女子W杯への道を拓く“なでしこチャレンジキャンプ”。23人による5日間のアピールの成果は?

5日間のチャレンジキャンプが行われた(筆者撮影)

【なでしこジャパン入りへのチャンス】

 12月3日(月)から5日間、静岡県のJ-STEP(清水)で行われた「なでしこチャレンジキャンプ」。

 文字通り、なでしこジャパン入りの可能性があるタレントを集めたこの合宿は、半年後にフランスで予定されている女子W杯の候補入りを目指す選手たちの熱気に満ちていた。

 午前と午後の2部練習も含めてトレーニングは全8回行われたが、選手たちがグラウンドに出てくる時間が早いために開始予定時刻が繰り上がることも多く、並々ならぬ意欲が伝わってきた。高倉麻子監督を筆頭に、なでしこジャパンのコーチングスタッフが見守る中、シュート練習や3対3などの練習では、回ってくる限られたターンの中で自分の強みを最大限にアピールしようという姿勢が見え、紅白戦には入団テストのような緊張感が漂った。

 高倉監督は、今回の合宿の狙いを初日にこう明かしている。

「W杯とその後の五輪も含めて、即戦力になると思う選手を呼んだので、まずはアピールしてほしい。この5日間からいろんなことを持ち帰って、いろんな人と喋って、サッカーを考える機会にしてほしいと伝えました」(高倉監督)

 現在なでしこジャパンの候補であるMF阪口萌乃、MF三浦成美、DF國武愛美、MF杉田妃和、GK平尾知佳の5名は、今年2月に行われたチャレンジ合宿でチャンスを掴んだ。また、新戦力の発掘に加えて、代表の戦い方を共有して広めることでリーグや代表の底上げにつなげたい狙いも窺えた。

【国内リーグから選ばれた23名の精鋭】

 今回の合宿に招集されたのは、国内リーグでプレーする23名だ。

 リーグとリーグ杯の2冠を達成したベレーザで堅守を支えるDF土光真代、得点ランク2位に輝いたFW南野亜里沙(ノジマ)、2部でMVPを獲得した杉田亜未(伊賀)、3部にあたるチャレンジリーグで得点王とMVPを獲得した池尻茉由(吉備国際大)ら、各カテゴリーで活躍した精鋭がずらりと顔を揃えた。そのうち、23歳以下の若手選手が19名を占め、年代別代表で実績を残してきた選手たちも多く選出された。

U-20女子W杯で活躍した植木理子(左)と宝田沙織(筆者撮影)
U-20女子W杯で活躍した植木理子(左)と宝田沙織(筆者撮影)

 高倉監督が指揮した2014年U-17女子W杯優勝世代のエースストライカーだったFW小林里歌子(ベレーザ)や、2016年のU-20女子W杯で得点王になったFW上野真実(愛媛)に加え、今夏フランスで行われたU-20女子W杯の優勝メンバーからも6名が参加。同大会でブロンズブーツ(得点王3位)を獲得し、今年のアジア女子最優秀ユース選手に輝いたFW宝田沙織(C大阪堺)や、同大会で宝田とともに攻撃を牽引し、今季リーグ杯で得点王になったFW植木理子(ベレーザ)も名を連ねた。

 練習前のミーティングにも熱がこもった。昨年6月の欧州遠征など、高倉ジャパンでA代表の招集経験がある杉田は、

「求める基準は以前と変わらず、世界と戦える選手だと感じました。そのために、一つのパスの質を高める意識や1対1で勝負する積極性が必要だし、個の部分でもっと強くなりたい」

 と話し、W杯までの半年間で目に見える結果を残したいと強調。

 宝田は、

「レベルの高い中でトレーニングできて楽しいし、なでしこに直結するキャンプでプレーできることが嬉しいです」

 と、初めて一緒にプレーする選手たちから刺激を受けたようだった。

【必要とされる個の力とは?】

 指揮官は、攻撃では「相手を外せるプレー」、守備では、「二手、三手先を読みながらボールを奪える力」を、目を引く「個の力」として挙げた。

 また、身長が164cm以上の選手が23名中15名と、長身選手が多かったのも印象的だ。それは、日本がフィジカル面の弱さを指摘されやすいことへのアンチテーゼでもあるだろう。クロスからの失点が多い高倉ジャパンにとって、「高さ」や「強さ」といった要素は特に守備面で生かしたいところだ。

「攻撃は全体的に層が厚く、前(のポジション)は厳しい戦いになると思いますが、後ろのポジションは足りないと感じています。(他のポジションからの)コンバートも含めて、最終ラインはもう1セット欲しい。点を取るチームを目指していますが、大会で勝っていくために守備は外せません」(高倉監督)

 なでしこジャパンは今年4月のアジアカップと8月のアジア大会でタイトルを獲得。その2大会の主力で、コンディショニングやパフォーマンスの安定感を考えれば、現時点でメンバー入りが濃厚と思われるのは、DF熊谷紗希(リヨン)、DF鮫島彩(INAC)、DF清水梨紗(ベレーザ)の3名だ。複数のポジションや役割をこなせる選手も多く、不足しているポジションはチーム全体で埋めていくと思われるが、高倉監督はW杯に向けて2チーム分作れるだけの戦力を目指しており、最終ラインにはまだ新戦力が抜擢される可能性もある。

