バイトテロの背景にある「労働問題」 ブラックバイト、過労状態が蔓延

(ペイレスイメージズ/アフロ)

 近年、飲食店やコンビニエンスストアのアルバイト店員がTwitterなどのSNSに不適切な動画を投稿し、炎上するというケースが増え、注目を集めている。

 飲食店の「大戸屋」では、アルバイト店員が下半身をトレーで隠してふざけている動画を投稿し、炎上した。そのほかにも「くら寿司」、「バーミヤン」、「セブンイレブン」などで同じような問題が相次ぐ事態となっている。

 これらアルバイトによる「悪ふざけ」はSNSを介して拡散され、企業イメージに甚大な影響を及ぼすことから「バイトテロ」と称されている。

 アルバイト店員に対する損害賠償請求などの「制裁」や研修の強化などの対応策が議論されており、大戸屋では一斉休業による研修まで行われた。

 もちろん、制裁や研修の強化は、「バイトテロ」を減らす効果をもつ可能性がある。

 しかし一方で、「バイトテロ」が引き起こされるより「本質的な背景」にも注目しなければならない。

 それは、「ブラックバイト」という「バイトテロ」とは表裏の関係にある「労働問題」の視点である。

 「ブラックバイト」とは、バイト依存に依存した経営戦略が引き起こした労働問題である。この問題の構造を見ることで、「バイトテロ」問題が生じる根幹に迫っていきたい。

表裏の関係にある「ブラックバイト」

 そもそも、「バイトテロ」と呼ばれる問題の多くは、学生の「悪ふざけ」の延長線上で生じてきている問題である。そして、飲食・コンビニといった業界では、先ほど述べたように、学生に「依存」する体制が構築されている。

 たとえば、24時間営業や深夜営業をしていると、すべての時間に正社員を配置することは困難になる。その結果、アルバイトだけに任せざるを得ない時間が非常に長くなってしまう。

 とくに、主婦パートや「フリーター」は、自身の生活があるため、深夜や早朝などの時間帯には入りたがらない。

 そのため、学生だけで夜の時間帯を営業するというのは、決して珍しいケースではない。いっとき話題になった「ワンオペ」は、アルバイトが一人で職場を回さなければならないという状況を示す典型的なケースである。

 学生依存の深刻さを理解するために、具体的な労働相談の事例を見てみよう。

 シフトが「学生アルバイト任せ」になっているケースだ。

 飲食店でアルバイトをする大学生からの相談。アルバイト4人で、「朝担当」と「夜担当」を分担している。時間に融通のきく大学生2名が夜担当、主婦とフリーターが朝担当となっている。家族や他のアルバイトとの兼ね合いから、朝担当の2名がシフトに入れないことが多く、学生が分担して朝と夜に入ることも多い。その場合は「ワンオペ」となる。また、学生2名の都合が悪く夜担当に入れない場合でも、主婦やフリーターは入ることができず、学生だけで対応することを求められ困っている。

 マネージャーに訴えても「俺が入るしかないじゃん」と嫌味っぽく言われてしまう。人数不足が原因ということもわかっているので、「バイトの募集をしてほしい」と願い出ても、「広告を出すお金が無い」と言われるばかりで対応してもらないという。

 

 この事例からは、店舗の運営が、学生がシフトに入ることなしになりたたず、しかも、社員の担当者がいない時間に「融通をきかせて」学生たちがはいっていることがわかる。

 それだけ「学生任せ」の構図だということだ。また、このような「学生任せ」の構図は、業務の責任のレベルにも及んでいる。

 学生アルバイトだけで店舗を任される結果、店舗を運営する責任は、学生に重くのしかかってくることになるのだ。

 レジ締め作業による金銭の管理、クレーム対応、商品の発注、鍵を渡され店舗の開け閉めをするなど、責任のある仕事がどんどんと増えていく。

 とくにコンビニでは「消費者の便利さ」と引き換えに「アルバイトの過酷」がもたらされている。コンビニは業務の幅が広く覚える仕事が多い。

 レジ打ち、商品陳列、レジのお金の集計、検品、宅配便の配送、コンビニでの荷物の受け渡し、肉まんやおでん、唐揚げなどの準備と多岐にわたる。客層も広く、接客の対応力も求められるだろう。クレーム対応もアルバイトに任されることが多い。

 このように重い責任を負わされているにもかかわらず、企業側は学生アルバイトに対して賃金や研修などに十分なコストをかけていない(そもそも、人件費コストを削減するためのアルバイトなので当然の帰結なのだが)。

 飲食店やコンビニでアルバイトをする学生の多くは、最低賃金程度の時給しか支払われていないことが多いだろう。また、「仕事を教えてもらえない」といった相談がPOSSEにはよく寄せられるが、研修を十分に行えるだけの体制が整っていない店舗も少なくない。

 たとえば、飲食店でアルバイトをはじめた大学1年生からの相談事例では、「人手不足のためなのか、教育係がつかないため、接客の仕事を教えてもらえません」というものが多い。

 この事例では、仕事ができずに困っていても、「突っ立ってなにもできないのはお客様に失礼だ」と叱責され、仕事を教えて欲しいと訴えても、「今の忙しい時期に入ってこられても接客教育なんてできない」と言われ対応してもらえなかったという。

