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春のダイヤ改正 目玉は高輪ゲートウェイ、「のぞみ」1時間12本、近鉄「ひのとり」

小林拓矢フリーライター
注目の近鉄特急「ひのとり」(近鉄プレスリリースより)

 ことしのダイヤ改正は、2011年3月のダイヤ改正に似ている。このときは、3月5日に東北新幹線「はやぶさ」運行開始、3月12日に九州新幹線全線開通で、大規模な祝賀ムードのダイヤ改正になるはずだった。

 東日本大震災により、3月12日九州新幹線全線開通は、めでたい雰囲気とはとてもいえない状況となった。

 ことしの3月14日のダイヤ改正もそうだ。新型コロナウイルスにより多くの人たちが不安になっている中、移動を控え、鉄道に乗る人は普段よりも大幅に減っている。JR北海道は特急の減便と減車を打ち出した。常磐線が全線復旧し都内から仙台までの直通特急が運行する一方、鉄道の世界は新たな不安を抱える。そんな中での、ダイヤ改正である。

 しかしダイヤ改正となるには、新しい「何か」が生まれるのが常だ。そんな「何か」の中で気になるものを紹介したい。

最新技術の集まった高輪ゲートウェイ駅開業

 何かと話題にのぼる高輪ゲートウェイ駅。3月14日に開業する。QRコード自動改札機や案内ロボット、巨大デジタルサイネージ、23日開業の無人店舗など、新技術が盛りだくさんの駅となる。

 高輪ゲートウェイ駅は、駅名公募の段階からいろいろと言われていた駅であり、現在もなお駅名看板のフォントをめぐってネット上では議論が行われている。しかしそれだけ注目されている新駅だということになる。

 そんな高輪ゲートウェイ駅を利用できる日が、いよいよやってくる。新しい街もでき、今後が期待できる。新型コロナウイルスの問題が収まったら、さっそく行ってみたい。

東海道新幹線、車両性能統一で「のぞみ12本ダイヤ」

 3月1日で700系の運行が終わり(本当は8日にラストランをやるはずだった)、N700Aに車両が統一された東海道新幹線は、加減速性能を統一させることが可能になった。そのため、「のぞみ」を1時間にこれまで最大10本から、12本運行させることが可能になる。「ひかり」「こだま」も加減速性能を統一し、急加速・急減速を可能にし、車間距離を詰めることを可能にする。静岡駅などのホームに退避したら、すぐに「のぞみ」が通過し、即座に出発できてトップスピードに到達できる。そんな車両だけにしたことで、金曜の夕方から夜、あるいは大型連休などの際に輸送力より増すことができるようになった。

 1時間に12本「のぞみ」を走らせる、ということは、1編成1,323名乗車可能で13,230名を輸送することが可能だったところ、15,876名の輸送が可能になるということだ。だいたい、ちょっとした町の人口くらいは、1時間で運べてしまうということになる。

 ふだんの東海道新幹線の輸送状況なら、それだけの輸送力を必要とするというのが正しい。実際、これ以上利用が増えることになるのなら、オフピークの呼びかけも必要なのではないかと考えたことがある。

 東海道新幹線の700系は引退の時期をむかえており、いずれよりよい車両に置き換えなければならないことは確かだった。その意味では「のぞみ12本ダイヤ」は必然だったといえるかもしれない。個人的には、「ひかり」「こだま」の利便性も向上させてほしかったという印象もあるが、現実的な旅客需要の問題もあるのだろう。

「のぞみ12本ダイヤ」は、当面は余裕のある中で運用されることになり、真価を発揮できるのは、早くてもゴールデンウィークあたりになるだろうか。そのころには新型コロナウイルスの問題が収束しているといいのだが……。

注目の豪華特急「ひのとり」「サフィール踊り子」

 名古屋と大阪の間は、多くの人は新幹線で移動している。高速で移動できるからだ。しかし名阪間には、近鉄特急という輸送手段もある。比較的安い価格帯で、ゆったりと移動できる近鉄特急は、「穴場」として支持されている側面もあった。

 しかし、速達性ではどうしても新幹線に勝てない。そんな状況の中で近鉄が打ち出したのは、快適性である。普通車でも新幹線のグリーン車よりも豪華な座席とし、特別車両はもっとゆったりとした座席を提供している。なお、普通車でも特別車両料金は加算される。

 およそ2時間と少しの時間で名阪間を移動するこの列車は、その快適性で鉄道ファンの注目を集め、乗るよろこび・たのしみを十分味わえる。2時間少しをゆったりと堪能できるような車内になっている。

 また関東でも、豪華さを売りにした新しい特急が生まれる。JR東日本の「サフィール踊り子」だ。全車グリーン車以上、プレミアムグリーン車も連結され、カフェテリアも設置される。「快適さ」に加え、食事や伊豆の美しい風景をたのしむことができるこの列車は、リゾートへ行く楽しみを一層増やすものとなるだろう。

中央線特急ダイヤの改善と「富士回遊」増発

 昨年3月のダイヤ改正では波紋を呼んだ中央本線特急の停車駅削減。ことしのダイヤ改正ではその改善が行われることになった。

「あずさ」が山梨県内の塩山・山梨市・石和温泉に停車しない、ということが問題になった。しかし、近くに「かいじ」のない時間帯は、これらの駅に停車することになった。あずさ3号やあずさ55号、あずさ16号やあずさ44号などだ。とくにあずさ55号のこれらの駅への停車は地元の人にとってはありがたかっただろう。19時30分発の「かいじ」をのがすと、つぎは22時00分発の「かいじ」しかなかった。こういうところでの改善を、地元の人たちは求め、その要求が通った形になる。

 またインバウンド需要で人気の高かった「富士回遊」は、1往復増えることになった。この列車は筆者が乗車したときには多くの利用者であふれており、とくに外国からの観光客の需要が高い列車でもあった。

 今回のダイヤ改正では、利用者の利便性、そして快適性を高める施策を各事業者が提示している。新型コロナウイルス問題が収まったら、ぜひ多くの人にこれらの列車を、あるいは駅を利用してほしい。

お詫び 2011年3月5日のダイヤ改正の箇所、間違いがありましたので訂正しました。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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