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信念が生んだ逆転弾。INACに2014年以来の勝利を飾った浦和(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
約3年ぶりにINACに勝利した浦和(写真は左から白木、安藤、菅澤)(写真:松尾/アフロスポーツ)

7月8日(土)に行われたなでしこリーグカップ第7節、浦和レッズレディースとINAC神戸レオネッサの一戦は、浦和が1点差の攻防を制し、2014年のリーグ開幕戦以来、INACに約3年ぶりの勝利を飾った。

信念が生んだ逆転弾。INACに2014年以来の勝利を飾った浦和(1)

以下、試合後の監督・選手コメント。

【監督・選手コメント】

石原孝尚監督(浦和)

ーー試合を振り返って、感想をお願いします。

INACとはリーグ戦でも2回当たっていますし、カップ戦でも2回目の対戦で、今年はもう対戦できない可能性があるので、ここでしっかり勝っておこう、という話を選手にしました。立ち上がりから選手たちの動きは良かったですし、先に失点しながらも、冷静にゲームを進めてくれました。トレーニングでやってきたことを出せれば、十分に勝つチャンスはあると思っていました。菅澤が(同点ゴールを)良い時間帯に決めてくれましたね。後半の手を打つ上でもいいゴールでした。

ーー後半、白木(星)選手を投入した意図を教えてください。

白木は時間帯に関係なく、ボールを持った時に何かを起こせそうな選手なので、起用しました。期待した通り、強気なプレーを見せてくれました。

ーー守備で強さを発揮できた要因をどのように考えておられますか?

安藤梢が帰ってきて、球際でしっかり(プレッシャーをかけに)行こう、という話をしていましたが、今年、週の初めに取り組んでいる体幹トレーニングの成果と、フィットネスを上げる取り組みが徐々に形になってきているのかな、と。夏場のゲームでもテンションを下げずに最後までやれていたのは、成長したところだと思います。

ーー今シーズン、勝てなかったINACに勝ち切れたことは、何が要因だと考えていますか?

シーズンの最初は(自分たちが)思ったようにやってみよう、という形から入って、(徐々に)勝敗を左右するポイントを選手たちが意識しながら試合ができるようになってきて、ここ数試合は本当に失点が減っていました。勝負にこだわりながら、自分たちの良さを出していくという試合ができるようになってきました。

FW 塩越柚歩(浦和)

ーー試合を振り返って、いかがですか?

今日は、いつもよりも動けていました。自分の中でも、行けるな、という手応えを感じていて。暑さや、コンディションの部分は相手も同じだから、気持ちで勝とうと話していました。自分の中でも、INACに対して苦手意識があったので、今日の試合は自信になりました。

ーー2トップの近くでプレーする上で、意識したことはありますか?

安藤さんも(菅澤)優衣香さんも、前を向いてキープもできるし、合わせてくれるのでやりやすいです。その中で、距離を近くして関係を保って、2人がボールを後ろにそらせる時は、裏のスペースに思いっきり抜けることを意識していました。攻撃陣が頑張れば守備陣も楽になるので、前線から守備を頑張ろうと思っていました。

ーー今シーズンは、トップ下や攻撃的なポジションでプレーすることが多いですが、この試合では左サイド

ハーフでプレーして、いかがでしたか?

サイドハーフも元々やっていたので、好きなポジションなのですが、飛び出しや、長い距離を走って裏に抜けるプレーは得意としているので、自分の良さとして出せたかなと思います。ただ、今日もシュートチャンスがあったのですが、決めきれなくて、みんなから言われてしまいました(笑)。

ーープレーしながら、守備でボールを奪いきれている手応えもあったのでしょうか。

INACに今シーズン勝てていなかったこともあって、気持ちで負けないで行こう、と話していたことがプレーに出ていて、みんな戦えていました。1対1の局面で結構勝てていたのは大きかったと思います。

DF 北川ひかる(浦和)

ーー今シーズン初先発でした。試合を振り返って、いかがでしたか?

