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活気に満ちた「なでしこチャレンジキャンプ」は、A代表の発掘と底上げの機会に(監督・選手コメント)

松原渓スポーツジャーナリスト
多彩な個性が集まったチャレンジキャンプ(筆者撮影)

 12月3日(月)から静岡県のJ-STEP(清水)で「なでしこチャレンジキャンプ」が行われ、4日目には藤枝明誠高校とのトレーニングマッチ(30分×3本、●2-4)を行った。ここでは、合宿初日と4日目の高倉監督談話、および、選手コメント(一部)を掲載する。

参照記事:女子W杯への道を拓く“なでしこチャレンジキャンプ”。23人による5日間のアピールの成果は?

監督・選手コメント(一部抜粋、写真は筆者撮影)

高倉麻子監督(初日)

ーー初日を終えて、合宿のスタートはどのような印象ですか。

まだ大人しいですけど、スピードがある選手が多く技術もしっかりしているので、日本(の女子サッカー)が全体的にレベルアップしていることを感じます。個々の特長を生かしてうまく絡んできてくれるといいなと思っています。

ーー開始前の円陣では、どのようなことを伝えたのですか。

W杯とその後の五輪も含めて即戦力になると思う選手を呼んだので、まずはアピールしてほしい、と。この5日間からいろんなことを持ち帰って、いろんな人と喋って、サッカーを考える機会にしてほしい、と伝えました。

ーー代表に呼んだことのある選手は、リーグでの活躍を評価されての招集でしょうか。

そうです。呼んだことがある選手は気になっていますし、「メンバーから外れてもしっかりやれよ」というメッセージでもあるので。頑張っていればまたチャンスはある。その中で、意識が(前から)どんな風に変わっているのかも見たいです。しっかり見ている(状態を把握している)選手は呼んでいないということもあります。

ーーいま、特に探しているポジションはありますか。

攻撃は全体的に層が厚く、前(のポジション)は厳しい戦いになると思いますが、後ろのポジションは足りないと感じています。(他のポジションからの)コンバートも含めて、最終ラインはもう1セット欲しい。点を取るチームを目指していますが、大会で勝っていくために守備は外せませんので。

MF 杉田亜未
MF 杉田亜未

MF 杉田亜未(伊賀FCくノ一/2日目)

ーー合宿の雰囲気はどうですか?

みんな積極的ですね。自分自身もここに選んでもらって、(また代表に選ばれる)可能性があることがわかりましたし、積み重ねてきたことをどんどんチャレンジしていきたいです。プレーの個性がみんな違ってすごく刺激になるし、若い選手に負けたくないという前向きな気持ちです。

ーー今季、2部でMVPに選ばれましたが、この1年間でどんなことが変化しましたか。

昨年、代表に選んでもらった時に、海外遠征などで試合を経験させてもらった中で思うようなプレーができなかったんです。もともと体が小さいですし、強くなりたいとその時に強く感じました。その悔しさを持って1年間やってきたので、成長への欲求は前よりも強くなりましたね。今回(のチャレンジキャンプ)は1部でプレーしている選手が多いし、その中で自分がどれだけできるかもチャレンジしたい。個人で積み重ねてきたトレーニングを、プレーに反映させたいと思っています。

ーー練習の中では、何が求められていると感じますか?

求める基準は以前と変わらず、世界と戦える選手だと感じました。そのために、パスやクロスの質を高める意識や、1対1で勝負する積極性が必要だし、個の部分でもっと強くなりたいですね。試合で結果を出すことや、目に見える数字も意識しようと思っています。

FW 小林里歌子
FW 小林里歌子

FW 小林里歌子(日テレ・ベレーザ/2日目)

ーーチャレンジキャンプの2日目を終えて、どんな発見がありましたか?

ベレーザで練習している分、余裕を持ってやれている部分もありますが、この合宿ではパワフルな選手が多くて、力不足を感じることもあります。シュートレンジが広い選手が多いですね。

ーー今年はドリブルで仕掛けるプレーが多くなったと思いますが、自分の中でどのぐらい意識していますか。

数的不利の状況をドリブルで割って行ったりディフェンスラインを突破してゴールまで行くプレーを(ベレーザでは)求められているので、味方を使える場面でも、状況によっては自分でシュートを打っていけるようにしたいです。

ーーサイドハーフでプレーする機会が増えたことも変化の一因ですか?

そうですね。今まではサイドで試合に出ることが少なかったんですが、行ける時は縦を狙ったり、中に入ったらシュートまで持ち込んだり、探りながらプレーしています。

ーーベレーザには代表候補が多くいますが、代表に入っていくためには何が一番必要だと感じますか?

FWのポジションなら、自分でシュートまで持っていく形と、シュートの質ですね。自分で仕掛けていく意識は、まだまだ自分に足りないな、と思います。

FW 池尻茉由
FW 池尻茉由

FW 池尻茉由(吉備国際大学Charme岡山高梁/3日目)

ーー紅白戦では、左足で印象的なゴールを決めていました。今回、1部や2部の選手とトレーニングして、どんな手応えを感じますか。

(チャレンジ)リーグではある程度余裕を持ってゴール前まで行けたんですが、今回(の合宿)は全然違いました。プレースピードが早いし、ボールを持ちすぎたら寄せられるので、もっと判断を早くしたいです。受ける時に相手との間合いを取れれば前を向けるな、と思いましたが、もっとフリーで受けられる努力が必要だな、と。右足の精度も課題です。

ーークサビのパスを受ける時も、背後の相手との距離感を大事にしているんですか?

