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JR東日本京葉線「通勤快速」廃止問題から考える 「列車種別」は何のためにあるのか?

小林拓矢フリーライター
JR東日本京葉線の通勤快速(写真:イメージマート)

 3月16日のJRダイヤ改正では、JR東日本千葉支社の改正内容が大きな波紋を呼んでいる。京葉線では、日中時間帯(10時~15時台)を除き、通勤快速および快速を各駅停車に変更するということになった。

 平日の通勤快速は、朝時間帯上り東京方面2本、下り蘇我方面2本となっている。朝ラッシュ時には、上りの快速は運転されない。

 この変更が、地元自治体などから大きな反発を呼んでいる。

JR東日本千葉支社側の論理は?

 JR東日本千葉支社が記者会見などで述べたことを適宜まとめると、まず全列車各駅停車にするのは、混雑の平準化を理由としているのだという。朝ラッシュ時に通勤快速は比較的混雑していないというのがその理由である。ただ、通勤快速は蘇我を出ると新木場まで停車しないという列車であり、そもそも中間駅はターゲットとしていない。

 全列車を各駅に停車することにより、待ち時間などをなくすことができ、各列車の速達性を高めることができるというのも、JR東日本千葉支社の主張である。蘇我から東京までの到達平均時間を短くすることができ、そのぶんサービスが向上できるというものである。ただ、蘇我以遠の利用者には、約19分所要時間が増えることになる。

 千葉支社長は各方面からの反発に、「丁寧に説明を」とさまざまな場で述べている。コロナ禍前より利用者が減少している状況もあるという。

 千葉支社のプレスリリースによると、平日の快速は59本から24本に、土休日の快速は89本から47本へと削減する。ただしこのことにより、幕張豊砂などの快速通過駅は、平日で31本~32本、土休日で39本~42本停車列車が増加するという。

 さらに、朝・夕それぞれ1本ずつ減便するという。

 通勤快速の廃止、快速の削減により、駅によっては便利になるという説明をしている。また、「列車種別の変更」という説明をしているとも聞く。

停車列車の本数が増加する幕張豊砂駅
停車列車の本数が増加する幕張豊砂駅写真:イメージマート

通勤快速が廃止される側の論理は?

 しかし利用が少ないからといって通勤快速を各駅停車に「列車種別の変更」なんてされたら、人によってはたまったものではないともいえる。東京に向かう通勤快速は勝浦・成東発が1本、上総湊発が1本である。この地域から東京に向かう朝の京葉線の列車はこれしかないのだ。内房沿線の5市、外房沿線の2市1町はダイヤ改正の撤廃を求める意見書をJR東日本千葉支社に提出している。より東京方面への通勤時間がかかるようになり、利便性を損ない、生活形態を崩壊させるとの内容だ。沿線地域の発展の機会をも奪われるという。

 その他千葉県知事や千葉市長、地元経済界、地元住民からの反発が大きく、蘇我以遠の利便性が損なわれるということが強く問題視されている。

ラッシュ時に全列車各駅停車にするだけでいいのか

 ラッシュ時は、鉄道ではどの路線も非常に多い列車が走っている。JRも私鉄も、大都市圏では例外はない。そんな中でも、複数の列車種別を駆使し、利用者の利便性を損なわないということは、多くの私鉄はやっているのである。

 JRの場合は、複々線などが充実しているため、そこまでシビアなことをやらなくてもいい。しかし京葉線は複線である。

 だが多くの私鉄は、複線であってもラッシュ時に上手に列車種別を駆使し、緩急接続や遠近分離をていねいに行っている。

 京葉線の通勤快速や快速は、遠近分離で遠距離の人により速く遠くまで行くことができるようにする、というサービスである。これらの列車種別を使い分け、利便性の高い路線となるようにするのが、本来の形である。

 だが、京葉線は快速の本数がそもそも少ない。およそ15分から30分に1本である。そもそももっと増やしてもおかしくはないのでは、ということは言える程度の本数でしかない。

京葉線の各駅停車
京葉線の各駅停車写真:イメージマート

 遠近分離のため、追い抜きなどができる設備はないのか、といってもそんなことはないのである。

 確かに京葉線には、武蔵野線乗り入れ列車というダイヤを複雑にできない事情はある。しかし、葛西臨海公園に通過線、新浦安が2面4線、南船橋が武蔵野線方面への折り返し線があるとはいえ2面4線、新習志野が3面4線、海浜幕張が2面4線、千葉みなとが2面3線ということで、もっと工夫のしようはあるのではということも考えられる。ラッシュ時の本数も、私鉄やJR東日本中央線に比べて少ないという現状はある。

通過線のある葛西臨海公園駅
通過線のある葛西臨海公園駅写真:イメージマート

 複数の列車種別を駆使し、余裕のある利用状況にしていくことができるはずの路線であるということは十分にいえるのだ。

 まだまだ改善の余地はあり、「丁寧に説明を」「列車種別の変更」などと言ってごまかすのは問題があるといえる。

 種別を複数にして、遠距離の乗客と近距離の乗客を分離するというのは、どこの私鉄でもやっていることである。

 JR東日本全体では、コロナ禍を機に列車本数を縮小していくという方針を持っている。終電繰り上げなど納得がいくものはあるものの、しかし多くの人が乗車する朝ラッシュ時などの削減という、理由がわからない方針もある。コロナ禍を経て鉄道利用者数は減っていくというのがJR東日本の見立てだったが、新型コロナウイルス感染症が5類になってかなりの鉄道利用者が戻ってきている。以前のように列車の本数を戻して、余裕のある環境にするという発想はないのだろうか? コロナ禍を機に思い切って列車の本数を減らしてしまう、乗客は戻らないからそれでいい、コスト削減を理由にできる、という考えを持っているとさえ思えてしまう。

 JR東日本千葉支社は、地元の反発に真摯に向き合ってほしい。「民間企業だから営利を追求するのは当然」と言って、ごまかさないでほしい。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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