 最低賃金程度の時給であるにも関わらず、商品を買い取らされる「自腹購入」に関する相談も後を絶たない。

 飲食店でアルバイトをする高校生は、「朝の仕込みで失敗し、商品の半額およそ900円を支払わされてしまった」という。

 またコンビニアルバイトからは、「品出しの際、外にあるチョコレートが溶けていて、全部買い取らされた」、「いちごのドーナッツ、コーヒーのカップなどの商品を落としてしまったときに買い取らされた」などの相談が寄せられている。

 このように、アルバイトの多くは数少ない人数で職場を任されており責任が重いにもかかわらず、最低レベル(ときに違法レベル)の扱いを受けているのである。

ブラックバイトの延長線上に起きてくる「バイトテロ」

 企業側は24時間営業や深夜営業を可能にするために、学生アルバイトを積極的に活用し、こうした構図に組み込んでいる。

 学生たちは企業の経営戦略に巻き込まれ、ときに学業や就職活動が満足に行えない状態まで追い込まれてしまうのだ。これがブラックバイトの構図であり、近年頻発する「バイトテロ」の背景にも同様の問題があると考えられる。

 つまり、比較的時間の融通がきく学生アルバイトを都合の良い「戦力」として職場に組み込み責任を負わせる。

 にもかかわらず十分なコストはかけていない。低賃金・不十分な教育・自腹購入などによって「コスト削減」を図る。

 この構図と「バイトテロ」問題は無関係ではないだろう。

管理側のオーナーや正社員の過労

 もう一つ、見過ごせない問題がある。それは、アルバイトを管理する側のオーナーや店長の過労状態である。少ない人員で長時間営業を強いられるために、自分たちも必死で、なかなかアルバイトの教育に手が回っていないのだと思われる。

 24時間営業が問題になっているコンビニでは、人手不足のために店長が過労状態に陥っている。24時間営業が限界だとして、営業時間を短縮したフランチャイズ加盟店舗がセブンイレブン本部に契約違反として訴えられたことは記憶に新しい。

 24時間営業を支えるためには、まずオーナーや正社員である店長が過重な負担を強いられる。そして、この矛盾がアルバイトにも波及し、ブラックバイト問題を引き起こすことになる。

 <オーナー、正社員vsアルバイト>ではなく、<24時間営業を強いる本部vsオーナー、正社員、アルバイト>といった構図があることを理解する必要があるだろう。

 また、飲食店の社員の過重労働も深刻だ。「平成28年度過労死等に関する実態把握のための労働・社会面調査」によれば、飲食産業・店長(正社員)の「1週間当たりの実労働時間(繁忙期)」は、「40時間以上60時間未満」が28.5%で最も多く、次いで「60時間以上80時間未満」が19.2%となっている。

 繁忙期には過労死ライン(月80時間以上)を超えて働く店長が半数近くいるという衝撃的な事実が明らかになっている。

 こうした事実から、正社員がアルバイトを十分に教育・管理することができない労働環境が広がっていることが容易に推測される。

 自分の仕事をすることに精一杯で、とてもアルバイトの管理まで手が回らないというのが実情だろう。「バイトテロ」問題の背景には、コンビニや飲食店における正社員の異常な負担があることも見逃してはいけない。

「バイトテロ」をなくすために必要な対策は?

 以上みてきたように、学生依存と正社員の過労状態という構図が、「バイトテロ」問題の背景にある。

 学生アルバイトに対する「制裁」や「研修」を強化するという対応だけでは、この構図そのものをなくすことはできない。

 では、こうした状況を変えていくためにはどのような対策が必要なのだろうか。

 第一に、正社員の過労状態を改善していくために、正社員の人員を拡充することが求められる。

 人件費コスト削減のために少ない正社員とアルバイトに依存した体制で年中無休の店舗運営をしようとすれば、まともな管理体制を構築することは難しい。

 そうなれば、「バイトテロ」にまで問題が発展しなくとも、提供するサービスの質それ自体が悪化してしまう可能性もあるだろう。

 第二には、アルバイトの待遇改善を通じた人手不足の解消である。みてきたように、現在のアルバイトは責任が重いにもかかわらず、賃金などの処遇は最低レベルである。

 これを改善しなければ、人手不足が加速して正社員に負荷がかかる。そして、正社員の負荷が重くなればなるほど、管理体制が脆弱になる。

 第三に、コンビニなどでは「ドミナント戦略」といって、あえて近くのエリアに多店舗を出店するという出店競争を行なっている。

 店舗間の競争も上記の構図に拍車をかけていると考えられるため、店舗数を減らすなどしてこうした戦略を見直す必要があるだろう。

 そしてこれらに加え、支配的な本部=フランチャイズ構造にもメスを入れなければならないだろう。「24時間営業」や「年中無休」を強いる業界のあり方自体を変えていくことが求められる。

 さらに、わたしたち消費者はこうした過酷な労働のうえに現在のサービスが成り立っていることに理解を示すことが必要だろう。

 サービスを利用する際に「労働問題」という視点を持つこと。そして、労働者を使い潰して「便利さ」を追求する社会に「NO」を突きつけていくことで、より働きやすい社会の実現を後押ししていかなければならない。

おわりに

 最後に、人員の増加を企業に促すためには、コンビニや飲食店で過重な労働を強いられている正社員が「声」をあげていくことも重要だ。

 職場の「限界」に気づいているのは、正社員の人たちだろう。人員の配置や営業の方法について、経営側と交渉し、改善を目指していくことも必要だろう。

 正社員の過重な労働の改善を求めていくことは、よりクオリティの高いサービスを提供することにもつながる。

 問題を抱えている職場の型には、労使交渉するために、労働組合の結成や加入をぜひ検討してほしい。

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