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優位に立った木村九段、史上最年長での初タイトル獲得に向けて大きく前進中 王位戦七番勝負第7局2日目

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

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現在形勢まったく不明 豊島王位に木村九段が挑戦する王位戦第7局2日目始まる

 王位戦七番勝負第7局▲豊島将之王位(29歳)-△木村一基九段戦は2日目の午後の段階に入り、いよいよこれから大詰めを迎えようというところです。

 昨日1日目が終わった時点では、どちらかといえば豊島王位ペースという声が多く聞かれました。

 しかし本日2日目、十数手進んで終盤戦を迎えた現時点では、木村九段が逆にリードを奪ったのではないかと見られています。

 16時過ぎ、木村九段は角を打って、豊島王位の玉に王手をかけました。この手も好判断と見られ、木村九段優位が次第にはっきりしてきたようです。

 もちろん、勝負のゆくえはまだまだわかりません。豊島王位がこのまま簡単に土俵を割るとも思えません。この先、どのような結末を迎えるでしょうか。

 さて、それにしても、豊島-木村「十番勝負」のこの展開を、どれだけの人が予想できたでしょうか。

「まさか本当に十番行くとは思わなかった」

 そうした声を筆者は多く聞きました。王位戦七番勝負と竜王戦挑戦者決定戦三番勝負で合わせて十番。どちらの番勝負も、下馬評は豊島乗りが圧倒的だったように思われます。

 いかに木村九段が強くとも、名実ともに現棋界の第一人者である豊島王位・名人が相手では、いかにも分が悪い。十番勝負といっても、全局戦われることはなく、途中で豊島二冠が圧倒してしまうのではないか。ついついそう考えてしまうのも、無理からぬことだったかもしれません。

 竜王戦挑決は豊島二冠が2-1で制しました。しかし王位戦は3-3で最終局にまで持ち込まれ、最終局が戦われています。そして木村九段が優位に立つという段階にまで至っています。

 木村九段はこの王位戦が始まるまで、タイトルに6度挑戦し、勝てばタイトル獲得という一局に8回敗れてきました。7度目の挑戦で、9回目のタイトルマッチポイントを迎えた現在、多くの木村ファンは、祈るような思いで中継を見ていることでしょう。

 改めて、木村九段の年齢は現在、46歳3か月。もし本局に勝てば、史上最年長でのタイトル初獲得となります。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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