表に出ていないだけで、性犯罪の捜査や訴追を行う検察でも、セクシャル・ハラスメントが横行し、あまり問題視されず、甘い対応に終始してきた歴史がある。

 特に幹部や先輩による部下、後輩に対するセクハラは、同時にパワー・ハラスメントとも結びついているから、非常にタチが悪かった。

 髪型や服装に口出しして変えさせたり、異性関係を詮索したり、宴席で男性幹部の横に若手の女性職員を座らせたり、酌をさせたり、卑猥な言葉を吐いたり、手や身体をベタベタ触ったり、果ては酔って抱きついたり、といったものだ。

 職務上の地位を利用し、男性職員が期の離れた独身の女性職員と不倫関係に至る例も散見された。

 幹部や特捜部員の男女比などが示しているとおり、女性職員は同じ能力の男性職員と比べて人事上も明らかに冷遇されてきた。

 わいせつ系のイロモノ事件は女性検事に配点せよとか、日の目をみない少年係など女性検事にやらせればよいなどと、前時代的な考えに凝り固まった幹部も多くいた。

 特捜部に限っても、ある大型事件の強制捜査を終えた後、検察御用達のスナックで打上げが行われた際には、酔って高揚した男性幹部がその場にいた男性検事らに次々と抱きつき、ディープキスをした。

 続いて女性検事にも抱きついた上、キスまで迫ろうとしたため、女性検事らが狭い店内を逃げ回り、カウンターを乗り越えて店の内側に飛び込まざるを得ないほどだった。

 こうなると単なるセクハラではなく、強制わいせつ事件にほかならないが、最終的にはウヤムヤにされた。

 検察自体がこうした行為に寛容な社風ということもあったが、「俺はまだまだこの組織にいるし、これから先もずっとお前らの前を歩く。俺に付くか付かないか、よく覚悟して決めろ」などと人事権を振りかざして部下に脅しをかけるような幹部でもあったからだ。

 ホテルの宴会場で行われた特捜部における別の宴席の機会にも、酔った事務方の男性幹部が女性職員の身体を触った。

 女性職員はショックのあまり、トイレの個室に立てこもり、宴席が終わっても出てこようとしなかった。

 それでも、翌日になって男性幹部が謝罪し、その上司から男性幹部に対して口頭で注意が行われただけで終わった。

 検察にも、他の職員の目に触れない場所に設置された目安箱の制度があったし、セクハラの相談員も置かれていた。

 幹部研修など様々な機会に注意喚起がなされ、職員を囲む幹部主催の会合などで現場の生の声を吸い上げようという努力もされていた。

 それでも、男女を問わず告発には相当の勇気が必要だった。

 組織内で「トラブルメーカー」と見られたり、セクハラを当事者間の個人的な問題として片づけられたりしてきたからだ。

 職員の意見を吟味する幹部自身が現にセクハラやパワハラに及んでいる者であるなど、防止策が十分に機能しているとは言いがたい状況もあった。

 その後、社会がセクハラに対して厳しい見方をするようになったことや、幹部や職員らの意識改革などもあり、かなり改善が進んだ。

 にもかかわらず、いまだセクハラは根絶されていないと聞く。

 例えば、2004年からの10年間、免職や停職、減給、戒告といった懲戒処分や訓告処分が下された悪質なセクハラ事案に限っても、12件に上る。

 そのうちの1件は、静岡地検のトップとして職員全体を指揮監督する立場にあった検事正が、2014年に部下の女性職員の身体に触れる行為をしたというものだった。

 これに懲りず、最近でも、2017年10月に福岡高検が開催した宴席で、酔った刑事部長が部下である女性職員の嫌がる性的発言を繰り返し、問題視された。

 この件も先ほどの検事正の件も、懲戒処分は減給にとどまるもので、2人とも退職手当を得て依願退職して終わっている。

 甘い対応と言わざるを得ない。

 どこの組織でもある話かもしれないが、だからといって検察の中にあってもよいということにはならない。

 法曹三者の中で最も労働環境が厳しいと思われる検察の道をあえて選んだ女性職員が、様々な無念の思いを抱えたままで離職せざるを得ないという現実を放置しておいてよいはずがない。

 リクルーティングや法務省のホームページなどでは女性も極めて働きやすい職場であるかのように喧伝されているが、まだまだ綺麗事だろう。

 本当の意味でそうした組織に変えていかなければならず、それこそセクハラなど論外だ。(了)