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井岡一翔は次元が違う その強さの秘密とは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

ボクシングWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチで、王者の井岡一翔(33=志成)が、同級1位のドニー・ニエテス(40=フィリピン)と戦った。井岡にとっては5回目の防衛戦で、ニエテスとは3年7ヶ月ぶりの再戦となった。

試合の展開

試合が始まるとお互いジャブをつきながら探り合う。

ニエテスはいきなりアッパーを放つなど変則的な動きをするのに対し、井岡は出入りをしながら積極的にジャブをつき攻めていく。

2ラウンドにはニエテスのカウンターが井岡にヒットするが、それ以降は井岡が手数で圧倒し、ジャブを基点にフック、ボディなど多彩なパンチでニエテスを追い詰めていく。

中盤でも、さらにプレッシャーを強めて、ボディやフックを顔面にヒットさせペースを握った。

ニエテスは次第に追い込まれ、パンチを避けきれず目の上を負傷。井岡は好機と見るや、パンチをまとめてKOを狙っていく。

最終ラウンドではニエテスも意地を見せて打ち返すも、かなり消耗している様子だった。

試合は判定にもつれこみ、120-108、118-110、117-111で井岡が王座防衛に成功した。

井岡の強みとは

前回の試合では見られなかった、井岡らしさが十分に発揮された試合だった。

序盤はニエテスが危険なパンチを放っていたが、すぐに自分のペースに引き戻していた。

井岡の強みは絶妙な距離感にある。ヒットアンドアウェイで左ジャブを効果的に当て、ペースを握る。

ジャブが当たると、次のパンチも当てやすくなるため有利に戦える。試合でもジャブからフック、ボディと多彩なパンチを展開していた。

また、自身のペースを崩さないのも井岡の強みだ。特に試合時間の長い世界戦では、12ラウンド一定のペースで戦える選手はほとんどいない。

井岡は後半になっても動きが落ちないので、ポイントをリードされたら後半に巻き返すのは難しい。

さらにパンチをほとんどもらわないので、今回の試合でも危険な場面はほとんどなかった。

相手にパンチが当たってくると、KOを狙うあまり動きが雑になるが、井岡の場合はそれがない。隙が生まれにくいので、相手としたら非常に戦いにくいだろう。

KOが華と言われるボクシングだが、精密機械のような正確な動きで魅せられるのも井岡の強みだろう。

統一王者に期待

試合後のインタビューでは「過去に負けた相手にリベンジできました。KO勝ちを見せたかったがディフェンスとテクニックがあった。完封できてよかった」と答えている。

今後はスーパーフライ級での王座統一を目指していくようだ。この階級には以下の王者が君臨している。

WBAスーパー ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)

WBA レギュラー ジョシュア・フランコ(アメリカ)

WBC ジェシー・ロドリゲス(アメリカ)

IBF  フェルナンド・マルティネス( アルゼンチン)

WBO 井岡一翔

他にも元4階級王者のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)や、元3階級王者の田中恒成(畑中)など、タレント揃いの階級だ。

井岡は「タイトルを持っている選手と戦いたい。エストラーダやローマン・ゴンサレスなど知名度がある選手に勝って、世界的評価を得たい」と語っている。

PFPにも名を連ねるボクサーとの試合はぜひ見たいところだ。王座統一を進めていけば、井岡の望む世界的評価も手に入るだろう。

今回の試合で雪辱を果たした井岡、この勢いで統一戦に向けて突き進んで欲しい。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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