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なぜ次々と起こる? 若手女流棋士、ベテラン男性棋士が「二歩」で反則負け

松本博文将棋ライター
将棋盤の上では何度も、考えられないことが起こってきた(画像筆者撮影)

 10月17日。トップ棋士の一人である菅井竜也七段(26歳)が、相手の駒を通り越して角を移動させる「ワープ」で反則負けになるという、信じられない事件が起こった将棋界。

 その後はなぜか立て続けに、同じ筋に2枚目の歩を打つ「二歩」の反則負けが、2回も起こっている。

 まずは10月18日。女流王位戦予選2回戦・武富礼衣女流初段(19歳)-石本さくら女流初段(19歳)戦。ここでは武富女流初段が二歩を打ってしまった。棋譜は現在のところ一般には公開されていないが、前日に菅井七段の反則負けがこともあってか、ニュースとして大きく伝えられた。

 

 続いて10月23日。C級1組順位戦▲都成竜馬五段(28歳)-△青野照市九段(65歳)戦。全10回戦のリーグで、ここまで都成五段は1勝3敗、青野九段は2勝2敗だった。

 詳しい棋譜については、「名人戦棋譜速報」(有料サービス)で公開されているので、ぜひそちらをご覧いただきたい。

 中盤から終盤に入ろうかという局面で、形勢は青野九段が大きく優勢。ここでは部分図のみ示す。

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 都成五段はここから▲7三桂成と指した。青野九段の残り時間はまだ2時間以上ある。夕食休憩は18時から。その少し前の17時37分に、事件は起こった。青野九段は△7七歩と打ってしまったのだ。

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 直前に△7二歩と打ったにもかかわらず、すぐに同じ筋に△7七歩と打ってしまうとは・・・。青野九段に重大な錯覚があったのだろう。

 言うまでもなく、プロの公式戦での反則は極めてレアケースである。驚くべきことが続く将棋界。この先もまた、何か事件が起こるのだろうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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