ケガが治ってから、サブで短い時間出場していましたが、やっぱり、90分間試合に出たいと思っていました。(リハビリをしていた)3ヶ月間は長かったけれど、しっかりと治せて良かったなと思います。自分が出た試合で絶対に負けたくないと思っていましたし、ミスもたくさんありましたが、自信を持ってプレーできました。

ーーリハビリの期間を乗り越えて、強くなったと感じることはどのようなことですか?

リハビリを終えて、自分のプレーを取り戻すという点では、自信がなくなった時期もありました。自信を取り戻すために、メンタル面で成長したと思います。

ーー後半、自陣で囲まれながら、ドリブルで積極的に縦に仕掛けた場面が印象的でした。

前の試合の後に、サポーターの方に、「長所として縦に行って欲しい」と言われました。自分も、その試合では自信がなくて行けなかったので、やっぱりチャレンジして行ってみようと思って仕掛けました。縦に行けたことは、自信につながりましたね。

ーーチームとしてはこれまでの試合からディフェンスラインのメンバーが変わった中で、連携はいかがでしたか?

スターティングメンバーでディフェンスラインが2枚、一気に代わるということで、(今シーズン初先発だった)自分と(センターバックの長嶋)ひかるさんも不安があったのですが、試合に出るからには、自信を持ってやろう、と2人で決めていたので、しっかりとプレーできて良かったです。今後もコンディションをしっかりあげて、チームに貢献したいです。

MF 猶本光(浦和)

ーー守備面で、球際で勝てていた手応えはありますか?

まだ相手に寄せられる部分とか、もっと厳しく行った方がいい部分はありました。ボールを奪い切るという意識をチームとして持てるようになったことは、プラスになっていると思います。

ーーアシストをした2点目を振り返っていかがですか?

あそこにパスを出すな、と思いましたし、相手がトラップしている間に寄せられる自信がありました。グラウンドがスリッピーだったこともあって、うまく意表をついて(ボールを)奪えたと思います。

ーーINACとは今シーズン4回目の対戦で、初勝利ですね。

今までは、内容が良かったけれどなかなか結果が出ずに、アディショナルタイムの失点で負けた試合もありました。カップ戦を進める上でも、かなり大きな勝利だと思いますし、INACに勝ったのは、優勝した2014年以来なので、嬉しいですね。強い相手にも勝てたというのは、今後への自信になると思います。

ーー最後に勝った2014年の試合と比べて、どのようなところが個人的に成長したと感じますか?

守備で、ボールを奪い切るところとか、奪った後に、前に運ぶというところは、成長している部分だと思います。

松田岳夫監督(INAC)

ーー試合の序盤は、どのようにご覧になりましたか?

前半は、チームとしてはゼロでした。まったく良さを出せませんでしたね。グラウンドもスリッピーで、ボールが速くなったために、止めることができず、そこにプレッシャーに来られて、一人剥(は)がせればチャンスだったのですが、逆にどんどんポジションが落ちてきて、相手のプレッシャーにそのまま、はまってしまった。そのような展開でした。

ーー後半、中盤を2人、交代しましたが、どのような意図があったのでしょうか。

個で打開できる選手、ボールを受けたら前を向ける選手を入れて、チームの攻撃を機能させるための交代でした。

ーー逆転された後半の試合の流れについて、改善しなければいけないのはどのような点だと考えておられますか?

もちろん、ミスはあってはいけないのですが、そこは修正できる部分です。それよりも、前半、まったくサッカーができていなかった。後半、(逆転されて)勝たなきゃ、という状況になってようやく火がついて、(自分たちの)プレーができるようになった。前半のゲームがうちの力だということを認めないと、先に進めないと思います。

個で流れを変える存在がいなかったのも事実だと思います。チームとして大人しく、いい子ちゃんばかりになってしまっていたな、と。自分たちで気付いて力を出せるようになってほしいと思いますけれど、これだけ言って気付かないということは、(力を)持っていないんじゃないでしょうか。でも、そう思わざるを得ないです。だったら、そういう選手は試合に出るべきではないし、力を出せる選手を大事にしたい。そういう話を全員に平等にしていますが、トレーニングで見せてくれるかどうか。トレーニングで見せてくれても試合で出せないのであれば、それは持っていないのと同じだと思います。

MF 中島依美(INAC)

ーー序盤、シュートまでいけなかった要因をどのように感じていますか?

