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将棋界初の女性棋士誕生なるか? 西山朋佳三段(24)三段リーグ8勝2敗で暫定2位

松本博文将棋ライター
全30人で争われる今期三段リーグ、西山三段は現在2位(記事中の画像作成:筆者)

 1月5日、東京と大阪で奨励会の例会がおこなわれました。三段リーグでは女性会員の西山朋佳三段が連勝。8勝2敗で服部慎一郎三段と並び、トップグループに浮上しました。順位の差で、現在は2位。原則的に三段リーグの昇級枠は上位2人ですので、その中に入ったことになります。

 三段リーグは半年に渡って全18回戦がおこなわれる長丁場。現在はまだ折り返し地点を過ぎた時点です。もちろん、まだまだこの先に何があるのかはわかりませんが、将棋界初の女性棋士(四段)誕生に向かってこれまでで最も近づいたところまで来た、とは言えるでしょう。

 西山三段の過去の成績は以下の通りです。

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 初参加の2016年前期では最初から4連勝。3期目の2017年前期では途中まで6勝2敗という成績がありました。今回はその時以上のペースで勝ち進んでいるということになります。

 三段リーグまで進んだ女性奨励会員は、西山三段の他には里見香奈三段(現女流四冠)しかいません。里見三段の成績は以下の通りです。

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 里見三段は26歳の年齢制限を迎え、規定により、残念ながら退会となりました。現在では女流棋士の第一人者として活躍を続けています。

 西山三段は女性奨励会員の立場として参加できる3つの女流棋戦、マイナビ女子オープン、リコー杯女流王座戦、霧島酒造杯女流王将戦を全て制しています。

 女流棋界は現在、里見、西山の2強時代に入ったと言えるでしょう。

 蛸島彰子現女流六段が女性初の奨励会員となったのは、1961年のことでした。

女流棋士第一号・蛸島彰子女流六段が語る「奨励会でたった一人の女性だった青春時代」(文春オンライン)

 後に奨励会を卒業して「棋士」となるルートとは別に、「女流棋士」制度が創設されました。その最初の棋戦である「女流プロ名人位戦」(現女流名人戦)で蛸島さんが優勝し、初代女流名人となったのは1974年のことです。

 以来、将棋を指す女性は少しずつ増えていきました。また女流棋士も増え、林葉直子、中井広恵、清水市代、里見香奈といったスターが生まれました。

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 一方で、奨励会を卒業し、四段にまで昇段した「女性棋士」はまだ現れていません。

 蛸島さんの奨励会員としての挑戦が始まって以来、六十年近い歳月が経ちました。西山三段は何人もの先人のバトンを受け継ぐ、現代のトップランナーです。もしこの先も勝ち進めば、社会的にも大きな注目を集めることでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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