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JR北海道札沼線末端区間、「緊急事態宣言」を受けて17日に最終運行へ

小林拓矢フリーライター

 JR北海道は16日の夜、5月6日をもって最終運行であり、今月24日に一般向け最終運行を繰り上げ、27日に地元向けのラストランを行う予定としていた札沼線北海道医療大学~新十津川間を、17日の運行をもって実質的に廃止とすると発表した。最終運行の列車は、新十津川発10時00分発、石狩当別11時23分着の5426Dとなる。以降の列車は、北海道医療大学前~浦臼間の区間列車も含め、運行されない。地元の人向けのラストランも行われない。政府の全都道府県での「緊急事態宣言」を受けてのことだ。

 札沼線の北海道医療大学~新十津川間は、4月から代替のバスが運行され、現実にはお別れを惜しむ人が乗車するだけの区間であった。新型コロナウイルス感染拡大を防止し、混雑を抑制するため一部列車の座席指定などが計画されていたものの、その計画も実際には行われないということになった。

なぜ急いで廃止か?

 札沼線の北海道医療大学~新十津川間の廃止は以前より決まっていた。廃止日もすでに決まっていた。廃止が決まってから、多くの鉄道ファンが訪れ、人であふれていた。

 鉄道の廃止の際には、廃止を惜しむファンが、全国から押し寄せ混雑するということがよくあった。そのために交通整理をしたり、列車を増発したりということが行われていた。

 昨年の石勝線夕張支線廃止の際には、廃止直前には臨時列車も運行し、最終列車に乗ろうとする人で駅は長蛇の列だった。

 ふだんの廃線ならば、こういった去りゆく鉄道を惜しむ人たちが集まって見送る、という光景はよく見られた。

 しかし今回の札沼線末端区間の突然の廃止は、新型コロナウイルスという感染症があるゆえのことである。多くの人が集まるとそこからクラスターが生まれ、感染が広まっていくという危険性がある。

 まして鉄道の廃線には日本中から多くの人が集まる。

「緊急事態宣言」を全都道府県に適用したことで、北海道もそのエリアに加わり、不要不急の外出などを控えなければならないという状況になった。

 それゆえの突然の廃線である。

悲しすぎる廃線

 災害等で鉄道が被災し、そのまま廃線になる、というのは悲しいパターンだ。土砂崩れで線路が不通になり、その後復旧せず廃線となったJR東日本の岩泉線や、台風による高波で復旧せず、廃線の可能性が高いJR北海道の日高本線の大部分など、最後のお別れもできないパターンの廃線は最近になってよくある。

 今回の札沼線の末端区間の廃線は、新型コロナウイルスの拡大を防止するためというものであり、やむをえないものとはいえるものの、残念であることは確かだ。災害ではないものの、危機的な事態の中でこの区間は運行を終えるということになる。

 あまりにも悲しすぎる。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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