日体大が大学女子サッカー日本一に!2連覇、無失点優勝を支えたなでしこリーグ1部での経験と負けじ魂

日体大がインカレ2連覇を達成した(筆者撮影)

【“最弱”世代の反撃】

 1月19日(日)に味の素フィールド西が丘(東京都北区)で行われた全日本大学女子サッカー選手権大会(インカレ)決勝。大学女子サッカー日本一を決める大一番は、2年連続で同じカードが実現した。大会最多優勝を誇る日本体育大学(日体大)と、5大会連続決勝進出で勢いのある名門・早稲田大学(早大)が対戦。3,799人の観客が会場を埋め、バラエティに富んだ応援歌や吹奏楽団による演奏など、インカレならではの賑やかな雰囲気の中で行われた。

 一進一退の攻防が続く中、日体大は前半10分にFW児野楓香がループシュートで先制。早い時間帯に主導権を握ると、その後は早大の反撃を抑えながら追加点を狙い、同41分には児野のスルーパスに抜け出したMF奥津礼菜がGKとの1対1を制して2点目を決めた。後半は早大のさらなる猛攻を耐え抜き、そのまま2-0で勝利。2年連続18度目のタイトルに、大会通算無失点の記録が華を添えた。

 決勝に至る5試合の結果を見れば、王者が力の差を見せつけたようにも見える。だが、日体大の選手たちが向き合ってきたのは、ディフェンディングチャンピオンとしてのプレッシャーではなく、自分たちの弱さだった。

 昨年8月から行われた、インカレの関東地区予選にあたる関東大学女子サッカーリーグ戦(通称:関カレ)の結果は10チーム中6位。7つある出場枠の中で、日体大は関東第6代表として今大会に出場していた。関カレで32大会中過去19回のタイトルを獲得してきた日体大にとっては過去最低の成績だ。それも、選手たちにとっての発奮材料になったのだろう。

 大会MVPに選ばれた奥津(4年)は、試合後にこう振り返っている。

「私たちは最弱(世代)と言われてきたし、自分たちでもそう思ってきました。前の年(シーズン)のチームと比べられることも多かったし、関カレもうまくいかなかったですから。でも、応援や支えがあってこの結果を出せたので嬉しいです。早稲田は個々で見てもレベルが非常に高かったので、1対1で負けないことや、チームでハードワークすることを意識して試合に臨みました。(連覇について)ホッとしたというよりは『やってやったぞ』という気持ちですね」

 日体大は今大会、攻撃面に課題を抱える試合が多かった。だが、最終ラインではキャプテンのDF橋谷優里(4年)を中心に、センターバックで橋谷とコンビを組むDF関口真衣(2年)やGK福田まい(3年)を中心に全員で粘り強く守り、全試合で無失点を貫いた。そして、最後は個の力も発揮し、なんとか相手ゴールをこじ開けた。

 薄氷を踏む内容の勝利を重ねてきただけに、決勝の2日前に行われた準決勝の帝京平成大学戦(○2-0)の試合後も内容面に満足している選手はいなかった。試合で活躍した選手たちが「今日みたいな試合をしていたらもっと苦しくなる」、「攻撃に厚みがなかった」、「自分たちのサッカーができていない」といった課題を口にしていたのだ。

【堅守を育んだなでしこリーグでの経験とメンタリティ】

 ボランチのポジションでチームを牽引したMF今井裕里奈は、優勝を引き寄せた堅守の要因について、「なでしこリーグでたくさんの失点をしてきた中で、チームとして徐々に守備ができてきて、無失点が続いていることが自信になっています」と、準決勝後に話している。

 

 日体大の学生選手と日体大OGの社会人選手が主体となった「日体大FIELDS横浜(日体大F)」は、2018年と19年、なでしこリーグ1部で唯一の大学チームとして戦ってきた。卒業と入学によって選手が毎年入れ替わり、教育実習などで主力が抜けることもあるため、他のクラブチームと比べて積み上げが難しい。また、なでしこリーグと並行して関カレなどの学生リーグも戦うため、選手起用のバランスは悩ましい。前年に比べて社会人選手が少なかったことも、楠瀬直木監督の選択肢を狭めた。

「同時になでしこリーグとダブルヘッダーがあったり、神奈川県リーグと東京都リーグにも登録しているので、そのメンバーで1日2試合やったり、土日(連続)で試合をしたり、選手たちは大変だったと思います。なでしこリーグをメインに主力を起用していましたが、関カレもそう簡単ではなかった。メンバーのやりくりは大変でした」(2019年12月)

