夢の自動運転、山手線で実験する理由……今後はどの路線に?

将来の山手線では運転士も車掌もいなくなることが予想される(写真:アフロ)

 運転士なしで列車を動かす……2本のレールの上を走るタイプの鉄道では、実現しそうでいて、なかなか実現できなかった。

 JR東日本は、グループ経営ビジョン「変革 2027」でドライバレス運転の実現を掲げ、自動列車運転装置(ATO)の開発を進めている。

 12月29日・30日、1月5日・6日のそれぞれ終電後、自動列車運転装置の試験を行うことになった。

今回の試験では、何をめざすのか?

 E235系を使用する今回の試験では、自動列車運転装置の評価と課題の抽出をする。さらに運転士の安全のためのヘッドアップディスプレイの視認性の試験も行う。

 自動列車運転装置では、加速・惰行・減速など車両の制御機能と乗り心地の確認を行い、さまざまなパターンを想定して試験を行う。

 これまでの自動列車運転装置は、運行条件にかかわらず一定の走行パターンを行おうとするものであった。一方、JR東日本が開発中の自動列車運転装置では、自動列車制御装置(ATC)による速度制限にあわせて、運行条件に応じて走行パターンが可変する、いわば人間が運転するかのような調整が可能になっている。

試験に使用される山手線E235系(JR東日本プレスリリースより)
試験に使用される山手線E235系(JR東日本プレスリリースより)

なぜ、難しかったのか? なぜ、山手線なのか?

 新交通システムでは、すでに自動運転が取り入れられているところが多い。それは、無人運転を前提にしたシステムがつくられているからだ。自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT)といい、ゴムタイヤ車輪の車両がコンピューター制御で自動運転できるようにするという形になっている。大量輸送機関というより、中量輸送機関という位置づけである。

 また、リニア中央新幹線では、運転士なしの運行となることが予測されている。

 一方、明治時代から続くレールの上を走る鉄道は、システムは時代にあわせて更新していったものの、2本のレールの上を走るという構造は、基本的には変わらなかった。多くの路線が出入りし複雑化した現在でも、運転士の判断や力量が必要な局面は存在する。

 山手線は、各駅にホームドアが整備され、多くの列車が走る一方で、他路線からの出入りはなく、山手線だけで運行を純粋に完結できるという条件にある。そのため、自動運転の導入には、ふさわしい路線である。ホームドアがない場合、ホームからの転落という事態により列車が動かせなかったりすることも多く、それでは自動運転の能力は発揮できない。なお、山手線には1箇所踏切がある。これをどうするかも課題だろう。

どの路線が自動運転にふさわしいのか

 無人の自動運転にふさわしい路線とは、ほかの路線からの出入りがなく、ホームドアが整備され、列車の本数も多い路線である。

 たとえば、東京メトロ丸ノ内線では自動列車運転装置による運転を行い、運転士だけが乗務し、車掌は乗務していない。同線では各駅にホームドアが設置され、かつほかの路線からの出入りが基本的にはない。たまに銀座線の列車が回送で中野車両基地に向かうだけだ。こういった路線では、信号装置を改良し、無人運行の試験を重ねれば自動運転も可能になるだろう。

 またほかにも、東京メトロ銀座線では、渋谷駅と新橋駅を除き、ホームドアの導入が進められている。この路線は小型車体の短編成・高頻度運転なので、ぜひ自動運転を導入してほしいと考えている。

 最近の地下鉄路線では、都営地下鉄大江戸線も、無人の自動運転の導入が検討されてもいいものである。この路線も他線との出入りの日常的にない路線であり、かつホームドアも完備されているため、自動化の導入可能性が高い路線である。

 逆に、東京メトロ東西線や半蔵門線など、他線の列車が多く出入りし、多様な運行形態をとっている路線では、運転の自動化は難しいだろう。

 山手線の今回の自動運転試験、将来のドライバレス運行への挑戦は、ほかの鉄道会社にも影響を与える、画期的なものとなるだろう。鉄道界全体のためにも、ぜひ成功させてほしい。