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「カシメロは井上とも戦えるポテンシャルを持っている」プロモーター伊藤雅雪の構想とは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供 秋葉蘭之助 全て

10月下旬に元WBOスーパーフェザー級王者の伊藤雅雪(32)をゲストにトークショーが開催された。前半では、伊藤選手がボクシングを始められたきっかけから世界チャンピオンになるまでを語ってもらった。

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後半では、プロモーターになるまでのきっかけや今後目指すことについて語ってもらった。

──王座獲得後、防衛戦を挟み、ヘリング選手とのタイトルマッチでしたが、その試合はどうでしたか。

伊藤:ヘリング選手に対し、多少心に油断が生まれてましたね。ディアスに挑戦した時の気持ちは保てませんでした。ヘリング戦を終えてすぐ引退すると思ってました。僕は結構引退にいきやすくて。

──そうなんですね、それでも引退を思いとどまった理由は。

伊藤:ヘリング戦後のホテルロビーで、プロモーターに「また絶対チャンスをつくるから」と言ってもらえて、その時に「一度考えます」ということで踏みとどまりました。しっかり考えて、今回の試合もボコボコにやられたわけではないし、ただ空回りした試合になってしまっただけだと思い、もう一度挑戦しようと思いました。

──その後のキャリアはどうでしたか。

伊藤:辞めた今から考えると気持ちが多分乗ってなかったですね。やっぱりやめようと思っていた時期もあって、ハングリーさが無くなりつつありました。コロナもあったりアクシデントの中で迎えた試合もありました。

──ちょうどコロナの影響を受けた時期でしたね、キャリア最後の試合となった吉野戦はどうでしたか。

伊藤:練習の段階では凄く良かったですね。ただ、言い訳かもしれませんが、当日肘を痛めていて、痛み止めみたいなものを打ったんですけど、効きすぎたせいか拳が握れなくなってしまって、バンテージで無理やり固めて臨みました。

──試合ではどうでしたか。

伊藤:試合中は拳と肘は気にならなかったですね。僕ビビリなのでいつも試合は練習より半歩下がって戦うんですけど、この試合は勝っても負けてもいいぐらいに思ってた試合だったので、目の前でど突き合いしようと思ってました。吉野選手は総合的に試合でまとめてくる選手でしたね。今でももう一回やったらと思う時がありますね。でも自分の中では凄く区切りのいい試合だなと思いました。

──引退後はすぐ気持ちは切り替わりましたか。それともモヤモヤがありましたか。

伊藤:4月の試合が終わって、もう誰に何言われても終わりだっていう気持ちでしたが、漠然とした何かはありましたね。引退してお世話になっている方に挨拶を回っている頃からすぐバタバタ色々始まってしまったので、そんなにセカンドキャリアどうしようみたいな時間はありませんでしたね。

──引退直後は何をしていましたか。

伊藤:経営していました。美容サロン、トリミングサロンなど色々やりながらも、ボクシングで何かやりたいと思っていたので、ジムとかやりたいなと思っていましたね。

──なるほど、そこからプロモーターになったきっかけは。

伊藤:石井会長と「カシメロと他の選手でカードを組めたらおもしろいかも」と言う話から、選手時代から応援してくださっている協賛の方々とイベントやりましょうと元々話してました。ただプロモーションをしたかったわけではなく、最初は石井会長に恩返しができればと思ってました。

そんな話をしていた矢先に、スポンサーの方から韓国のパラダイスシティに連れて行ってもらい、パラダイスシティの本部長を紹介してもらいました。その方から格闘技イベントをやりたいと言われ、当時他にライジンやK-1にも声をかけていたのですが、僕が「絶対ボクシングですよ!カシメロ呼びますから!」と。今思い返せば交渉していて始まった感じでしたね。

──それがきっかけであの一戦が実現したんですね、カシメロといえば、先日小國選手と戦いましたが、伊藤さんの視点ではいかがでしたか。

伊藤:カシメロは怠けものというわけではないのですが、王様なんですよね。取り巻きたちも、カシメロがYESといったらYES、練習しないと言ったらしないんですよ。謎の頑固さを持っています。他の背景もあって、あまり練習させられなかったですね。しっかり管理できるトレーナーをつけないといけませんね。井上とも戦えるポテンシャルを持っているので期待しています。

──12月に井上とタパレスが試合し、来年の候補選手にカシメロの名前も挙がっていましたが、どのように捉えてますか。

伊藤:この前の試合、カシメロが良い勝ち方していたら可能性は高かったと思います。しかし、プロモーターから「これじゃ次はできないよ」と言われ、宿題をもらいました。もう一回、納得させられるような試合をしないといけませんね。

──スタミナなど不安なところありますよね。

伊藤:そうですね。でもスパーリング見ていてもセンスはすごいですよ。パンチもありますし、相当能力が高いですね。ちゃんと一から環境を整えられれば、いけると思います。

──伊藤さんのビッグプロジェクトの一つに、井上VSカシメロがあると。

伊藤:そうですね。カシメロもやっぱりそこですから...もちろん個人的にも井上に勝つのは難しいことだと思っていますけど、彼はひらめきのような1発を持っていますし、オーラはあるなと思うので、その点も含めて楽しみなカードになるのではないかと思っています。

──伊藤さんはこれからのビジョンなどお持ちですか。

伊藤:12月にまたパラダイスシティでイベントを開催する予定で動いてます。1月2月あたりもフィリピンで組めたらと。今、大きいイベントをやっているので、大きすぎないイベントで選手の興行をやっていき、育て鍛えるということをやっていきたいと思っています。

──将来的に日本でカジノが承認された際に、日本で行うことは視野に入れたりしていますか。

伊藤:良し悪しありますけど、格闘技とベッティングみたいなものがあるので、今は日本で規制があるので難しいですけど、ボクシング×カジノの相乗効果はあるなと思っていますね。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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