なでしこリーグ上位進出を目指すアルビレックス新潟レディース。新戦力を得て好スタートなるか

昨季に続く好スタートを切りたいところだ(写真提供:アルビレックス新潟レディース)

【主力に大きな変化】

 昨年、7年ぶりに監督に復帰した奥山達之監督の下、守備を強化し、スロースタートになりがちだった例年の予想を覆す好スタートを切った新潟。上位陣の苦戦もあり、前半戦を終えて優勝争いも十分に狙える位置につけていた。だが、中断期間を経て後半戦は2勝3分4敗と失速し、最終的に6位でシーズンを終えることとなった。

 今季オフにはFW大石沙弥香やMF佐伯彩ら、11年にわたって新潟でプレーした2人が引退を発表。加えて、在籍年数が長い選手の多くが移籍などでチームを去った。だが、大黒柱のMF上尾野辺めぐみや、MF川村優理ら経験のある主軸の背中を追うように、若い芽も着実に力をつけている。GK平尾知佳、DF北川ひかるといった代表候補をはじめ、年代別代表で活躍した選手も少なくない。

 さらに、ゼネラルマネージャーも兼ねる奥山監督は今季、補強にも積極的に動いた。求めたのはスピード感だ。

 FW児野楓香、MF滝川結女ら、ゴールへの推進力を持ったアタッカーに、昨年1部の新人賞を獲得したDF三浦紗津紀という大器も加わった。奥山監督は1月末の新体制発表で、その補強の狙いをこう話していた。

「ゴールにアグレッシブに向かうサッカーは昨年から継続していきたいと思います。昨年は前線から背後に抜け出るスピード感と、サイドにもっとスピードが欲しいと思っていて、そういう選手たちが入ってきてくれました。スピードと高さのある選手が多くなったので、そういう部分をうまく機能させていきたいです」

 4月7日の緊急事態宣言とリーグから各チームへの活動休止要請を受け、チームは4月10日からチーム活動をストップした。ただし、コーチングスタッフと選手の間で連絡を取り合いながら、各選手は自主トレーニングをこなしていたという。

「感染予防のルールを徹底した中で、自主練習はできていました。シーズン中は自分と向き合う時間がなかなかないので、この期間は、各自に対して課題を与えていました。フィジカル面も大切ですが、どちらかというとテクニック面ですね。進めたい戦術に対して必要な技術や、それぞれに足りない部分を鍛えるように促していました。戦術的なことはしていません。シーズン当初の2月ぐらいから4月の頭ぐらいまでは活動できていたので、その中でキャンプにも行きましたし、チームの仕上がりも悪くなく、戦術も落とし込めてきていましたから」

 これまでの新潟は、チーム在籍年数が長い選手を中心とした強力なコンビネーションを一つの武器とし、攻守がハマった時には、思わず何度もリプレイしたくなるような美しい連係プレーを見せてきた。だからこそ、今季はメンバーが大きく入れ替わった中で、産みの苦しみを味わうかもしれない。

 だが、そこに成長のきっかけもあるのだろう。

 これまでのチーム作りにおいて、結果へのこだわりは持ちつつもそこに至るプロセスを大切にしてきたという奥山監督。新体制発表では今季のテーマとして「勝つ」ことを掲げたが、それは単に試合に勝つということだけではなく、「一つひとつの局面で勝つ」、「自分との戦いに勝つ」ということでもあると強調した。

 

 その点で、2年目のスタートに確かな手応えを得ているようだ。

「去年、久々に監督をやらせてもらって、1年間で作り上げてきたものがあります。今年は新戦力でオプションは増えましたが、新潟らしさであるひたむきさとか、最後まで頑張るところとか、そういう部分は継続させたい。その上で、『こんなことができるようになった』ということを表現していきたいですね。選手が成長の喜びを実感できて、表現できたものが見ている方やサポーターに伝わることを目指しているし、その結果、今まで上位にいたチームや、強力な戦力を持つチームに立ち向かっていきたいです」

【新潟のバンディエラ】

 選手の顔ぶれが変化した中で、今季は大黒柱である上尾野辺の存在感がさらに際立ちそうだ。

上尾野辺めぐみ(写真提供:アルビレックス新潟レディース)
上尾野辺めぐみ(写真提供:アルビレックス新潟レディース)

 新潟一筋で15年目を迎える新潟のバンディエラ(*)は、普段からクールでさっぱりとしていて、負けた試合後でも感情を露わにするのを見たことがない。だが、サッカーができなかったこの自粛期間は不安もあったと上尾野辺は明かした。

「なでしこリーグでは15年近く、この時期は試合をすることが当たり前で、これだけサッカーができないのは初めてでしたから、なんとも言えない不思議な感覚でした。年齢のこともあるので、これだけ練習ができていない中で、筋力とか体力がどうなっているのかは実際にサッカーをしてみないと分からないので怖さもあり、すごく気を遣いました。自主トレーニングではそういう体力面や筋力面に重点を置いて、家や外で、できる限りのことをやっていました。YouTubeでトレーニング動画を見たり、家から海が近いのでよく走りに行っていました」

 冬は雪が積もってグラウンドが使えなくなることもあるが、美しい季節に日本海を眺めながら走ることができる環境は、他のチームにはない魅力だろう。夏場の開幕が濃厚と見られる今年のリーグ戦について聞くと、「連戦になった場合の回復が大事だと思うので、そこはしっかりとケアしたいと思います」と、語気を強めた。

 新潟は正式なキャプテンを置いていない代わりに、試合ではいろいろな選手がゲームキャプテンとして腕章を巻く。上尾野辺にキャプテンのイメージはあまりないが、ピッチでは常に戦局を見極めて周囲を動かす「智将」というイメージがある。

 広い視野でパスを配り、セットプレーでは駆け引きと正確なキックで魅せる。そして、毎年必ず、上尾野辺がため息の出るようなスルーパスやビューティフルゴールで、勝利を導く試合がある。

 今年は、どんなプレーをイメージしているのだろうか。

「若い選手が多くなって、本当にフレッシュさがあります。スピードのある選手が多いので、その特長を生かせるようにうまくパスを配給したいですし、そこでしっかりコントロールしてあげて、みんなが伸び伸びプレーできるようなゲームを作っていけたらいいですね。個人的には、毎年10点は取ろうと目標を立てているのですが、今年はポジションがどこになるのかまだわからないので(笑)。でも、シュートでもパスでも、10点以上には関わっていきたいと思っています」

 ボランチ、サイド、トップ下に加え、フォワードでもワントップや2トップなど、あらゆるポジションでプレーしてきた。今年は攻撃的な選手が多いだけに、中盤でゲームをコントロールする時間帯が多くなるかもしれない。

 背番号10が振るタクトが、新たな選手たちの魅力をどんなふうに引き出すのか楽しみだ。そして、今年も鮮やかなゴールを期待せずにはいられない。

(*)イタリア語で「旗手」を意味する。一つのチームで長くプレーし、そのチームを象徴的する選手に対して使われる。

(※)インタビューは5月下旬に電話取材の形で行いました。