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新鋭・佐々木大地五段(24)叡王戦ベスト4進出 前期挑決進出の菅井竜也七段(27)を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月11日。大阪・関西将棋会館において叡王戦2回戦(準々決勝)▲菅井竜也七段(27歳)-△佐々木大地五段(24歳)戦がおこなわれました。15時に始まった対局は20時52分に終局。結果は100手で佐々木五段の勝ちとなりました。

 佐々木五段はこれでベスト4に進出。準決勝では現棋界の頂点に立つ豊島将之竜王・名人(29)に挑みます。

佐々木五段、わっしょいわっしょいの勢いで勝ち進む

 菅井七段は前期で挑戦者決定戦三番勝負に進出。永瀬拓矢七段と対戦し、結果は1勝2敗で敗退となりましたが、壮絶な死闘を演じたのは、いまでも記憶に新しいところです。

 佐々木大地五段は棋王戦で挑戦者決定戦に進出するなど、各棋戦で大活躍をしています。先日は渡辺明三冠に勝ち、王位戦リーグ入りも決めました。

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 菅井七段は元王位。これから組分けが発表され、王位戦リーグが始まります。多士済々のメンバーで、そちらも楽しみなところです。

 前期の王位戦リーグで両者は対戦し、菅井七段が勝っています。また今年度の銀河戦決勝トーナメント1回戦でも菅井七段の勝ち。過去の対戦成績は、菅井七段2連勝です。

 振り駒の結果、先手は菅井七段。序盤でちょっとした駆け引きがあり、菅井七段が角を打ち込んで馬を作らせる順を誘ったのに対して、佐々木五段はすぐにその順をスルーしました。そして菅井七段は5筋位取り中飛車に構え、さらに盤上右隅に玉を囲う「穴熊」に組みました。

 佐々木五段は飛車先の歩を伸ばさず、飛車を一つ横に寄せて使う「袖飛車」の作戦を取りました。これは比較的珍しい指し方ですが、佐々木五段自身は優秀と思ってよく採用しているそうです。

 中盤、は盤上中央で押し引きがあり、戦いはさらに左右全体に広がっていきました。菅井七段は穴熊の桂を跳ね出して、リードをはかっていきました。俗に「パンツを脱ぐ」という手段です。菅井七段の桂が佐々木陣の要である金2枚をはがしたのに対して、佐々木五段は角を取ります。角桂と金金という交換となり、局面が大きく動きましたが、バランスはうまく保たれていたようです。

 菅井七段が玉の遠さをいかして積極的に前に出て、その豪腕が炸裂しそうな展開かとも思われましたが、佐々木五段も巧みに応接して五分以上に渡り合います。佐々木五段は先に時間を使い切り、秒に読まれながらの終盤となりましたが、終始落ち着いていました。

 最後は佐々木五段が手堅く自陣に駒を投入し、負けにくい陣形を築いた後、満を持して反撃に転じます。そこで菅井七段は攻防ともに見込みなしと見て、駒を投じました。

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 佐々木五段の準決勝の相手は、豊島将之竜王・名人。過去の対戦は佐々木五段の2連敗ですが、ここも突破すれば、今度こそタイトル初挑戦も見えてきそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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