女子W杯まで3ヶ月。強豪との3連戦に臨むなでしこジャパンは4割が新戦力

3連戦に向け、国内合宿で調整した。三浦成美(左)、阪口萌乃(右)(筆者撮影)

【W杯に向けた強豪とのテストマッチ第一弾】

 6月にフランスで開催される女子W杯まで、残すところ3ヶ月あまり。なでしこジャパン(FIFAランク8位)は、2月27日から3月5日まで、アメリカで開催されるSheBelieves Cupに参戦し、アメリカ(同1位)、ブラジル(同10位)、イングランド(同4位)と対戦する。

 その後、4月にはフランス(同3位)、ドイツ(同2位)との親善試合が組まれている。ランキング上位の強豪国とのテストマッチを経て、本大会に臨む準備は整った。

 今回の遠征には、1月の国内候補合宿で初招集された選手の中から、DF大賀理紗子、MF松原有沙、FW池尻茉由、FW小林里歌子の4名が呼ばれた。

 また、昨年8月のU-20女子W杯優勝メンバーのDF宮川麻都、DF南萌華、FW遠藤純の3名に加え、追加招集されたGK齊藤彩佳、GK武仲麗依の2名もA代表での試合出場がなく、出場すれば代表デビュー戦となる。

 一方、FW岩渕真奈、FW田中美南、FW菅澤優衣香ら、W杯アジア予選を勝ち抜いた主力が外れた。その理由を、高倉麻子監督はこう説明している。

「コンディションの都合で名前を入れていない選手もいますし、今回の選手をより(優先的に)試してみたいという理由で名前が外れた選手もいます」

 ケガやコンディションの詳細は所属チームが公にしていないケースもあるが、彼女たちがW杯に臨む23名の最終候補者であることは間違いない。今はっきりしているのは、日本は新戦力が約4割を占めるチームで強豪国との3連戦に臨むということだ。

「今回の3試合と、その後のフランス遠征、トータルでいろんな選手を試すつもりです。ベースは頭の中にありますが、固定して形を決めるというよりは余白をたくさん残して、選手の伸びしろでその余白を埋めてもらいたいと思っています。グラウンド上でのパフォーマンスを見て(W杯に向けた)絵を描いていきたいと思います」

 大会の狙いを、高倉監督はそう話した。

 W杯に臨むメンバーの「ベースは頭の中にある」と明かしていることもあり、大会を目前に控えた今の段階で「対戦の可能性がある相手に手の内を明かしたくない」狙いもありそうだ。3カ国とも6月のW杯出場国であり、イングランドとはグループリーグ第3戦で対戦する。

 だが、W杯を3ヶ月後に控えた段階でメンバーを固定化せず、これほど多くの新戦力を試している国は他にないだろう。

【「固定しない」チーム作り】

 そもそも、高倉ジャパンはチーム立ち上げから約2年間、核となる選手はいても「形」は決めずにチーム作りを進めてきた。代表はクラブチームと違い、ある程度メンバーやポジションを固定しながらチームを強化していくやり方が王道と言えるが、高倉監督は対照的な手法をとっている。

 その狙いとして、競争の中で選手層を厚くし「2チーム分作りたい」ということや、複数のポジションでプレーできる選手を多く起用することで、短期決戦で起こりうる様々な事態に対応できるチームを目指すことも口にしてきた。

 一方、形を固定しないことで連係が成熟しづらく、特にチーム立ち上げからの2年間は、得点パターンがなかなか生まれない苦悩があった。

 しかし、そういった中で地道に土台を作り、昨年のW杯アジア予選では、直前のアルガルベカップからメンバーを固定。そして、本番では短期間で見事な団結力を発揮し、チームは1試合ごとに成長していった。忍耐強く守り、ここぞという場面でMF阪口夢穂、岩渕、FW横山久美らが決定力を示し、接戦を勝ち抜いた。

 そして8月のアジア大会でも、堅守の中で少ないチャンスを生かし、2つ目のタイトルを獲得した。

 

 しかし、目に見える結果は出たものの、内容については攻守で課題が残り、「アジアで勝ててもこのままではW杯で勝てない」と思いを新たに、1年後のW杯に向け再スタートを切った。

