アップル、EVで日産など日本の自動車大手と協議か 韓国・現代自との交渉決裂も選択肢は多数
米アップルが進めているとされる電気自動車(EV)生産計画に関し、同社と韓国・現代自動車の系列自動車メーカー韓国・起亜の交渉が決裂したと取り沙汰されている。
これについて、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「アップルのプロジェクトが失敗に終わることはないだろう」と報じた。
アップルにとって委託先の候補はいくつもあり、パートナー企業を見つけられないことが理由で、計画が頓挫することはないという。
日産CEO「豊富な知識と優れた経験を持つ企業と協業」
米CNBCは2021年2月3日、アップルが起亜に生産委託する交渉がまとまりつつあると報じた。
また、WSJ紙は同2月5日、起亜がアップルブランドのEV生産に関して提携企業を探していると報じた。起亜が米ジョージア州に持つ完成車工場でアップルのEVを24年にも生産し、初年で最大10万台を計画していると関係者は話した。
ところが、現代自は同2月8日、これらの報道を否定するコメントを出した。CNBCによると、現代自と起亜は、規制当局に提出した文書で、「自動運転EVの共同開発について複数の企業から協力要請を受けているものの、まだ初期段階であり、何も決まっていない」と説明。そのうえで、「アップルと自動運転車開発の協議をしていない」と否定した。
WSJ紙はこれについて、「現代自との交渉は決裂したもようだが、アップルは1社に依存することはない」と報じている。
WSJ紙は、日本経済新聞の記事を引用し、「アップルは日本の自動車メーカー数社とも協議している」と伝えた。
また、日産自動車の内田誠CEO(最高経営責任者)が決算発表の記者会見でアップルとの提携に関する質問に対し、「新たな活動は必須。豊富な知識と優れた経験を持つ企業と、パートナーシップやコラボレーションを通して仕事をする」と述べたとも報じた。
WSJ紙は「自動車大手がこうして、アップルに売り込みをかけている状況は、観察に値する」とも伝えている。かつて自動車メーカーは米シリコンバレーのテクノロジー企業との協業に後ろ向きで、まして、委託製造業者になろうなどとは考えもしなかったという。
アマゾンなど出資の米自動運転企業、トヨタやデンソーと提携
WSJ紙が指摘するように最近は状況が大きく変わってきたようだ。例えば、米アマゾン・ドット・コムなどが出資する自動運転スタートアップ企業、米オーロラ・イノベーションは21年2月9日、トヨタ自動車やデンソーと提携したと明らかにした。
トヨタのミニバン「シエナ」を改造し、オーロラの自動運転システムを搭載した試作車を作り、21年末までに米国内で公道走行試験を開始するという。将来は配車サービス用の自動運転車を量産する計画だ。
オーロラの創業は17年。カリフォルニア州パロアルトに本社を置く。自動運転技術を開発する米グーグルのグループ企業「ウェイモ」の前身プロジェクトの立ち上げに携わった人物がCEOを務めている。
オーロラは20年12月、米ウーバーテクノロジーズの自動運転事業「ATG(アドバンスト・テクノロジーズ・グループ)」を買収すると明らかにした。
ロイターによると、トヨタとデンソーはソフトバンクグループとともにATGに出資しており、ATGと自動運転開発で協業していた。ATGのオーロラへの移管に伴い、トヨタなどとの協業をオーロラが引き継ぐという。
一方、トヨタは、中国ネット検索大手の百度(バイドゥ)が17年に立ち上げた自動運転技術の開発連合「Apollo(アポロ)計画」に、中国民営自動車大手の浙江吉利控股集団や独フォルクスワーゲン(VW)、米フォード・モーターなどとともに参画している。
フォードがグーグルと6年間の契約
フォードは21年2月1日、クラウドサービスや車載インフォテインメントの分野でグーグルと6年間の契約を結んだと発表した。
グーグルのクラウドサービスを活用し、製品開発や製造・サプライチェーン管理の近代化を図るもので、グーグルのAI(人工知能)を製造現場の社員教育や工場設備の性能向上に生かすとしている。
23年から「フォード」と「リンカーン」ブランドの全車種にグーグルのオペレーティングシステム(OS)「Android」やAIアシスタント「Google Assistant」、地図サービス「Google Maps」、アプリ配信サービス「Google Play」を搭載する計画だ。
- (このコラムは「JBpress」2021年2月11日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)