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スマホ出荷はコロナ禍で4年ぶりのプラス成長ならず、今年12%減の12億台にとどまる見通し

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 米調査会社のIDCが先ごろ公表したレポートによると、今年のスマートフォン世界出荷台数は12億台にとどまり、前年から約12%減少する見通し。

 これに先立つ4月30日付のレポートでIDCは今年1〜3月期の世界出荷台数が前年同期比11.7%減の2億7580万台となり、四半期出荷台数の落ち込み幅が過去最大になったと報告していた。

 新型コロナウイルスによるマイナスの影響はその後も続いており、今年は年間出荷台数が2桁の減少になると同社はみている。

コロナ以前は4年ぶりの増加を予測

 登場して以来順調に台数を伸ばしてきたスマートフォンは、2017年に前年比0.3%減となり、統計を取り始めて以来初めて前年実績を下回った。

 2018年も同約4%減と、マイナス成長。昨年も同2.3%減となり、3年連続で前年実績を下回った

 こうした中、今年は同1.5%増の14億台強と、4年ぶりに増加に転じるとIDCは予測していた(図1)。

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在宅の広がりでスマホ需要低下

 しかし、その後のパンデミック(世界的大流行)により、見通しは大きく変わったという。

 米アップルや韓国サムスン電子といった主要メーカーのサプライチェーン(供給網)に混乱を生じさせただけでなく、消費者支出にも影響を及ぼしたとIDCは指摘している。

 IDCのシニア・リサーチ・アナリストのサンギーティカ・ スリバスタバ氏は、「各国の全国的な都市封鎖(ロックダウン)や失業の拡大による消費者マインドの冷え込みが、スマートフォン需要に直接的な影響を及ぼしている」と述べている。

 また、消費者はスマートフォンよりも、パソコンやPCモニター、ゲーム機といった在宅勤務や自宅待機に必要な商品を購入している。消費行動に大きな変化が見られるという。

中国1ケタ減、欧州2ケタ減

 スマートフォン市場を地域別に見ると、都市封鎖が緩和され、サプライチェーンの混乱が和らいできた中国は回復の兆しが見られるという。

 IDCによると、中国ではほとんどの地域で工場の操業が再開している。人の移動や物流に一定の制限があるものの、経済活動は再開しており、今年の出荷台数は前年比1ケタ減にとどまると同社はみている。

 その一方で、イタリアやスペインをはじめとする欧州市場は打撃が大きく、2ケタ減になるという。

 これらの理由から、年内は世界市場の回復は見込めない。回復するとしたら、それは2021年1〜3月期以降だとIDCは予測している。

  • (このコラムは「JBpress」2020年6月5日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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