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西日本地域を制する勢いの「ICOCA」 交通系ICカードはスマホ搭載「3強」が覇権を握るのか?

小林拓矢フリーライター
JR西日本のみならず、北陸・関西・中四国でICOCAエリアは広まっている(写真:イメージマート)

 キャッシュレス化が進む中、交通系ICカードはその主役となっていった。少額決済においては、さまざまなキャッシュレス決済が導入されていったが、その中で非接触ICカードの多くは力を失い、QRコード決済は補完的な役割しか果たせていない現状がある。

 スーパーや百貨店など大きな商業施設ではクレジットカード、乗り物の利用やコンビニなどでは交通系ICカード、小規模なお店ではQRコード決済と、すみ分けが進む現状がある。

 しかし、都市部で多くの人が日常的に使うのは交通系ICカードとなっており、このシステムが日本のキャッシュレスの主流になっていった。

 交通系ICカードは、都市生活者のライフスタイルに合ったシステムである。まず都市生活者の日々の移動の基本は、電車やバスである。そして買い物はコンビニである。その生活形態に、交通系ICカードはちょうどいいものとなっている。

 加えて、主要な交通系ICカードはモバイル対応を進めていった。JR東日本を中心とした「Suica」を皮切りに、首都圏の私鉄や地下鉄を中心とした「PASMO」、JR西日本を中心に私鉄でも幅広く取り上げられている「ICOCA」が、スマートフォンで利用できるようになっている。この3つの交通系ICカードが、交通系ICカードの世界で存在感を強めるようになっている。「3強」とその他で、交通系ICカードは大きく分けられた。

攻勢を強めるICOCA

 最近、ICOCAの存在感がしだいに増している。北陸新幹線開業後の並行在来線から中国地方の大部分、四国の一部をエリアとするようになり、関西地方や中国地方の私鉄・バスでもICOCAを導入するところが増えている。

ICOCA
ICOCA写真:アフロ

 その勢いをさらに強めることになるのが、先日JR西日本が発表した「ICOCA Web定期券サービス」である。

 このサービスでは、バスや地域鉄道のICOCA定期券を、定期券販売所ではなく利用者自身でスマートフォンやパソコンからWebで購入できるようになる。コンビニ決済も可能だ。

 もちろん、モバイルICOCAも対応できる。なお通学定期券も購入可能だ。

 バスや地域鉄道の場合は、定期券を購入できる場所が限られており、購入自体が難しいことも多い。こういったバスや鉄道で、かんたんに定期券を購入できることはかなり画期的である。

 さらに、地方の私鉄やバスでもICOCAを導入しようとする動きが相次いでいる。

 愛媛県の伊予鉄グループでは、3月13日に市内電車とリムジンバスにICOCAを導入する。加えて、2025年3月には、郊外電車と路線バスに導入。定期券はICOCA Web定期券サービスを採用する。独自のICカードは終了する。

 広島エリアでは、広島電鉄を中心とした「PASPY」が、2024年9月に「MOBIRY DAYS」へと移行する。その際に、バス会社によってはPASPY後継ではなくICOCAに移行する方針を示している。すでに整っているICOCA対応の設備を変える必要はなく、ICOCA Web定期券サービスも導入でき、何も問題はなく対応できるということになる。

 北陸・関西・中四国と、広大な範囲でICOCAが便利に使用できることとなる。

Suica・PASMOはどうする?

 JR東日本は、Suicaの拡大・普及を企業の主たる事業の柱にまでした。JR東日本エリア、とくに首都圏エリアの人々の生活を、モバイルSuicaベースにすることをめざしていると、うがった見方をすることも可能だろう。

JR東日本のビジネスの中心はSuicaと言っていい
JR東日本のビジネスの中心はSuicaと言っていい写真:アフロ

 いっぽうJR東日本は、地方の鉄道・バス事業者と協力し、Suica機能を搭載した地域連携ICカードを続々と送り出している。独自のポイントサービスなども可能になっている。

 地域の交通事業者は、交通系ICカードシステムへの投資を抑えられるいっぽう、独自のサービスも残せるというメリットがある。

 JR東日本としては、Suicaサービスを各地に普及させたいという意図はある。だが地域独自のサービスもまた必要という各地の事業者の意見もある。それらをすり合わせるために、地域連携ICカードを普及させている。

 だがこれではモバイル対応をどうするか、という問題も発生してくる。

 PASMOはモバイル化を達成し、関東圏の私鉄や地下鉄、バス事業者を中心に普及している。だがかなりの事業者に採用されたためか、これ以上の拡大には消極的だ。鉄道はモバイルで定期券が買えるが、バスは事業者それぞれに違いがある。

 SuicaやPASMOは優れたシステムで、モバイル対応にも積極的である。これにICOCA Web定期券サービスと同等のサービスを導入できたら、と思わずにはいられない。とくにバスや中小鉄道には必要だと感じる。

交通系ICカードの再編は起こるか?

 現在、相互利用可能な交通系ICカードは、10種類ある。その中で関西私鉄を中心とした「PiTaPa」は、衰退傾向にある。Suica・PASMO・ICOCA以外の交通系ICカードは、モバイル対応に遅れている。

 この状況には2通りの解決策がある。ひとつは、モバイル対応していない交通系ICカードを、一括してモバイル対応させてしまう、iPhoneやAndroidのアプリを開発することである。これにより各地の交通系ICカードを、モバイル対応することができる。

 もうひとつは、交通系ICカードを全国でSuica・PASMO・ICOCAに集約してしまうことである。それぞれの中心となっている事業者が、システム使用料をいまよりも安くすることにより、それぞれの傘下に入っていきやすいようになる。

 交通系ICカードが今後どうなるか、ということは公共交通利用者にとって重要なことであり、事業者の利害を超えた対応が必要になるだろう。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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