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豊島将之名人(29)が羽生善治九段(48)を降して王座戦挑戦者決定戦に進出

松本博文将棋ライター
将棋界の未来を担うと目されていた、20歳の頃の豊島将之さん(写真撮影:筆者)

 斎藤慎太郎王座(26歳)への挑戦権を争う第67期(2019年)王座戦決勝トーナメントは大詰めを迎えています。

 7月12日(金)には準決勝の豊島将之名人(29歳)-羽生善治九段(48歳)戦がおこなわれました。

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 豊島名人は先日、棋聖戦五番勝負で渡辺明挑戦者に敗れて、棋聖位を失冠。三冠から二冠に後退した直後の一局となります。王位戦七番勝負では木村一基九段の挑戦を受け、現在防衛戦を戦っているところですが、王座戦、竜王戦ではあともう少しで挑戦権を獲得というところにまで勝ち進んでいます。王位防衛で二冠堅持、さらには三冠復帰、自身初の四冠制覇も視野に入っているところでしょう。

 一方の羽生九段は、長年に渡って将棋界の頂点に君臨してきた大棋士です。その実績を挙げていけば厖大なものとなりますが、中でも王座戦では無類の強さを誇りました。これまでのタイトル獲得99期のうち、王座は実に24期。2014年には豊島七段の挑戦を2勝3敗で退けています。平成の王座戦は、まさに羽生王座の独擅場だったと言っても過言ではないでしょう。

2007年、王座戦五番勝負で防衛戦を戦う羽生王座(当時)
2007年、王座戦五番勝負で防衛戦を戦う羽生王座(当時)

 羽生九段の王座復帰、無冠返上、さらにはタイトル通算100期という大記録の達成を多くのファンが期待していたのは、言うまでもありません。

 豊島名人と羽生九段は、現在の席次では豊島名人が上位。本局は羽生九段が大阪に遠征して、関西将棋会館でおこなわれました。

 振り駒の結果、先手番を得たのは羽生九段でした。羽生九段はオールラウンダーで、最近は特に多彩な作戦選択をおこなうことでも知られています。羽生九段の序盤作戦がまずは注目されましたが、本局では四間飛車に構えました。

 一方の豊島名人は、銀を素早く中段に繰り上げる速攻を見せました。午後の早い段階で戦いが始まり、熱のこもった攻防が続きました。

 中盤の終わり頃で、羽生九段は豊島玉とは遠い逆サイドに、悠然と「と金」を作ります。対して豊島名人が決めに動き、戦局は一気に終盤戦へと突入しました。

 手番を得た羽生九段は、豊島玉の上部から迫っていきます。きわどいところですが、豊島名人が堅実にしのいで、優位をはっきりとさせました。

 手番を得た豊島名人は、反撃に転じます。銀、金を順に捨て、羽生玉を一気に受けなしに追い込む、見事な収束を見せました。終局時刻は21時12分。総手数は110手で、豊島名人が羽生九段を降しました。

 豊島名人はこれで挑戦者決定戦に進出。もう一方の準決勝である永瀬拓矢叡王-佐藤天彦九段戦の勝者と対戦します。

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 ハードスケジュールはトップ棋士の宿命ですが、豊島名人は7月下旬も重要な対局が続きます。

23日 竜王戦準々決勝 藤井聡太七段戦

25日 王座戦挑戦者決定戦

30日・31日 王位戦七番勝負第2局 木村一基九段戦

 豊島ファンにとっては、今後も熱い夏が続きそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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