コロナ第6波の可能性がありつつも、街の中には多くの人が出歩くようになっている。観光客などもしだいに増えつつある。そんな中で、鉄道も利用者をもとに戻したいという考えが出てくるのも自然だろう。JR東海と西日本が興味深いキャンペーンを開始した。「エクスプレス予約」「スマートEX」で、こどもの利用代金を返金し、実質無料にするというものだ。

どんな条件で無料に?

 このキャンペーンは、きょう11月24日(水)に開始し、12月19日(日)まで行われる。実施自体の発表が11月19日だったから、ずいぶん急なキャンペーンだ。

「エクスプレス予約」がこの9月で20周年となり、来年2022年3月には「のぞみ」が30周年を迎えるため、これまでの利用への感謝を込めたキャンペーンだという。

 条件はシンプルである。「エクスプレス予約」個人会員または「スマートEX」会員であり、対象となる区間の「のぞみ」普通車指定席やグリーン車の「おとな」「こども」を同時に購入し、全員がICサービスでのチケットレス乗車での利用というものだ。

「おとな」「こども」あわせて6名までが同時に予約できる。「こども」は必ずいなければならない。また、乗車用ICカードをあらかじめ指定しておく必要もある。

 これらの条件を満たした場合、「こども」の利用代金をクレジットカードに返金する。

 たとえば「エクスプレス予約」の「EX予約サービス」で東京~新大阪間を利用した場合、おとな1名、こども1名だとおとな13,620円、こども6,800円。この6,800円が返金になる。それゆえ、おとな料金で実質こどもを連れて乗ることができるというものである。

 ICカード予約の促進や、コロナ禍で減少したこども連れ旅行の回復など、このキャンペーンにはさまざまな目的が考えられる。ただ感心したのは、このキャンペーンの「かしこさ」である。よく考えられたキャンペーンである。

 なぜ、「かしこい」のか?

「のぞみ」のみと新幹線の座席特性を生かしたキャンペーン

 まず、このキャンペーンは「のぞみ」のみということだ。もしキャンペーンの反響がすごく、一気に人が押し寄せたとしても、「のぞみ」なら東海道新幹線では1時間当たり12本の運転が可能である。山陽新幹線でもあらかじめ臨時列車が設定されている。「のぞみ」は少なめの定期列車と、多くある臨時列車の組み合わせで運行されている。それゆえ、増減の対応がしやすい。

「ひかり」「こだま」は、現状のダイヤパターンでは増減の余地はなく、定期列車のみとなっている。臨時を走らせるとしたら、夜間などの時間帯しかない。

 圧倒的に人が押し寄せたとしても対応できるという「のぞみ」ダイヤの特性が生かされたキャンペーンであるのだ。

 また、新幹線だからこそできるキャンペーンでもある。コロナ禍は、縮小しつつあるとはいえども、まだ続いている。当然ながらマスクをしなくてはならず、他人との接触も避ける、というのが多くの人の行動だろう。飲食店の仕切りなども撤去されるのは当面先だ。新幹線などでも、見知らぬ人と隣り合うのは避けたがる現状で、普通車にひとりで乗るならばE席、ついでA席、そしてC席と埋まっていき、B席やD席は残る。新幹線普通車は3人がけ席と2人がけ席の組み合わせである。

新幹線のD席とE席
新幹線のD席とE席写真:イメージマート

新幹線のA席・B席・C席
新幹線のA席・B席・C席写真:イメージマート

 しかし、家族など親しい人ならば、隣り合わせで座ることにも抵抗感はない。親1人子1人、親1組に子1人などは新幹線の座席を埋めるのにはちょうどいい。ふだんなら空いている席にも人が座ってくれるのだから、理にかなったものである。親2人とこども2人なら2人がけ席を2つ使うことで対応できる。こういった組み合わせで計6人を埋めることができる。しかも、ふつうは座りたがらない席に座ってくれるのだ。

休日の利用促進にも

 また親子連れなどの利用促進といっても、こどもは平日には学校がある。いっぽうで、平日はビジネス客の利用が多く、その利用は休日には少なくなってくる。ビジネス客が少なく、かつ学校が休みな休日の利用を促進するという意味でも、こども無料というキャンペーンは正しいとさえいえる。

 また、ネット予約限定、ひとりのICカード予約に複数人を連携させるということで、キャッシュレス・チケットレスを促進し、現金をあつかう手間を削るだけではなく、家族での新幹線の高頻度利用を促進することにもなる。キャンペーン自体は12月19日で終わるものの、1回か2回家族で乗ってみて、新幹線のよさを感じさせることができたなら、リピーターへとつながっていくことも考えられる。

 そういったことを総合して、「かしこい」といえるのだ。

 この「のぞみ」こども実質無料は、単純な割引や格安料金というのではなく、条件を設定して多人数での利用を促進し、かつリソースを最大限に生かせるという、優れたキャンペーンである。実によく考えられている。