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ベルギーとの親善試合は1−1のドロー。なでしこジャパンが欧州遠征で得た収穫と明らかになった課題(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
ベルギーサポーターの声援がスタジアムに轟いた(C)松原渓

ベルギーに遠征中のなでしこジャパンは、6月13日(日本時間の14日)ベルギー女子代表との親善試合を行い、1-1で引き分けた。

ベルギーとの親善試合は1−1のドロー。なでしこジャパンが欧州遠征で得た収穫と明らかになった課題(1)

以下、試合後の監督・選手コメント。

【監督・選手コメント(ベルギー戦後)】

高倉麻子監督

ーー試合を振り返っていかがでしたか?

新しいチャレンジで、(3バックの)システムを試しましたけれど、攻撃のテンポが上がらなかったですね。(攻撃の)スイッチの入れどころやテンポを上げるところで、パススピードで変化をつけるのか、動きの緩急で変化をつけるのか、ドリブルを使って変化をつけていくのかというところでも、何も起きなかったなという印象です。

後半は相手がメンバーを変えて、テンポアップしてきた中で、自分たちもバランスが悪くなって、セカンドボールを拾えなくなってしまいました。相手がちょっと速い、とか、ちょっと強い、というところで、身体がブレるとか、パスが引っかかるとか、そういう場面が多かったです。こぼれ球も相手に拾われて、特に後半は自分たちのペースにできませんでした。

ーー3バックのシステムは、今後も継続するのでしょうか?

(3バックは)オプションとして考えています。1回うまくいかなかったからといって、止(や)めることはないですし、継続してトレーニングをしながら、両方(のシステムを)理解して、相手や状況によって使い分けられるようになればチームの成長につながると思います。ただ、最初からはうまくいかないな、と感じました。

ーー今日、ベルギー相手に引き分けという結果をどのように捉えますか?

満足していません。相手は(女子ユーロ)本番前のモチベーションが高い状態だったと思いますけれど、最初に(スタメンで)出てきたメンバーはフルメンバーではない感じがあったので。できれば前半のうちに2点、3点欲しかったのですが、崩せなくて、ただなんとなくボールを回してしまう感じになってしまいました。あそこで自分たちから崩すことができないと、後半は相手の圧力がかかってくるし、こういう展開になってしまうことは予想できました。クロスからの失点は弱点だなと思います。

ーー今回の遠征を通じて、一番大きな課題はどのようなことでしょうか?

選手はそれぞれ、良いものを持っているのですが、試合の状況によって(自分のプレーを)変えられることが大切です。まだ、自分のプレーができるかどうか、ということで精一杯だと思うので。まずはそれができなければいけないのですが、それすらも、今日は出せなかったな、と。特に、前目の選手に関しては(良さを)引き出せていなかったと思います。

ーーオランダ戦とベルギー戦を通じて、どのような収穫がありましたか?

最初のオランダ戦に勝って、その後のトレーニングでも、選手は非常に前向きに取り組んでくれましたし、自覚という意味でも、変化が見られました。今日の試合は、また一つ経験を積みながら上に行けるかなと思ったのですが、そう簡単にはいかなかったです。一歩進むとまた一歩戻って、進んで、戻って、という感じですね。ただ、ダラーっとしたままゲームが流れて、結局、引き分けに持ち込まれてしまった、というゲームを経験して、今後はそういうゲームにしないようにしよう、という思いを全員が共有できたことは収穫だと思います。

ーーそれぞれのチームに戻る選手、また、今回選ばれていない選手たちに、どのようなことを求めたいですか?

すべての面で、プレーの質を上げてほしいですね。プレーの強度を上げながら質も上げることに、より自覚を持って取り組んでもらいたいです。

DF 熊谷紗希

ーー試合を振り返って、いかがでしたか?

悔しいです。自分たちが3バックに挑戦する中で、前半の流れでスコアにできなかったのが痛かったですね。後半は自分たちのボールの失い方が悪く、良い時間帯を作れなかったことがこの結果だと思います。

ーー3バックをやってみて、良かった部分と、課題はどのようなことですか?

前半、自分たちがボールを持っている時にあれだけフリーな選手を作れて、ボールを持てたことは、3バックのメリットを活かせていたと思います。そこをもっと突き詰めて、細かい、簡単なミスをなくすことで、もっとスコアにつなげられるシステムだと思います。ただ、3バックで、リスクを背負って前に出ているので、横の連携や、中盤とディフェンスラインの連携はもっと突き詰めていかなければいけないな、と思います。

ーーチームとして、この遠征を通じてどのような収穫がありましたか?

紅白戦の雰囲気も良いですし、チームとして、(代表活動の)回を重ねるごとに、お互いがお互いを活かす方法や、意思疎通を深めることができています。初戦(のオランダ戦)は、自分たちの良い形でゲームを運べたところもありました。そういう意味では、成長していると思います。今日の試合では結果を出せなかったのですが、前に進むしかないので。それぞれが、自分のチームで何ができるかが大事だと思いますし、次は、もう一つ上のレベルで集まりたいです。

ーー攻撃面の課題を教えていただけますか?

