全員、B級1組以上でした。

 1回戦の組み合わせと日程は以下の通りです。同日におこなわれる1回戦の勝者同士はその日のうちに2回戦で対戦します。

1月17日(金)東京

郷田 真隆九段-行方尚史九段

阿久津主税八段-広瀬章人八段

1月18日(土)朝日新聞名古屋本社

豊島将之竜王・名人-深浦康市九段

屋敷伸之九段-千田翔太七段

1月19日(日)朝日新聞名古屋本社

三浦 弘行九段-斎藤慎太郎七段

菅井 竜也七段-藤井 聡太七段

1月20日(月)東京

永瀬 拓矢二冠-糸谷 哲郎八段

渡辺  明三冠-山崎 隆之八段

 藤井七段は本棋戦初参加の2017年度、一次予選で4連勝、二次予選で2連勝して本戦トーナメントに進出。2回戦で佐藤天彦名人(当時)に勝った時には四段でした。その後でC級2組から1組昇級を決めて五段に昇段。準決勝で羽生善治竜王(当時)、決勝で広瀬章人八段を破って優勝。規定により六段に昇段しています。

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 また2018年には決勝で渡辺明棋王を破って優勝。2連覇を達成しています。

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 2019年度も好調で、当たるべからざる勢いの藤井七段ですが、それでも対戦成績で負け越している棋士は存在します。その一人が1回戦で対戦する菅井竜也七段です。

 菅井七段は元王位で、平成生まれとしては初のタイトル獲得者。現在はB級1組順位戦でトップを走り、初のA級昇級にあと一歩と迫っています。藤井四段(当時)が29連勝した2017年、菅井-藤井戦は菅井2連勝で、その実力を示しました。2019年5月に指された竜王戦4組ランキング戦の対局では、藤井七段が千日手指し直しの末に初勝利をあげています。トータルでは現在まで、菅井2勝、藤井1勝です。

 今期朝日杯1回戦で藤井七段は菅井七段に勝つと、三浦九段-斎藤七段戦の勝者と対戦します。藤井七段から見た過去の成績は、三浦九段とは1勝1敗、斎藤七段とは1勝2敗です。どちらと対戦しても、無論手強い相手と言えるでしょう。

 隣りのブロックには、現棋界の王者である豊島将之竜王・名人がいます。豊島-藤井の過去の対戦成績は、豊島4連勝。もし両者の対戦が実現すれば、藤井七段にとってはここが最大の難関となるかもしれません。

 反対側の山もいずれ劣らぬ強豪ばかりです。

 渡辺明三冠は昨年の決勝で藤井七段に敗れたものの、現在は飛ぶ鳥を落とす勢いで、今年度の勝率争いでも藤井七段を押さえてトップに立っています。

 永瀬拓矢二冠は藤井七段とはまだ公式戦ではまだ未対戦ながら、非公式戦の「炎の七番勝負」で貫禄を示すなど、ラスボス感があります。藤井七段と決勝で対戦が決まれば、これも盛り上がることでしょう。

 また今回は、過去に圧倒的な成績を残している羽生善治九段が二次予選で敗れたということも大きなトピックと言えるでしょう。

 羽生九段は本棋戦では過去12回のうち5回優勝し、3連覇も達成しています。藤井七段はこの偉大な記録に並ぶことができるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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