12月12日、1966年に新宿~松本間で運行を開始した特急「あずさ」は、55周年を迎える。それを記念してスタンプラリーやイベントなども行われる。

 在来線特急の短距離化の中で、現在では比較的長距離の特急となってしまった「あずさ」。どんな列車だったのか、気になるトピックを挙げてみたい。

最初は181系、食堂車もついていた

 特急「あずさ」は筆者には183系のイメージが強いが、筆者が生まれる前から運行されており、その際は181系を使用していた。181系は、直流特急型車両として耐寒・耐雪仕様をほどこし、おもに上越方面特急「とき」で使用されていた。

 特急が大幹線だけではなくさまざまな路線にも普及するようになってきており、その流れの中で特急「あずさ」は生まれた。新宿~松本間を最速3時間57分で走る列車だった。

 当時、中央本線の優等列車は急行が主流だった。4時間から5時間程度なら特急ではなく急行でも問題がないという考え方が主流だったこの時代、急行「アルプス」がメインの列車だった。この列車にはビュッフェ車も連結されていた。

 そういった状況もあったためか、181系特急「あずさ」には食堂車が連結されていた。車内には穂高連峰のレリーフが。その上、グリーン車も2両。あわせて10両編成である。

 この時代には多くの特急列車に食堂車が連結されており、在来線の食堂車は充実していた。また、新幹線にもビュッフェ車があり、いまよりも長時間乗車することが多かったこの時代、食堂車は必要だったのだ。

短距離特急の先駆け、甲府発着「あずさ」

 1972年10月には上り始発、下り最終の「あずさ」が甲府駅発着となる。このころには短距離でも特急を走らせるという考え方が広まり始め、房総方面の急行がどんどん特急になる。そのためにつくられたのが183系である。183系は、これまでの特急車両とはちがい、1車両に2扉、食堂車なしと短距離運行を意識して製造された車両である。

 甲府発着の「あずさ」は、当初は181系を使用し、食堂車は営業休止していた。1973年10月から「あずさ」にも183系が使用され始め、1975年12月には181系は「あずさ」から消える。この間1973年には食堂車が廃止された。

 183系使用開始とあわせて、自由席も設けられ、高頻度運行の「エル特急」となる。その中で甲府発着列車は短距離列車として意外性を感じられたものの、甲府駅利用者には受け入れられていく。1986年には急行列車が夜行を除いて廃止、1988年には甲府発着列車が「かいじ」となる。

 もともと「かいじ」は、名前こそ新宿~甲府間の急行列車として使用されていたものの、定期列車の本数も少なく、特急「かいじ」に格上げというには廃止されていた時期もある。短距離は急行、の時代だからこそ存在した列車であり、全国的な特急化の流れの中で消えていった。

 甲府発着「あずさ」に別の名前を、ということで列車名が復活したのが「かいじ」である。この「かいじ」は、「あずさ」が通過する駅でも停車し、夜遅い時間の列車もあったので重宝がられることになる。

 そんな「あずさ」「かいじ」の分業体制の起源となったのが、甲府発着「あずさ」である。

グレードアップ車両とE351系「スーパーあずさ」、E257系

 国鉄がJRになり、サービスの改善が行われる。人気のあった「あずさ」も、一部の列車にグレードアップ車両が導入されたのだ。

 塗色を変え、座席をかさ上げして眺望をよくし、これまでの183系にはなかったテーブルも備え、「バッタン」となる簡易リクライニングシートから途中でもちゃんと止まるものへと変えた。これが大当たりし、「あずさ」には多くの乗客が押し寄せる。

 背景には中央高速バスとの競争があった。値段で負ける中央高速バスに対抗するため、設備を改善し多くの利用者を獲得しようとした。

 さらにJR東日本は、中央東線の高速化のために新型車両を投入した。E351系だ。この車両は、制御付自然振り子を採用し、曲線の多い中央東線でも最高速度130km/hを可能にした。新宿~松本間で最速2時間25分となる。181系時代から考えると大幅な所要時間削減だ。この車両を使用した列車は「スーパーあずさ」と名付けられた。

「スーパーあずさ」に使用されたE351系
「スーパーあずさ」に使用されたE351系写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 いっぽう、1997年10月に長野新幹線(現在の北陸新幹線)が開業したことにより、特急「あさま」の189系に余剰が発生した。189系は183系を碓氷峠でのEF63との協調運転対応にしたもので、以前から「あずさ」とも共通運用されていた。この「あさま」用の車両も「あずさ」に使用され、「あさま」の塗色のまま走った列車もある。

 しかし、183系・189系の陳腐化は否めない。ただ、E351系ほどの速達性は求められないものの、それなりに新しい性能を盛り込んだ新車の導入が必要だった。そんな中で登場したのがE257系だ。JR東日本では振り子式特急はうまくいったとはいえず、車両限界の厳しい中央東線で居住性も犠牲にしなくてはならない部分がある。そんな中で生まれたE257系は、中央東線特急の体質改善に役立った。2001年12月から導入された。183系・189系は2002年11月末をもって定期運用から去った。

一般の「あずさ」に使用されたE257系
一般の「あずさ」に使用されたE257系写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

E257系「あずさ」車内
E257系「あずさ」車内写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

定期列車全列車E353系に統一へ

 同じ路線の列車に複数の車両が使用されていると、運用が面倒なものである。「あずさ」などもこの悩みをかかえることになった。また、「スーパーあずさ」E351系の老朽化が早く、メンテナンスのしにくさや、不具合の多さなども問題になっていた。振り子式ゆえの制約もあった。

 そんな状況を改善するために、E353系は生まれた。2018年7月に投入開始、2019年3月のダイヤ改正でこの車両に統一し、「スーパーあずさ」はなくなった。最高速度は130km/h、空気ばねを使用した車体傾斜装置を使用している。

「あずさ」「かいじ」だけ、車両は同じと統一感が高いサービスが提供されることになった。このダイヤ改正では全車指定席になる。

「あずさ」は興味深いことが続いていた列車である。在来線が新幹線になり、特急の短距離化が進み、いっぽうで列車によっては削減や廃止、短編成化が進む中で、最大12両編成、「あずさ」「かいじ」あわせて30分に1本という高頻度体制を長年にわたって続けてきた。現在は新宿~松本間2時間23分、新宿~甲府間1時間22分と、大幅な速達化を達成した。

 今後も多くの人に親しまれる列車であってほしい。