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ノート(210) 陸山会事件の証人尋問に向けた指定弁護士との打ち合わせ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~続・工場編(3)

受刑227/384日目

合理的なセルフトーク

 この日は第2金曜で教育的指導日であり、作業がなかったことから、朝から録音教材やVTR教材が放送されたほか、「合理的なセルフトーク」というテーマによる問題形式の課題も出された。再犯防止のためのプログラムの一つで、認知行動療法に基づく。

 「セルフトーク」とは、自分自身に対して言葉をかける「独り言」のことで、声に出すよりも心のなかで語りかけることのほうが多い。人は思うようにいかなかったとき、つい無意識に「やばい」「まずい」「だめだ」といったネガティブな言葉をつぶやく。これがその後の感情や思考、行動にも影響を与える。

 そこで、こうした独り言の内容を意識し、マイナス思考を中断し、「でも、できる」「でも、いける」「でも、大丈夫」といったプラス方向の「セルフトーク」に変えていくことが重要だという。これによって「認知の歪み」が解消され、ストレスを溜め込まず、不安なく自信にみちた生き方ができるとのことだった。

 確かに、マウンドで観客の注目を一身に集めるプロ野球のピッチャーなど、プロスポーツの世界では、試合中に何かブツブツとつぶやいている選手の姿をよくみる。望ましい「セルフトーク」により、集中力を高め、パフォーマンスの向上を図ろうとしているのだろう。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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