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藤井聡太五段、大逆転勝利で師弟戦実現!

松本博文将棋ライター
東京・将棋会館近く、鳩森神社のおみくじ(筆者撮影)

 久保利明王将に豊島将之八段が挑む、第67期王将戦七番勝負は、現在佳境を迎えています。第3局まで終わった時点で、久保王将2勝、豊島八段1勝。先に4勝を挙げたほうが、第67期王将となり、翌68期の挑戦者を迎えることになります。

 藤井五段は、前回の67期王将戦では、一次予選決勝まで勝ち進みながら、若手トップクラスの強豪である菅井竜也七段(現王位)に敗れて、二次予選進出を逃しています。

 2018年2月5日。大阪の関西将棋会館において、第68期王将戦一次予選1回戦、▲南芳一九段(54)-△藤井聡太五段(15)戦がおこなわれました。

 南九段は、タイトル獲得は合計7期。王将位も通算3期獲得するなど、実績十二分のベテラン棋士です。

 戦形は、先手の南九段が三間飛車の作戦を取ったのに対して、藤井五段は玉を堅く囲う居飛車穴熊。強豪ソフトの見解によれば、中盤で本格的な戦いが起こって以降は、ずっと南九段が大きく優位に立っていたようです。そして終盤でも、南九段が勝勢と見られていました。

 しかし藤井五段は、驚異の中終盤力を発揮しました。わかりやすい決め手を与えず、容易に崩れることなく、時には辛抱強く、時には大胆に、あらゆる手段を尽くして、逆転の機会を待ち続けます。南九段も手を焼いたか、形勢は次第に、怪しくなっていきます。

 そして最終盤。形勢はついに、大逆転となりました。藤井五段が勝ち筋に入った後、相手玉を寄せる段階での指し回しは、いつもながらに正確無比。最後は総手数230手。藤井五段が強敵を相手に、見事に大逆転勝利を収めました。

杉本七段との師弟戦の実現

 王将戦一次予選で2回戦に勝ち上がった藤井五段は、杉本昌隆七段(49)との対戦が決まりました。杉本七段は、藤井五段の師匠に当たります。

 将棋の世界では、同門同士、あるいは師匠と弟子の対戦が実現することは、しばしばあります。

 1969年の名人戦七番勝負では、師匠の大山康晴名人に、弟子の有吉道夫八段(現九段)が挑む、という例もありました。

 弟子が師匠に勝つことを、棋界では「恩返し」と言います。弟子はその成長ぶりを見せることが、何よりも師匠に対する恩返しである、という意味です。

 しかし、師匠も勝負師です。かつて杉本七段に「恩返し」についての本音を尋ねたところ、

「そういう恩返しはいらんです」

 と、苦笑していました。それよりも、師匠があまり勝てなかった、羽生善治現竜王などの超一流棋士に勝ってくれることが、本当の恩返しであると、杉本七段は思っているそうです。

 ともあれ、注目の師弟戦実現です。この世界では、師匠が弟子に稽古をつける、という例は、それほど多くはありません。しかし杉本七段は、藤井五段が小学1年の時から、数え切れないほど、盤上で指導をしてきました。

 そして現在では、研究会において、師弟は平手(ハンディなし)で指しています。今は師匠の方が、だいぶ押され気味だそうです。しかし杉本七段も、その名を知られた実力者。公式戦の対局は、果たしてどのような結果となるのでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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