 

 その後、再び選手の見極めにエネルギーを割く時間が増えた理由を考えると、国内リーグや年代別代表から新戦力が台頭してきたことが挙げられる。

 昨年8月のアメリカ遠征では、MF三浦成美、MF阪口萌乃、MF杉田妃和らが台頭。また、同時期にフランスで行われたU-20女子W杯で優勝したメンバーからも、南、遠藤、宮川の3名に加え、MF長野風花、MF宮澤ひなた、FW植木理子、DF北村菜々美らがA代表の候補入りを果たした。そして、今回初選出となった大賀、松原、池尻、小林の4名も、昨年のリーグで能力の高さを示した。

 高倉監督は、そういった選手たちの「余白を埋める力」に可能性を感じているのだろう。

 もちろん、このチームが目指してきた「多彩なコンビネーションから生まれる攻撃」を実現するためには、連係を成熟させることも急務。個の見極めとは常に隣り合わせのジレンマだ。

【大会の見どころは?】

 今大会で初めて国際試合を戦う選手たちが、欧米の屈強な選手たちのパワーやスピードにどう対応するかは見どころの一つだ。W杯メンバー23名の最終候補に残るためには、1対1の対応だけでなく、チームの結果につながるプレーも重要だ。

 DF熊谷紗希、DF鮫島彩、MF中島依美、MF長谷川唯、横山ら、各ポジションで軸となる選手は、経験の浅い選手たちを支えながら全体のバランスを取り、結果も求められる難しさがある。かなり厳しい状況だが、苦しい時に打開策を示せるのはやはり、彼女たちの経験だろう。

 また、セットプレーも注目したいポイントだ。

 大会直前の福島合宿では、元日本代表の秋田豊さんをゲストコーチに招き、ヘディングについて理論と実践の両面からレクチャーを受けていた。

 身長180cmで、国際大会では自分よりも10cm以上高い相手と互角以上に戦ってきた秋田さんは、

「最高打点でボールを触る、シュートを打つ、クリアすることができれば、苦手意識は必要ない」

と、ゴール前での駆け引きも含め、具体的なアドバイスを送っていた。

 日本はクロスやセットプレーからの失点が多い中、空中戦の捉え方を根底から覆された選手も少なくなかったようだ。

選手たちは秋田コーチの指導に聞き入っていた(筆者撮影)
選手たちは秋田コーチの指導に聞き入っていた(筆者撮影)

「自分がいつもこの位置かな、と思ってジャンプしていたタイミングよりも早くジャンプしたほうがいいと教わり、練習してみたらいつもより頭一つ分高いところでヘディングできた感覚がありました。今まで勘違いしていたんだな、と思いました」

 そう話す南の表情には、自分の新たな伸びしろを見つけた率直な喜びがあった。強豪との3連戦は、その成果を発揮するまたとない機会となる。

 また、このチームで特に経験のある鮫島とDF宇津木瑠美の2人が、秋田さんに積極的に質問をしていたのも印象的だった。

「子供に戻ったような気持ちで、自然と次から次に質問が出てきて(笑)。年齢が上がるにつれて、初心に戻って新しいことにトライすることが少なくなっていたので、刺激になるお話でした」(宇津木)

 そして秋田さんも、選手たちの吸収力に驚いていた。ぜひ、今後も継続してほしい取り組みだ。

 1月の国内合宿でケガから復帰した阪口(夢)は、今回、国内合宿だけの参加となり、チームを送り出す立場になった。ケガをする前のキレは戻っているように感じたし、本人も手応えを感じているようだったが、強度の高い相手だけに、無理はさせないというスタッフ側の判断もあるだろう。

「このような強豪国と対戦できる機会は少ないと思うんです。だから今、自分たちがどこまでできるか、見つけてきてほしいですね。(国内合宿では)パスで崩したり、前を向くことを重点的に練習したので、どこまで通用させられるか、テレビの前で楽しみにしています」(阪口夢)

 様々なことにトライした結果、コテンパンにやられる可能性もある。それでも、6月のW杯に向けて、収穫は多ければ多いほどいい。

大会は3試合とも、BSフジで生中継される。