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豪雨災害と酷暑の2018年夏「青春18きっぷ」使用の際に気をつけることは?

小林拓矢フリーライター
ことしの夏も「青春18きっぷ」で旅する人は多い。(ペイレスイメージズ/アフロ)

 7月20日より「青春18きっぷ」が使用できるようになった。例年と同じように、ことしの夏もこのきっぷを使って旅に出る人は多いだろう。その状況で気をつけなければならないこともある。

 なお、一般的な「青春18きっぷ」のルールについては、JRのホームページなどに掲載されているので省略する。(JR東海ホームページ http://railway.jr-central.co.jp/tickets/youth18-ticket/ )

西日本豪雨での不通区間にどう対処するか

「青春18きっぷ」では、普通列車で長距離を移動することが多い。その際に東海道本線や山陽本線などの大幹線を利用して距離と時間をかせぐ。今回の西日本豪雨では、山陽本線が寸断された。このことは、「青春18きっぷ」の利用者にとっては大きな意味を持つ。

 執筆時(8月2日午前中)現在、山陽本線は三原~海田市、柳井~下松が不通になっている。JR西日本では、三原~広島、岩国~徳山間は新幹線での振替輸送を呼びかけている。なお、岩国から新岩国まではバスでの連絡となる。

 だが「青春18きっぷ」でそのまま乗ることができるのかというと、そんなことはない。JR西日本に問い合わせたところによると、豪雨のあった7月6日までに発売された「青春18きっぷ」では乗ることができるが、それ以降に発売された「青春18きっぷ」では不可能だとのことである。

 おそらく、きっぷを買うときに保証された輸送条件は確保されなければならないが、災害が起こってからのきっぷ購入には、起こったことは承知の上で買っているのだから、それは当然のことだろう、という論理である。

「青春18きっぷ」は、値段が安い代わりに、「自己責任」のきっぷである。列車の遅れや不通などがあっても、それに対する補償は、ない。そういう理屈から、こういった対応が生まれたのだろう。

 また、芸備線などの中国山地ローカル線、呉線や岩徳線などの代行バスも、7月6日までに購入した「青春18きっぷ」でないとダメだということである。たとえ普通列車の代行輸送でも、「青春18きっぷ」では乗車不可能であり、別途運賃を支払わなくてはならない。

 もっとも、このあたりの代行バスは、普段からその路線を利用している人たちのものであると考えたほうがいいだろう。むやみやたらに「青春18きっぷ」で押しかける、というのも迷惑である。

 対策としては、しかるべき代金を払って新幹線に乗るか、安く済ませたいなら高速バスを利用したほうがいい。中国地方では、広島バスセンターを中心に各方面に高速バス路線が充実している。たとえば、岡山から下関へ行くのだったら、福山までJR、福山から広島までは「ローズライナー」(2,350円)、広島から徳山までは防長交通の高速バス(2,010円)、徳山からはJRとしたら安く上がる。また山陽新幹線を使うなら、三原から徳山までは運賃と自由席特急料金を合わせて5,500円である。さすがにいったん広島で降りて岩国まで行き、バスで新岩国というのは面倒である。

 不通区間の多い中国地方は、新幹線や高速バスなどを上手に使ってカバーしていこう。

酷暑の中の旅

 ことしの夏は例年よりも暑く感じられる。そんな中で旅をするには、それなりの対策をとったほうがいい。

 まずは水分補給。駅の自動販売機や売店などでこまめにスポーツドリンクやお茶などを購入し、飲む。脱水状態になって倒れたら大変だ。

 また、下着は一般の下着ではなく、夏季の多汗に対応したような下着(たとえばユニクロの「エアリズム」)を着て、少しでもすごしやすいようにする。

 いまの列車は冷房があるものがほとんどだ。そういう意味では、なるべく列車の中にいる時間を長くすることも必要だ。無理に列車の外に出ない。

 夏の場合、急に天気が変わることもよくある。折り畳み傘などを持っていることが必要であると同時に、突発的な運休や列車の遅れに対応できるように、すぐ調べられる紙の時刻表は持っていたほうがいい。

 そして、休息はしっかりと。昔のように夜行列車が多く走っていたわけではないので、いまどきの「青春18きっぷ」利用者は格安ビジネスホテルに泊まることも多いだろう。シャワーでよく汗を流し、ぐっすり眠ろう。「ムーンライトながら」「ムーンライト信州」を利用するのは、旅の初日か最終日にすると身体は楽だ。また、大きな駅の近くの喫茶店などでコーヒーなどを飲む時間も確保したほうがいい。そうしないと、列車に乗り続けて疲れてしまうということも起こるのだ。

 ことしの夏は、非常に厳しい。そんな中で「青春18きっぷ」で旅をするには、いろいろと考えながら旅をしなくてはならない。体調を崩さないようにして、よい旅をしてほしい。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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