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【能登半島地震と鉄道】絶望的だと思われていたのと鉄道、JR西日本とタッグを組み早期復旧へ

小林拓矢フリーライター
のと鉄道NT200形(写真:イメージマート)

 1月1日、能登半島で大きな地震が起こった際、交通にも大きな影響が出た。新幹線などでも運休が相次ぎ、JR西日本七尾線やのと鉄道は大丈夫なのか、という心配をした人も多いだろう。

 とくに被災地に近いのと鉄道は輸送密度も低く、このような場合には廃線の対象になるのではと考えてしまう人も多かったかもしれない。

 しかし、1月9日と10日には、国土交通省の緊急災害対策派遣隊や、鉄道・運輸機構の鉄道災害調査隊が派遣され、被害状況を把握した。

 のと鉄道が1月11日に公開したInstagramの画像では、法面の崩落や線路の地盤沈下などがひどいという状況になっていた。

 はたして、復旧はできるのか。

急いで進むJR七尾線の復旧

 1月5日には、JR西日本は七尾線の運転計画を発表した。すでに津端~高松間は復旧していたものの、高松~羽咋間は再開まで2週間以上、その先の羽咋~和倉温泉は復旧のめどが立たないとした。しかし15日には高松~羽咋間で運転を再開した。ただし、運転にあたっては本数を削減し、減速することになった。羽咋~七尾間は1月22日に運転を再開した。再開により、金沢~七尾間の「能登かがり火」が1往復、大阪~七尾間の「サンダーバード」が1往復設定された。ただ、「能登かがり火」は3往復の運休が続き、観光列車の側面が強い特急「花嫁のれん」は全列車運休である。

 七尾~和倉温泉間では、2月中旬の運転再開をめざすという。

 これにより、JR西日本の七尾線は、全線で再開することになる。

 被災状況が厳しかったJR七尾線でも、このスピードで復旧を進めることができた。

羽咋に停車する521系電車
羽咋に停車する521系電車写真:イメージマート

のと鉄道はどうなる

 現在、のと鉄道では、「当面の間、運転休止」となっている。のと鉄道の和倉温泉~穴水間は、のと鉄道が第二種鉄道事業者として運行し、JR西日本が第三種鉄道事業者として線路などの設備を保有している。

 この線区の復旧工事については、JR西日本が復旧工事計画を策定し、速やかに施工を進めるとともに、両者が密接に連携し、和倉温泉~能登中島間で2月中旬の運転再開をめざしているという。七尾~能登中島は2社にまたがるものの、両者でタッグを組んで復旧に取り組むということになった。

 能登中島~穴水間においても、「運行再開は未定」としながらも、JR西日本の協力を得て再開させようとしているところである。

能登中島駅までまずは復旧する予定
能登中島駅までまずは復旧する予定写真:イメージマート

過去の鉄道災害と比較して

 災害により鉄道が運行されず、そのまま廃線となったケースは、近年多く見てきた。大雨による被害からいまだ復旧できず、地元と協議を重ねても体制が整わない例も多くある。JR東日本の津軽線蟹田~三厩間、米坂線今泉~坂町間、JR九州肥薩線八代~吉松間は協議が難航、JR北海道の根室本線東鹿越~新得間は廃止となる。

 こういった過去の鉄道災害に比べると、のと鉄道の被災区間が短く、修復も可能なところが多かったためか、なんとか立ち直ろうとする体制を整えている。鉄道災害調査隊が入り、被災状況を確認し、早期復旧が可能であることを示した。それゆえにのと鉄道もJR西日本ももとのように鉄道を走らせるようにしようと考えた。

 鉄道災害調査隊は、鉄道会社が自社だけでは鉄道災害を調べられないような被災をした場合に即応できるように鉄道・運輸機構によってつくられたものだ。もし、これがのと鉄道やJR西日本だけで何とかしろ、ということになったら対応は長引いた。地震と風水害という違いはあっても、鉄道災害に対応できる体制が以前よりも整っていることは確かである。

 また、JR西日本とのと鉄道がタッグを組める体制を整えていたことが、のと鉄道の早期復旧につながることになったと考える。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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