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ノート(97) 厚労省事件の捜査や起訴は結論ありきの強引なものだったのか、という問題について

前田恒彦元特捜部主任検事
(ペイレスイメージズ/アフロ)

~整理編(7)

勾留42日目(続)

結論ありきか

 この日の最高検による検証活動の中心は、厚労省虚偽証明書事件の捜査や起訴が結論ありきの強引なものだったのではないか、という点だった。

 厚労省関係者らが法廷で次々と捜査段階の供述を翻し、元担当課長に対して無罪判決が下されていたことに加え、そのころ以降、エセ障害者団体の関係者らも週刊誌の取材に応じ、検察の捜査を批判していたからだった。

 ポイントは、次のようなものだった。

(1) 元担当係長の取調べ官は、元担当係長が単独犯であると供述しても全く耳を傾けず、その旨の供述調書すら作成しようとしなかったのではないか。

(2) 元担当課長については、その弁解を聞く前から既に起訴を決めており、取調べ官も逮捕直後の段階で元担当課長にそう告げていたのではないか。

(3) 元担当課長の部下で元担当係長の上司である元担当室長が3度にわたる取調べで事件への関与を否認したにもかかわらず、全く供述調書を作成しようとしなかったのではないか。

(4) 取調べ官は、「検察ストーリー」に沿った供述調書を作成するため、関係者らに偽計や脅迫を用い、強圧的な取調べを行ったのではないか。

慎重を期す

 1つずつ振り返ってみたい。まず(1)は、事件の実行犯でキーマンの一人である元担当係長に対し、取調べ官が供述内容を押しつけていたのではないか、という話だ。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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