アマゾン、模倣品700万点処分 撲滅に向け対策強化 「ゼロにするまで手を緩めない」と固い決意
米アマゾン・ドット・コムは、2023年に全世界で700万点以上の模倣品を特定・処分したと明らかにした。
12億ドル(約1820億円)以上の費用を投じ、機械学習(マシンラーニング)の専門家やソフトウエア開発者、専門調査員など、1万5000人以上が対策に従事した。
彼らは模倣品販売も含め、詐欺などの悪質な行為から顧客、ブランド、出品者、オンラインストアを守るための任務にあたっているという。
模倣品700万点阻止、悪質アカウント年々減少
これにより、23年は世界で700万点以上の模倣品を特定して差し押さえた。これらはアマゾンが適切に処分したため、流通網に残り再び販売されることはないとしている。
アマゾンのワールドワイド・セリング・パートナー部門担当バイスプレジデント、ダーメッシュ・メータ氏は「引き続き革新を重ね、模倣品をゼロにするまで手を緩めることはしない」と表明した。
同社は24年3月25日、「Brand Protection Report(ブランド・プロテクション・リポート)」と呼ぶ年次報告書を公開した。公表は4回目となる。
23年は、未然に食い止めた悪質アカウントの件数が約70万件だった。22年では悪質業者が試みた新規アカウント開設件数は約80万件、21年は約250万件、20年は約600万件と報告しており、その件数は年々減少している。
その理由として同社は、マシンラーニングなどのテクノロジーを組み合わせた厳格な審査システムが知られるようになり、不正行為を試みる業者が減ったためと説明している。
マシンラーニングで出品者の身元確認
外部の小売業者がアマゾンのサイトで商品を販売できる「マーケットプレイス」を本格展開したのは2000年だった。アマゾンは収益性の高い外部業者の商品を積極的に取り扱う戦略を打ち出しており、現在その販売額は同社サイトの物品販売総額の半分以上を占める。
だが、このマーケットプレイスは、模倣品や製品安全不適合品、期限切れ商品の温床と批判されてきた。そこで対策として、実物商品を検査したり、アカウント停止の自動化技術を導入したりした。
また、サイトの商品詳細ページで不審な変更が行われていないかをスキャンして不正の兆候を探っている。
20年6月には、元検察官や元捜査官、データアナリストなどの専門家で構成する「模倣品犯罪対策チーム(Counterfeit Crimes Unit、CCU)」を社内に発足させた。それ以降、民事訴訟や法執行機関への刑事告発を通じ、2万1000以上の悪質業者を追跡し、法的責任を追及してきた。
アマゾンは社内に法令順守チームも設置している。米移民税関捜査局の全米知的財産権調整センター(IPRセンター)や米特許商標庁(USPTO)、欧州刑事警察機構(ユーロポール)のほか、世界各国の関連法執行機関と協力している。
前述した通り、同社は小売業者の審査も強化している。新規にアカウント登録する業者は身元確認書類などを提示しなければならない。米国や英国、カナダ、EU、日本などでは、この認証を受けることを義務付けている。
しかし、それでも不正を行う業者がいる。そこで認証プロセスにおいて、マシンラーニングによる文書偽造検出や画像・動画検証などの技術を活用し、公的身分証明書の真正性や本人同一性を確認している。
模倣品検出にコンピューター・ビジョンや大規模言語
このほかブランド保護のための各種施策も講じている。これには、メーカーなど商標権を持つ出品者を対象に、権利侵害の商品をチェック・検出したり、報告したりできるようにする知的財産保護・管理制度「Amazon Brand Registry(ブランド登録)」がある。
アマゾンはこれを模倣品の発見に活用している。メーカーなどが事前登録した商品の形状・パターン、商標ロゴなどを基に、出品商品の画像を分析し、権利侵害を検出する技術である。
23年は、コンピューター・ビジョンや大規模言語(LLM)モデルなどの最先端技術を用いることで、その能力を大幅に高めた。悪質業者の新たな手口に対抗するため、毎週数千万枚の商品画像をシステマチックに自動評価するなど、ブランド保護機能の強化を図っている。
筆者からの補足コメント:
アマゾンのブランド保護に向けた施策にはこのほか、①商標登録を支援する制度「IPアクセラレーター」、②メーカー自らが模倣品をアマゾンサイトから削除できる「Project Zero(プロジェクト・ゼロ)」もあります。アマゾンは、商品にシリアル番号を付与し、配送前に正規品であることを確認する「Transparency(トランスペアレンシー)」と呼ぶ仕組みも導入しています。本稿にもありましたように、23年に処分した模倣品の数は約700万点。22年の数は約600万点、21年は300万点、20年は200万点、と年々増えていることが分かります。
- (本コラム記事は「JBpress」2024年4月3日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)