  今回、センターバックでは169cmの高さと1対1の対応に特長を持つDF大賀理紗子(日体大)や、U-20女子W杯で、海外勢に空中戦の強さを見せた168cmのDF高橋はな(浦和)などが新たに候補入りし、アピールした。

 一方、ラインコントロールやコーチングを率先して行っていたのは、土光と、前回のチャレンジキャンプにも参加したDF高瀬愛実(INAC)だ。

「2人がサッカーだけでなく、日常でも盛り上げてくれていました。自分は(声出しが)まだまだ足りないと感じたし、そういう面でもさらに自分を出していかないとこの先は残っていけない。自分に喝を入れてやっていきます」

 そう話したのは大賀だ。リーグ2強の守備を支える2人のリーダーシップは際立っていた。

【攻撃陣は激戦区】

 合宿4日目に行われた藤枝明誠高校男子サッカー部とのトレーニングマッチ(30分×3本)は、全体を2セットに分けて約45分間ずつ、全員にチャンスが与えられた。最終的な結果は2-4で敗れたが、最初のセットは、2-1でリードして折り返した。

 その中で、攻守の中心になっていたのがボランチのMF林穂之香(C大阪堺)だ。ダブルボランチを組んだMF西川彩華(千葉)とのバランスも良く、攻撃ではサポートの動きや切り替えの速さが光った。こぼれ球をミドルレンジから振り抜いて決めた2点目は、真骨頂とも言えるプレーだった。

 一方、FW陣の中で異彩を放ったのが小林だ。

 3日目の最後に行われた紅白戦では、前半だけでハットトリックを決めた。翌日の藤枝明誠高との試合でもなでしこの1点目を決めている。限られたチャンスを生かせる高い決定力は大きな魅力だ。21歳の小林は、2年半以上にもなる長いリハビリ期間を経て今季、ベレーザでついにリーグデビューを飾ったが、パフォーマンスは上向きだ。

 以前は、周囲と連係しながらゴールに向かうプレーが多かったが、今季はサイドハーフで起用されることが多く、個で局面を打開するプレーにも磨きがかかった。

「数的不利の状況をドリブルで割っていったり、ディフェンスラインを突破してゴールまで行くプレーをチーム(ベレーザ)では求められているので。味方を使える場面でも、状況によっては自分でシュートを打っていけるようにアピールしていきたいですね」(小林)

 小林は、前線がほぼ全員代表選手というベレーザでプレーしていることもあり、連係の面でもアドバンテージがある。

 また、唯一、3部に当たるチャレンジリーグからの選出となった池尻も、インパクトを残した一人だ。紅白戦では小林と2トップを組み、1ゴール2アシスト。ボールを受ける際のアイデアが多彩で面白く、体の強さと左足の強烈なシュートも魅力だ。

左から林穂之香、池尻茉由、小林里歌子(筆者撮影)
左から林穂之香、池尻茉由、小林里歌子(筆者撮影)

 ゴール前のイメージは海外サッカーから学び、特に、同じ左利きのFWアリエン・ロッベンのプレーを参考にしているという。1部でプレーする選手たちの中でのトレーニングは、濃密な経験になったようだ。

「(チャレンジ)リーグでは余裕を持ってゴール前まで行けたんですが、今回(の合宿)は全然違いました。受ける時に相手との間合いを取れれば前を向けますが、もっとフリーで受けられるように努力しないといけない。プレースピードが早いし、ボールを持ちすぎたら寄せられるので、もっと判断を早くしたいです」(池尻)

 藤枝明誠高とのトレーニングマッチでは、うまくボールを引き出すことができず、悔しそうな表情を見せていたが、その高いポテンシャルを評価されての選出だったことは十分に頷ける。来年は、韓国女子プロリーグの水原WFCでプレーすることが決まっており、さらなる飛躍のチャンスはある。

「今回、選ばれたからには、さらに上を目指したいと思います。来シーズンは日本にいない分、よほど結果を残さないと見てもらえないと思う。しっかり結果を残したいと思います」(池尻)

 今回の合宿に参加した23名の選手たちにとって、A代表のレベルや戦い方をより具体的にイメージできるようになったことは、大きな収穫となったはずだ。

【残り20パーセントを埋めるのは?】

 来年のW杯に向けて、現時点で23人の枠がどのぐらい決まっているのか、という質問に対して、指揮官はこう答えている。

「今年はみんなが頑張ってくれて(アジア2冠を獲れた)。そのメンバーがベースで90%以上は決まったかな、と考えていたのですが、今回(の合宿は)非常に手応えがありましたし、競争するポジションも出てきそうなので、80%ぐらいに下がりました。今回のメンバーも(何人か)競争に入ってこられると思います」

 23名のメンバー入りを巡る競争はいよいよ最終段階を迎えようとしている。その意味でも、W杯までの6ヶ月間、候補者たちのプレーから目が離せない。

コメントに続く

ゲームに負けたチームが一発芸を披露して盛り上がる一幕も(筆者撮影)
ゲームに負けたチームが一発芸を披露して盛り上がる一幕も(筆者撮影)