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EV大手のテスラが世界展開を加速 株価上昇で時価総額が自動車メーカーで世界1位

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
テスラのイーロン・マスクCEO(写真:ロイター/アフロ)

米電気自動車(EV)大手のテスラは先ごろ、中国工場で生産した小型SUV(多目的スポーツ車)「モデルY」の納車を開始した。モデルYは中国生産のテスラ車として、主力の小型セダン「モデル3」に次ぎ2車種目となる。

中国EV販売で12.5%のシェア

テスラが中国・上海で工場の建設に着工したのは2019年1月。同工場で生産したモデル3の一般向け納車を始めたのは20年1月だった。その後、モデル3の生産能力を増強するとともに、モデルYの生産ラインを構築した。

テスラは20年に中国でモデル3を13万8000台超販売した。中国乗用車市場信息聯席会(CPCA)によると、同国で20年に販売されたEVは111万台。テスラは約12.5%を占めた。

今後はモデルYも加わり、中国市場は22年までにテスラ車世界販売台数の4割超を占めるまでになると、米証券会社ウェドブッシュのアナリストは予測している。

中国事業を拡大、年間生産50万台目指す

上海工場はテスラが米国外に初めて設けた「ギガファクトリー」だ。20年10月には同工場で生産したモデル3をドイツやフランス、イタリア、スイスなど欧州10カ国以上に輸出すると明らかにした。

その年間生産台数は20年10月末時点で25万台。ただ、同社は最終的に同工場で年間50万台を生産する計画だ。

テスラの中国事業を巡っては、EV用充電器の生産を始めるとも伝えられている。ロイターによると、中国向け充電器は現在、米国から輸入している。

今後は上海のギガファクトリー近くに640万ドル(約7億円)を投じ、年間生産能力1万台の充電器工場を建設する計画。21年2月の完成を見込んでいるという。

ドイツにギガファクトリー建設、インド進出も視野

テスラは現在、テキサス州オースティンに、カリフォルニア州フリーモントに次ぐ米国内で2つ目のギガファクトリーを建設中だ。さらにドイツ・ベルリンでも米国、中国の拠点に次ぐ4番目のギガファクトリーを建設しており、21年7月の稼働を目指している。

先ごろは、インド市場にも進出するとロイターなどが報じた。インドではまずモデル3を販売し、顧客の反応を見ながら工場建設の検討を進めるという。

EV販売過去最高を更新、CEOは世界一の富豪

テスラが1月2日に公表した20年10〜12月期のEV世界販売台数は18万570台で、これまでの最高だった20年7〜9月期の13万9593台を上回った。

また、20年のEV年間販売台数は49万9647台(確報値)。年初に目標としていた「50万台超」を下回ったものの、前年比36%増を達成。こちらも過去最高を更新した(図1)。

図1 テスラのEV年間販売台数推移(速報値)(インフォグラフィックス出典:ドイツStatista)
図1 テスラのEV年間販売台数推移(速報値)(インフォグラフィックス出典:ドイツStatista)

1月8日、テスラの株価は前日比7%高となり、時価総額が8200億ドル(約89兆3500億円)に達した。これは、フェイスブックを上回る規模で、米アップル、米マイクロソフト、米アマゾン・ドット・コム、米アルファベットに次ぎ、米企業で第5位。

テスラ株はこの1年で急上昇した。20年1月には時価総額が1000億ドルの大台を超えた初の米自動車メーカーとなり、20年7月にはトヨタ自動車を抜き、自動車メーカーで世界首位となった(図2)。

時価総額は20年11月に5000億ドルの大台を突破。その翌月、同社株はS&P500種株価指数に組み入れられた。

図2 自動車大手の時価総額 20年9月1日時点(インフォグラフィックス出典:ドイツStatista)
図2 自動車大手の時価総額 20年9月1日時点(インフォグラフィックス出典:ドイツStatista)

米ウォール・ストリート・ジャーナルは21年1月8日、イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)の純資産が約1950億ドル(約21兆2500億円)となり、アマゾンのジェフ・ベゾスCEOを抜いて世界一の富豪になったと報じた

  • (このコラムは「JBpress」2021年1月20日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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