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羽生善治四冠と佐藤康光棋聖が「炎の十七番勝負」含めて23局戦った2005年度

松本博文将棋ライター
2005年度23局目の羽生善治-佐藤康光戦(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 2019年、夏。将棋界では、豊島将之名人・王位と木村一基九段の熱いマッチレースを見ることができました。来る日も来る日も、豊島-木村戦を見ていたような気がした方も多いのではないでしょうか。

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 王位戦七番勝負と、竜王戦挑戦者決定戦三番勝負。これらを合わせた番数から「炎の十番勝負」と呼ぶ人もいました。

「炎の○番勝負」という言い回しは、最近では2017年、「藤井聡太四段 炎の七番勝負」という特別マッチの名称でも用いられました。

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 さらにさかのぼって、2005年度。この年度は羽生善治四冠(当時33歳から34歳)と佐藤康光棋聖(34歳から35歳)が七大タイトル戦で4回顔を合わせました(肩書はいずれも当時)。

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 棋聖戦、王位戦、王座戦は連戦。五、七、五で、合わせて「炎の十七番勝負」という報道もされました。

(羽生王位は)佐藤棋聖とは今期七大タイトル中、棋聖、王位、王座の三つで対戦し、「炎の十七番勝負」として注目を集めている。

出典:松本悌一「中日新聞」など2005年9月23日朝刊

羽生と佐藤の対決は王位戦七番勝負に先行する棋聖戦五番勝負とその後の王座戦五番勝負の三タイトル戦で連続し、「炎の十七番勝負」と呼ばれた。

出典:高林譲司「盤上の攻防 将棋 王位戦50年」『中日新聞』など2010年6月28日夕刊

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 棋聖戦はフルセットで佐藤棋聖が3勝2敗で防衛。

 王位戦もフルセットで羽生王位が4勝3敗で防衛。

 王座戦は羽生王座が3連勝で防衛。

 「十七番勝負」のうち、15局は実際に戦われたことになります。

 余談ながら、ちょうどこの頃は、瀬川晶司アマ(現六段)のプロ編入試験六番勝負がおこなわれ、そちらも大変な注目を集めていました。

 「十七番勝負」から2か月ほどの間をおいて、羽生、佐藤の両者は、今度は王将戦七番勝負でも戦いました。

 王将戦では、羽生王将3連勝の後に佐藤挑戦者が3連勝を返すという劇的な展開。

2005年度王将戦七番勝負第7局
2005年度王将戦七番勝負第7局
羽生善治王将(当時)
羽生善治王将(当時)
佐藤康光棋聖(当時)
佐藤康光棋聖(当時)

 最終第7局は羽生王将が制して、防衛となっています。

 まとめると、羽生四冠-佐藤棋聖が多く戦った2005年度は、4度のタイトル戦のうち3度はフルセットとなり、王位戦、王座戦、王将戦は羽生防衛。棋聖戦は佐藤防衛。さらにA級順位戦も合わせて23局を戦い、結果は羽生14勝、佐藤9勝でした。

 両者の戦いは、以後も長く続きました。2019年9月の現時点では、161局戦って、羽生九段107勝、佐藤九段54勝という成績が残されています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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