足を振る回数が少なかったですし、アイデアはもう少し共有しなければいけないと思います。自分たちが一番やられているのはサイド攻撃ですが、相手もサイド攻撃は守りづらいと思うので。もう少し、自分たちがサイドをえぐって、崩す回数を増やしていきたいです。

ーー守備面はいかがですか?

センターバックなので、一つ目のヘディングも負けているところがありましたし、一つひとつの戦いで負けると失点に繋がるということは、分かりきっていることですけれど、実感しました。最終的には自分の判断で行ったことですが、チャレンジする中で、3バックの穴というのが少し出てしまったかなと思います。

MF 阪口夢穂

ーー試合を振り返って、いかがですか?

前半は、ボールを動かせていても、どこで勝負パスを入れるかということが見出せずに、ただ、ボールが回っているような感覚でした。みんなも良い位置に立っていましたけど、パスを回すテンポがずっと同じだったんです。ダイレクトで縦パスが入ったら、スイッチを入れられるシーンもあったのかな、と。後半はボールの獲られ方が悪くて、攻め残っている(ベルギーの)選手にうまく前を向かれてカウンターを受けるシーンが多く、自分たちの悪いところが出てしまいました。前半のうちにゴールを獲れていたら、また違った展開になったと思います。

ーー今日の試合では、どのような課題が出ましたか?

ベルギーも良い選手が多かったのですが、勝たなければいけない試合だったと思います。結果は引き分けですが、善戦した結果の引き分けではないから、気持ち的には負けたような感じです。今日の試合では特に前半、ボールは回っていたし、一見、日本のパス回しができているように見えたかもしれませんが、ただ回しているだけになっていたので、もう一工夫、ふた工夫必要だと感じました。

ーー相手が、日本のパス回しに慣れてきた部分もあったのでしょうか?

それもあったかもしれないですね。後半は一人ひとりがボールを持つ時間が長くなって、やられてしまう場面も多かったので、相手も慣れてきたのかな、と感じました。

ーー3バックでプレーすることについては、攻撃面でどのような変化を感じますか?

(前線の人数が増える分、)中盤でフリーで受けられることが多く、プレーしていて楽しいのですが、今日の試合では後半、守備的になって、アンカーのようなポジションになってしまいました。そうすることを求められていたわけではないのですが、若い選手たちが入ってきて、攻撃にいっていた分、自分は後ろをケアしておかなければいけないと思って、そうしていました。

MF 長谷川唯

ーー3バックのシステムをやってみていかがでしたか?

紅白戦では、相手も日本の選手なので、特徴が分かっている中でやっているとやりづらい部分があったのですが、今日、ベルギーとやってみて、思ったよりうまくいったと感じました。紅白戦の時よりは良いところでボールを受けられたり、チャンスに絡むことができました。

ーー4バックの時よりも前に行ける部分はありましたか?

ボールを受けて前を向くのが好きなので、間で良いパスを引き出したり、味方が出しやすい良い位置に動くことを常に意識しています。今日は3トップのトップ下の位置をやらせていただいたのですが、ビデオでバルセロナの3−4−3を見て参考にした際に、バルセロナは前の3人が自分の立ち位置からそれほど大きく動くことがなくて、少しずれてボールを受けるシーンが多かったんです。特に前半はそれを意識してプレーしたら、前で絡める場面が増えました。(阪口)夢穂さんや(中里)優さんは(日テレ・)ベレーザで一緒にプレーしていることもあり、縦パスを結構、受けられたかなと思います。

ーーこの試合を通じて、手応えと悔しさ、どちらが大きいですか?

悔しかった部分が大きいですね。今日も勝ちに行った試合だったので、先制点を獲れた中で、失点はゼロでいかなければいけなかったと思います。3バックという新しい形の中で、幾つか良い形も作れたことは収穫だと思います。これから、いろいろな試合で、3バックもうまく使えていけたら武器になると思うので、そういう意味では良いチャレンジができたと思います。

ーー今後、リーグの中でどのようなことに気をつけてプレーしていきたいですか?

いつもは左サイドをやっているので今日のポジションとは少し違いますが、仕掛けるところや、シュートまでの強さをもっと身につけなければいけないと思っています。日本に戻って、リーグ戦やカップ戦では強引に仕掛けてシュートまで行くプレーを意識してやっていきたいです。

ーー来月には、なでしこジャパンでアメリカとの対戦も控えていますが、いかがですか?

まずは、選ばれるためにリーグで良いプレーをし続けることが大切だと思っています。相手が大きかったり、フィジカル的に(自分が)劣ることが多いのですが、それでも負けない強さは、すぐには身につかないと思うので。筋トレなどで積み上げていって、強さを身につけながら、相手の逆を取るプレーも磨いていきたいです。

ーーA代表の間合いや感覚でプレーできる自信は身についてきましたか?

そうですね。U-20の時とはうまさは違うのですが、スピード感はあまり変わらないイメージがあって、そういう意味ではアルガルベの時から、良い手応えを得ています。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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