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鉄道ではことし、何が起こるのか? 相鉄・東急直通線開通、うめきた新駅開業などの一方で値上げも

小林拓矢フリーライター
東京メトロ副都心線や南北線の車両が相鉄に乗り入れる(写真:イメージマート)

 厳しいことが予想される日本の鉄道。それでも、都市鉄道と新幹線に関しては、新しいことが次々に起こるというのが、このところの傾向である。

 この一年のスケジュールを考えても、都市部の鉄道に新線や新駅など、華々しいことが起こることはすでに決まっている。

 そんな話をまず紹介してみよう。

いよいよ開業の相鉄・東急直通線

 相模鉄道は2019年11月に、JRとの直通をなしとげた。しかし、相鉄が都心に向かおうとするプロジェクトはもうひとつあり、そちらのほうが大本命であると言われていた。3月18日には羽沢横浜国大から新横浜へと向かう路線が開業し、そこから東急の新路線を経由して都心へと向かう。東急東横線方面から東京メトロ副都心線へ向かう列車もあれば、東急目黒線に直通後に東京メトロ南北線や都営三田線に進んでいく。

 JRとの直通では、本数も少ないこともあり都心直通の効果は限定的だったものの、東急への直通は本数が多いため、相鉄沿線住民の移動形態そのものが変わってくる。

 相鉄沿線住民の多くは、横浜までまず相鉄で移動し、ほかの鉄道を利用して都心へと向かっていたものの、直通列車ができるためそれを利用して都心へと向かう人が増えるということになる。相鉄の横浜駅利用者は減ることが予想されるものの、「YOKOHAMAどっちも定期」を導入し、平日の通勤では都心への直通、土休日の買い物などには横浜駅などでの買い物が可能になるようにし、駅周辺の相鉄関連の商業施設への影響を最小限にするように予定している。

 また、相鉄・東急直通線の開業により相鉄線沿線や東急線沿線からの東海道新幹線へのアクセスが便利になる。新横浜で東海道新幹線に乗り換えることが可能になり、相鉄や東急線沿線の人が新横浜まで行くのに、他社線への乗り換えを必要とすることがなくなった。あわせてJR東海は、土休日などに早朝の臨時列車を運行することになった。

うめきた新駅の開業の影響は?

 JR西日本はうめきたエリアに大阪駅のうめきた新ホームが3月18日に開業する。紀勢本線方面への「くろしお」や、関西国際空港方面への「はるか」は貨物線を利用しているという路線の構造上大阪駅に停車できなかったが、それが大阪駅で乗り換えることが可能になる。大阪駅より西側の利用者が、これらの列車にダイレクトに乗り換えることができる。

 あわせて、おおさか東線の列車がうめきた新ホームに乗り入れるようになり、この沿線の利用者が乗り換えなしで大阪市の中心エリア・梅田エリアに直接行くことができるようになる。

開発中のうめきたエリア
開発中のうめきたエリア写真:イメージマート

 うめきたエリアの開発が進む中、この新駅は地域発展の中で重要な役割を果たすことになる。いっぽうで、地域によっては微妙にアクセスが悪かった特急がより利用しやすくなるという実際のメリットもある。このホームが登場することで、鉄道の利便性が大きく向上するのだ。

 もちろん、既存の大阪駅のホームからは多少離れているということはいえる。しかし、これまでのように大阪駅から天王寺駅まで行ってということをしなくてもよくなったのは画期的である。

 新線・新駅はそのほかにもある。たとえば、3月27日の福岡市地下鉄七隈線の天神南~博多間の延伸はすでに確定しており、8月には芳賀・宇都宮LRTが開業することが予定されている。JR東日本では3月18日に京葉線で幕張豊砂が開業、巨大な幕張エリアへのアクセスがより向上することになる。

いっぽうで値上げはなんのため?

 さて、世の中は値上げラッシュである。鉄道もまた例外ではない。インフレが進むいっぽう、ロシアのウクライナ侵略が長引いていることがエネルギー価格に影響を与え、当然ながら鉄道の動力費にも影響を与えている。

 値上げ関連で注目なのは、3月にJR東日本が導入する「オフピーク定期券」であり、平日のピーク時間帯には定期券として利用できないことで安くするという仕組みになっている。コロナ禍になってからも決まった時間で通勤しなければならない労働者が多くいるこの国で成功するかどうかはわからないものの、混雑緩和に寄与するかは見ものである。

 さらに鉄道はバリアフリー対応にも力を入れなければならないという状態にある。「鉄道駅バリアフリー料金制度」を導入することで、ホームドアなどの整備に力を入れる。

ホームドアの整備はバリアフリーのために欠かせない
ホームドアの整備はバリアフリーのために欠かせない提供:イメージマート

 値上げの背景には、利用者減の補填、インフレへの対応、バリアフリー対応などさまざまな要因があるものの、対応しなくてはならないものである。その中でも通学定期券は値上げしないという方向性を多くの事業者は続けていく。

 値上げ関連の中でも、「鉄道駅バリアフリー料金制度」は人々が助け合う社会のために必要なものであり、避けて通ることができない。そのほかの値上げも、鉄道維持のためとなるとしかたがないことである。地方のローカル鉄道でも値上げを予定しているところがあり、持続可能な鉄道のために避けて通れないことである。

 鉄道はこの一年、とくに春に大きな変化が予定されている。この国の基幹となるシステムである鉄道がどうなっていくか、目が離せない。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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