 昨年8月から11月にかけて行われた関カレは、なでしこリーグが佳境を迎える時期と重なった。炎天下でダブルヘッダーをこなす選手もいる過酷な状況だった。勝った時はまだいいが、両リーグで負けが続いていた時は心身の疲れが倍増したのではないだろうか。

代表選手が揃うベレーザに大敗を喫した試合もあった(筆者撮影)
代表選手が揃うベレーザに大敗を喫した試合もあった(筆者撮影)

 なでしこリーグでは、代表選手が揃う日テレ・ベレーザとの対戦で、毎試合20本近いシュートを浴びて完敗。リーグ後半戦は7試合勝ちなしの泥沼に陥ったことなどが響き、結果的になでしこリーグでは残留圏内に勝ち点「2」差の10位(最下位)で2部に降格となってしまった。

 だが、打ちひしがれるような悔しさを何度も味わいながら、日体大の選手たちは少しずつ、着実に進化を見せた。

 リーグ戦ラスト2試合で初の連勝を飾り、年末の皇后杯では長い間越えられなかったベスト16の壁を破った。そして、インカレではなでしこリーグを戦ってきた主力メンバーが中心となり、関カレで敗れた上位校を次々と破って頂上を極めた。

【卒業後の進路】

 今年で卒業となる4年生からは、なでしこリーグ1部のチームに3名の加入が決まっている。また、2部のチームには4年生が2名、社会人選手1名の加入が発表された。

 

 1部のチームでは、奥津と今井が来季ジェフユナイテッド市原・千葉レディースへ、児野はアルビレックス新潟レディースへの加入が決まっている。

 児野は昨年、インフルエンザでインカレ優勝に立ち合えなかった悔しさも原動力にして、今大会では準決勝と決勝でチームに流れを引き寄せる先制点を決め、勝利の立役者となった。

1ゴール1アシストで優勝に貢献した児野(左)と、中盤で試合をコントロールした今井(筆者撮影/写真はリーグ戦)
1ゴール1アシストで優勝に貢献した児野(左)と、中盤で試合をコントロールした今井(筆者撮影/写真はリーグ戦)

 今季はケガが多くフル出場は6試合にとどまったが、その中でチーム最多の6ゴールを決め、なでしこリーグの得点ランク入り(7位)。予測できないプレーや独特の嗅覚を感じさせる動き出しを見せ、ここぞという場面での決定力も光った。

「自分はサッカーが上手い選手ではないので、他の人にはない嗅覚と感覚を磨きながら、大事な時に点が取れるストライカーになりたいです。来季は新しいチーム(新潟)の勝利に貢献して、目指しているなでしこジャパンに食い込んでいきたいです」(児野)

 今井は今大会でエースナンバーの10番を背負い、人一倍大きなプレッシャーの中で戦っていた。そのなかで、重要な局面でテクニックを発揮。繊細なスルーパスや、複数の相手を振り切るターンなど、一つのプレーで流れを引き寄せる場面があった。児野、福田とともに2018年夏のU-20女子W杯フランス大会優勝メンバーに名を連ね、昨夏の第30回ユニバーシアード競技大会でも日本女子代表の大黒柱としてチームを準優勝に導いた。

「日体大の10番は歴代でも尊敬する先輩方がつけていたので、正直、自分がつけていいのかな…という気持ちだったのですが、優勝という結果で終えられて良かったです。世界で戦えた経験をジェフでも生かしていきたいなと思います」(今井)

 奥津はリーグ戦ではサイドハーフやサイドバックで起用され、今大会直前からはボランチでもプレーするなどユーティリティ性を発揮。その中で攻撃にアクセントを与えていた。

「最初は日体大に(社会人選手として)残ろうと思っていたのですが、1部でプレーできるチャンスがあるならどんどん上を目指したいと思って挑戦しました。新たな環境で慣れることがまずは大事ですし、1年目からどう絡んでいくかが大事だと思っています」(奥津)

 彼女たちが残したものを、次の代は来季、どう受け継いでいくのだろう。昨年に続き正GKとして大会連覇に貢献した3年のGK福田は、優勝という結果にホッとした表情を見せつつ、悔しさも口にした。

 

「無失点で優勝できたことは良かったですが、自分が確実なプレーをできなかった場面があったのでそれが悔しいです。完璧な試合ができず、勝っても毎回、何かしら自分に思うこと(課題)がありますから」(福田)

 悔しさをバネに、次はどんな姿を見せてくれるだろうか。若き挑戦者たちの戦いを、来シーズンも楽しみにしている。