はい。相手がついてこられないようなスピードも大事なのですが、そこで(ターンして)マークを剥がす能力ですね。

ーーボールを受ける時の重心が低いなと感じましたが、筋力や体幹をどうやって維持しているんですか。

そんなに強くないと思いますよ(笑)。筋トレは週1ですが、体が硬くて柔軟性がないので、緩めるトレーニングをしています。

ーーボールを受ける時の感覚や、イメージを作る上で参考にしていることを教えてください。

(自分と同じ)左利きの(アリエン・)ロッベン選手が好きなんです。だから、海外サッカーの映像はよく観ますね。でも、一番大きいのは、この4年間なでしこリーグでやってこられたことです。徐々にサッカーを知る中で、考えてプレーするようになりました。

ーー来年は韓国リーグでプレーすることが決まっていますが、代表への思いはどうですか。

今回初めて選んでもらったからには、さらに上を目指したいと思います。来シーズンは日本にいない分、よほどの結果を残さないと見てもらえないと思うので、しっかり目に見える結果を残したいと思います。

FW 宝田沙織
FW 宝田沙織

FW 宝田沙織(セレッソ大阪堺レディース/4日目)

ーーなでしこジャパンにつながるカテゴリーに初招集されて、どんなことが刺激になりましたか。

レベルの高い中でトレーニングできて楽しいし、なでしこに直結するキャンプでプレーできることが嬉しいです。

ーー攻撃面でアピールできたと感じる部分はありましたか?

1部だと、相手を抜いてシュートまで持ち込む形がなかなか作れないので、抜ききる前に打ったり、シュートレンジを広げることを意識しています。今日の(藤枝明誠高校との)トレーニングマッチではボールを要求できず、あまりパスが来なかったので、パスを引き出す動きを増やしたいなと思いました。

ーーここからW杯までの半年間で、どんな過ごし方をしようと考えていますか?

試合では個人的なミスで相手にボールを奪われる場面もありましたし、いろいろな課題が出たので。そういうミスを減らせるように、基本から見つめ直すことを積み重ねていきたいですね。

DF 大賀理紗子
DF 大賀理紗子

DF 大賀理紗子(日体大FIELDS横浜/4日目)

ーー4日間、なでしこジャパンとも共通するトレーニングをしてみてどうでしたか?

オフのポジショニングは、ボールが来てから考えるのではなく、もっと早く考えて判断しなければいけないので、頭の回転はまだまだ足りないな、と、今回の合宿を通じてすごく感じました。相手が最後にグッと力を入れてきた時の対応は得意としているので、そこは自信を持っていきたいです。

ーー所属の日体大は今シーズン、3バックを採用しています。代表は4バックが基本システムですが、切り替えはスムーズですか?

自チームだと、守備で5バックになった時に(選手間の)サポートの距離が近いのですが、4バックになった時は間隔を大事にしています。自分がボールを運んでから出すのか、早くパスした方がいいのかという判断が難しいし、パススピードも、いつもの(5バックの)感覚だと通らないことがあるので、その点はさらにレベルアップしていきたいです。

ーー最終ラインでのコーチングやリーダーシップはどうでしたか?

高瀬(愛実)選手と土光(真代)選手の2人がサッカーだけでなく、日常でも盛り上げてくれていました。自分は(声出しが)まだまだ足りないと感じたし、そういう面でもさらに自分を出していかないとこの先は残っていけない。自分に喝を入れてやっていきます。

ーー代表に直結するカテゴリーは初めてですが、W杯とか五輪は、現実的な目標になってきましたか?

はい。今回は、選ばれたことに本当に意味があると思っているので。このチャンスを掴むか掴めないかは自分次第だと思うし、生き残っていくにはチームに戻ってからが大切なので。このチャンスを無駄にしないように、やっていきたいと思います。

高倉監督(4日目/トレーニングマッチ後)

ーー4日間の合宿で、どのような発見がありましたか?

このチャレンジキャンプ自体が、なでしこの底上げでもあるので、代表でやっている戦術的なところを落としながら、個人の力を見てきました。(藤枝明誠高との)トレーニングマッチでは、チームとしてというよりは個人として、いい状況判断ができると感じた選手が数名いました。

ーー現時点で、来年のW杯に向けて、23人の枠は何%ぐらい見えてきていますか?

今年はみんなが頑張ってくれて、(アジア2冠を獲った)そのメンバーがベースで90%以上は決まったかなと考えていたのですが、今回(の合宿は)非常に手応えがありましたし、80%ぐらいに下がりました。今回のメンバーも(今後の)競争に加わると思います。

ーー個の力を求めていることも強調してきましたが、具体的にはどういったプレーがポイントになりますか。

サッカーは相手のパワーを受けながらやっていくので、その中で間を作れたり、シンプルに、相手を外せるプレーがすごく大事です。守備では、二手、三手先を読んでボールを奪えたり、周りの人間にボールを奪わせることができることが大事だと思います。表現にすると「状況判断」となりますが、局面の中で2つ、3つ先の展開を予測して、かつ先手を取れるという点で、攻守ともにいいものを持っている選手がいました。ただ、チームにフィットしてくるかどうかは見てみないとわからない。(W杯まで)そんなに時間もないですし、どこまで上がってくるかはわからないのですが、2ヶ月後、3ヶ月後にフィジカル的な部分でもメンタル的な部分でも上がってくれば、(A代表でも)やれそうだな、と感じます。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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