今日はボランチで試合に出ましたが、個人的には、ポジションが下がりすぎだったかな、と思います。大野(忍)選手がバイタルエリアでキープしてタメを作ってくれている間に、横に行ったり、前方向でボールをもらって仕掛けるポジションを取れたら、もっと攻撃にも厚みが出たと思います。

ーー前線のバランスや距離感はどうでしたか?

(私は)結構、自由にやらせてもらっている中で、合わせるというよりも、周りに合わせてもらうことが多いのですが、(外と中で選手が)もっと出入りをしながらボールに関わって、自分たちのリズムを作れたら良かっ

たな、と。あとは、パスの精度をもっと意識していなかければいけないと思いますし、相手のプレッシャーを剥(は)がせるような工夫が足りなかったと思います。

ーー試合の流れが悪い時に、流れを変えるために何が必要だったのでしょうか。

2点目を決められてから時間はあったのですが、点を決められて、下を向いている選手が多かったですね。(私は)もっと、試合の空気を締めなければいけない立場ですし、プレーも物足りなかったと反省しています。

ーー今後に向けて改善しなければいけないのは、どのようなことだと思いますか?

自分のところで、2回、シュートを打てるチャンスがあったんですが、パスを選択したんです。そこで、パスの精度が悪かったな、と。あのパスの精度が良かったら、勝てていた試合だと思います。そういった、最後のところが雑になってしまうのはこの試合だけのことではないのですが、練習でもっと意識しなければいけないと思うので、もう一度、整理して取り組んでいきたいです。

DF 高瀬愛実(INAC/キャプテン)

ーー先制した後、ペースダウンしてしまったのは何が要因だったのでしょうか?

バイタルエリアまで行けても、シュートがなかったり、決定機を作れなかったりということで、カウンターをされる場面がありました。攻撃のツメの甘さが守備の負担になっていたと思います。攻撃を完結させられなかったのは悔しいですし、ディフェンダーなので、失点にも責任を感じています。

ーーディフェンスラインに浦和の菅澤選手がいるのは気になりましたか?

(浦和の)攻撃のターゲットになる選手で、そこにボールが集まるので、狙って奪おうと思っていましたね。ただ、ボールの処理をミスしてしまうと、そういう隙を確実についてくる選手なので、(1点目は)やってはいけないミスもあったし、ああいうシーンを作ってしまったチームのミスでもあったと思います。

ーー味方との連携で、オーバーラップした時に良い攻撃ができるようになった手応えはありますか?

練習でも、上がった場面で見てもらえるようになって、チャンスも増えてきましたね。ただ、最後に自分のトラップミスでボールが外に流れてシュートに行けないところは課題です。

MF 杉田妃和(INAC)

ーー試合を振り返って、特に前半、先制するまでの流れはどうでしたか?

ボールは動かせていたと思いますが、良くなかったですね。90分の中でピッチコンディションに早く慣れることも必要だったと思います。

ーー試合を通じて、どのようなことが課題だったと振り返りますか?

相手が結構、(INACの最終ラインの裏のスペースに)蹴ってきていたので、どこかでボールを落ち着かせたかったですね。タメを作って逆サイドを狙うプレーだったり、落ち着いたプレーを増やせなかったのは課題です。 個人的にも、自分のプレーを出し切れていなかったですし、課題がたくさん出てしまいました。いつもの試合ではもっと積極的に行ける場面が多かったのですが、今日はそういう場面が少なかったですし、ゴール前でボールを動かすというところでミスが増えてしまったことが、得点できなかった原因だと思います。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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