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ノート(174) 図書工の作業難易度と官本チェックのポイント

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~工場編(2)

受刑57/384日目

情報の宝庫

 この日の朝から、同じ図書計算工場の者と5舎3階から2階、1階と経由して途中で6舎の者と合流し、プレハブ建ての工場へと向かった。全員で「イチ!ニ!サン!シ!」「イチニサンシ」「イチニサンシ」と声を出しつつ、左右の手足の動きを一致させた一糸乱れぬ集団行進であり、壮観な光景だった。

 図書計算工場には、各受刑者に関する様々な情報が集まってくる。例えば、新たにどの刑務所からどのような受刑者が入ってきたかとか、逆に誰がどの刑務所に移送されるのかといった点だ。

 仮釈放の前には、該当者が集団で寮生活をして社会復帰に向けた特別な教育を受けることになっているので、どの工場の誰がいつ仮釈放で社会復帰する予定なのかということも分かる。満期釈放の場合でも、1週間前には工場を卒業し、独房で釈放前教育が行われるので、やはり誰がいつ満期で出るのかという情報を事前に知ることができる。

 特に全ての受刑者ごとに作業報奨金を計算し、記録している計算工のところには、より詳細な情報が入ってくる。計算工はその分だけ図書工よりも忙しい。一般企業の総務や経理部門と同じく、月末や四半期末には作業が多く、時間内には終わらないため、その時期には残業もある。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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