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自作の偽「フェンダー」ギターをネットで販売…分かって買った人は処罰される?

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロイメージマート)

 自作のギターやベースに人気ブランド「フェンダー」のロゴを付け、インターネットで販売した男(44)が書類送検された。趣味が高じて中古パーツで製作したもので、価格は本物の10分の1以下だったという。

売ったらアウト

 男は「フェンダー」社の日本法人から3度にわたって警告を受けていたにもかかわらず、そのたびにアカウントを変え、フリマアプリを介して30本ほど販売していた。

 ブランドの偽物をそうだと分かったうえで売れば商標法違反となり、最高で懲役10年、罰金1000万円に処される。

 たとえ落札されていなくても、ネットオークションに出品するなど、販売の目的で所持するだけでも商標権の侵害行為とみなされ、最高で懲役5年、罰金500万円だ。

詐欺罪も

 また、偽物を本物だと偽って販売したら、さらに刑法の詐欺罪でも処罰される。こちらは懲役10年以下だが、罰金刑がないから、商標法違反よりも罪が重い。

 つい最近も、高級化粧品ブランド「SK-II」の空き瓶を入手したうえで100円均一ショップで買った化粧水を入れ、新品未使用の本物だと偽り、フリマアプリを介して定価の半額で販売していた少年(18)が商標法違反と詐欺罪で書類送検されている。

 偽「フェンダー」事件の場合、商標法違反だけで立件されているが、自作のコピー商品だと告げているとか、ヴィンテージ品の本物であれば到底ありえない価格の安さなどから、購入者も偽物だと気づいていたというのが実態だろう。

買うだけだったら?

 もっとも、偽物と分かっていたか否かを問わず、購入者には商標法違反は成立しない。

 他人に譲り渡すのではなく、単に自分で使用するためだけであれば、その譲り受けや所持は商標権の侵害にあたらないからだ。

 では、海外のオークションサイトで落札し、輸入する場合はどうか。

 偽ブランド品の輸入は関税法違反に問われ、最高で懲役10年、罰金1000万円に処されるが、やはり自分で使うためだけであれば、商標権の侵害にはあたらず、セーフだ。

 ただ、税関は厳しく、バレたら輸入を差し止められ、没収される事態になるかもしれない。

 そもそも、偽物を買うことは販売者による違法行為を助長するに等しいし、手もとにあれば転売などによって罪に問われるリスクもでてくる。

 偽ブランド品はトラブルの温床にほかならず、安いからと安易に手を出すのは絶対にやめておくべきだ。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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