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AmazonがAI機器にディスプレイ搭載。用途が広がり、普及に弾み

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

かねて噂されていたとおり、米アマゾン・ドットコムは5月9日、音声アシスタント機器「Echo(エコー)」シリーズに、初めてディスプレーを搭載したモデルを追加し、229.99ドルで販売すると発表した。

この製品は「Echo Show」と言い、米国で6月28日に出荷を開始する予定。すでに事前注文を受け付けており、2台同時購入すると、合計金額から100ドル差し引くという販売キャンペーンを行っている。

7インチのタッチスクリーン搭載

Echo Showは、「Amazon Echo」などのスピーカー型アシスタント機器と同じく、AI(人工知能)を用いたアマゾンのアシスタントサービス「Alexa」が利用できる機器だ。

本体には7インチサイズのタッチスクリーンを搭載しており、利用者の音声命令に応じて、ニュース速報を映したり、音楽再生と同時に歌詞を表示したり、同社の写真保管サービスにある写真を表示したり、YouTubeの動画を再生したりできる。

また従来機器と同様、音声で、カレンダーに入れた自分の予定を尋ねたり、アマゾンに商品を注文したりすることもできるが、そうした情報はディスプレーに表示されるため、これまでのような音声のみインタフェースよりも使い勝手が良さそうだ。

Echo Showは、Alexaに対応する家庭用機器の操作も可能で、従来機と同様に照明や室温の調整が行えるが、ディスプレーを搭載したことで、ベビーモニターカメラやセキュリティカメラの映像を映すこともでき、用途を広げている。

従来機やアプリとの通話も可能に

そして、アマゾンがこの新モデルで強調しているのが、通話機能だ。これは、パソコンやスマートフォンでもおなじみの通話/音声メッセージ機能をEchoシリーズでも利用できるようにするもの。Echo Show同士の場合は、ビデオ通話が可能になる。

同社はこれに併せ、Echoシリーズのソフトウエアを更新する予定で、まもなくAmazon EchoやEcho Dotといった従来機でも通話と音声メッセージが可能になる。

また、アマゾンは、Echoシリーズの各種設定を行う、iOS/Android/Fireタブレット向けアプリを提供しているが、これを同日付で刷新した。これにより、Echoシリーズとアプリ間でも通話が可能になる。

Echo Showとアプリ間では、ビデオ通話も可能になり、外出先から簡単に自宅のEcho Showを介して、家族と会話ができると、アマゾンは説明している。

アマゾンのシェア、70%超に

アマゾンのEchoシリーズについては、同社がディスプレーを備えるモデルを開発しており、電話機能の搭載も検討しているといった観測がこれまでに出ていたが、今回の発表で、それが現実のものになったというわけだ。

同社はこうして、家庭用AIアシスタント機器の分野に力を入れており、4月には、ファッション市場を狙った新モデル「Echo Look」を発表している。

現在のところアマゾンの戦略は成功しているもようだ。先ごろ、米国の市場調査会社、eマーケターが公表した、音声アシスタント機器に関するリポートによると、米国における今年(2017年)のEchoシリーズの利用シェアは70.6%となり、競合である「Google Home」の23.8%を大きく上回る見通し。

今後数年間、この分野におけるアマゾンのシェアは若干低下し、それに伴いグーグルのシェアが伸びていく。しかし当面は、アマゾンが音声アシスタント機器の市場で支配的な地位を維持するとeマーケターは予測している。

JBpress:2017年5月11日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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